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守られていたこと

絵のうら側に言葉の糸をとおす(鴻池朋子著)
を読んでいる
3月11日の震災の話があった
読み進めているとふと
あの日の明け方を思い出した

1月阪神大震災の日
私は自分の部屋のベットに寝ていた
自分の身体が揺れている?
まるで
ハンモックに寝ているように
左右に大きくゆらゆらと

そんな感じで目が覚めた
なにが起きているかわからなかった


すると父が
『あーちゃん』と叫びながら部屋にきて
寝ている私の身体に覆い被さった
『大丈夫か?』
と聞く

え?
なにが大丈夫?
なんで父がここにいる?

と考えていると
また激しく身体が左右に揺れた 
そこでやっと
地震なんだとわかった

当時私は大学生
今考えると幼い子どものように
父と母に守られて
なんの心配もなくぬくぬくと生きていた
どれだけの安心感を両親からもらっていたのだろう

今自分が親になり
あの時のことを想像すると
父は真っ先に私を守ろうとして
飛んできてくれたのだろう
あれだけの揺れ
真っ暗で
棚の物がほとんど床に倒れ落ち足の踏み場がない
テレビも飛んで落ちている
そんな状況で
私の名前を叫びながら


父と私は中学生ぐらいからほとんど喋らなくなった
よくある思春期
怖いと汚いが混じった感情しか抱かなかった。
あの頃の父との思い出も、ほとんどない
でも
言葉は交わさないが
必ず守ってくれていたんだと
今ならわかる

私が求めていたのは
楽しい会話や優しい声かけ 
しかし父がくれるものは
厳しい言葉と冷たい態度
私は愛されていないのかも
と何度も思った
大嫌い
父なんか
大嫌い
と何度も思った

自分が歳を重ね
たくさんの経験をし
親になってやっと
父の芯の部分の愛情がわかった

でももう遅い
いないのだから
後悔はなくて
ありがとう と言おう




一冊の本の
一部分から
こんな思いに繋がるなんて……

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