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【雑文】 晴れた初夏の日、元町にて

梅雨の晴れ間のある日、神戸元町にお出かけしました。
緊急事態宣言下ではありますが、度重なる宣言発令で緊急事態宣言慣れしてしまっていることと、感染対策を講じているから、という理由でお出かけです。

まずは軽く何か食べようと、南京町近くのカフェに行きました。
私の感染対策のひとつとして、外出先で食事をする際には地上階にあるお店、窓があって開放してある、ひとり客が多い店、を選ぶようにしています。

カウンターでコーヒーとサンドウィッチをオーダーして、2階に上がりました。
他のお客さんと適度な距離があるテーブルを選んで座ると、通路の向かい側に初老の男性と40代初めぐらいの女性が横並びに座り、何やらおしゃべりしていました。
男性はマスクをしているけど、女性はマスクなし。
女性は日本人ではないようで、Tシャツに短パンというラフな格好、日本語のアクセントから推測するに、南京町に住むチャイニーズかな?
男性は、女性から携帯電話の操作を教わっている様子。
私は彼らの声の大きさが少し気になったものの、ま、これだけ離れていれば大丈夫でしょう、と食事にかかりました。

男性の声「・・・したいんやけど、どないすんの?」
女性の声「それは、コピーアンドペーストです」
少し間があり、
男性「おお!そないすんのか。なるほどな〜。パソコンの操作とまた違うもんやな」
女性「パソコンは違うね」
男性「ほんならな、X%@#はどうするんやろ?」
女性「それならこうです」

他がひとり客ばかりなので彼らの声がよく聞こえてしまうのですが、このご時世、仕方ないですよね。平時なら、彼らの声はごくふつうの大きさです。
サンドウィッチを食べ終わり、本を読みながらコーヒーを味わっていると、

女性「・・・じゃあ、注文は?」
男性「毎日してるがな。せやけどいっこも届かへん。そうかぁ、送信できてなかったんやな」

・・・・え?
おじさん、毎日注文してるって、そして、一度もそれが届いていないって、一体、何をオーダーしていたのよ?
そして、それが届かなくても困らなかったの?
途切れ途切れに聞こえてくる二人の会話から、おじさんが置かれている状況を推測してみるものの、まったくわからず。

気を取り直して読書に集中しようとすると、私のテーブルからひとつ空けた隣に年配の夫婦らしき男女が。

テーブルはひとつ分、離れているもののおしゃべりを始めた二人にやや不安になる私。
大きな声で話さないでね。

読書に集中していた私に、二人の会話の内容は入ってこなかったのですが、男性のあるひと言が耳に飛び込んできました。

「ホンマ、オムライスちっさなったわ〜、急にあんなほそなったらあかんで」

え?何の話?
どこのオムライスが突然小さくなったんだろう?

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初夏のカラッと気持ちの良い日に、カフェで耳にしたふたつの話。
たぶん、コロナ前ならこんな会話を耳にすることなんてよくあることだったと思うし、そんなに印象に残ることでもなかったと思います。

こういう会話に耳をそばだててしまう私が、日々人との接触が極端に減って退屈しているのかもしれません。
私としてはSNSやチャットアプリで友達とおしゃべりするので、友人たちとの接触が減っていると自覚していませんでしたが、外出先で見ず知らずの人たちのおしゃべりを耳にして、何だか新鮮に感じてしまったのが驚きでした。
また実際のところ、多くの人が今は友達数人とのランチやお出かけを控えていてるため、レストランやカフェでもよそのテーブルからおしゃべりが聞こえてこないのかも。


携帯の操作がよくわかっていないおじさんや、オムライスが小さくなったことを嘆くおじさんたちから、「それが生きているということ」と何か生命力をもらった気分がしました。

お出かけして良かったです。

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