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味覚のタイムスリップにいざ!

 100年前の韓国料理と聞いてどんなものが思い浮かぶだろう。さすがにチーズタッカルビはないだろうけど、有名な伝統料理なら当時から親しまれているのではないか。そう思ってページをめくると、飛び込んでくるのは冷麺、ビビンバ、ソルロンタン、ピンスといった馴染みの面々ばかり。100年前は思った以上に身近だ。
 とはいえ、今日の文化と異なることも多く、冷麺が出前の代名詞だったり、高級野菜の産地がソウル市内にあったり、現在は消えてしまったような料理名も見える。
 本書『100年前 わたしたちが食べた食べ物/食卓の上の文学紀行(原題)』には、そんな近くも遠い100年前の食文化が、あたかも目の前にあって手を伸ばせそうなほどに生き生きと描かれている。伝え手は白石(ペク・ソク)、李考石(イ・ヒョソク)、蔡萬植(チェ・マンシク)といった高名な文人たちだ。
 小説、エッセイ、ルポルタージュと形式こそさまざまだが、100年前の食文化がリアルな筆致で迫ってくるのに違いはない。料理から立ちのぼる湯気も、麺をすする音も、人々の喧噪もすべて行間にある。味覚のタイムスリップにいざ招待したい。

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翻訳者:八田靖史
コリアン・フード・コラムニスト。慶尚北道、および慶尚北道栄州(ヨンジュ)市広報大使。ハングル能力検定協会理事。1999年より韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。韓国料理の魅力を伝えるべく、2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆活動を開始。最近はトークイベントや講演のほか、企業向けのアドバイザー、韓国グルメツアーのプロデュースも行う。著書に『目からウロコのハングル練習帳』(学研)、『韓国行ったらこれ食べよう!』(誠文堂新光社)ほか多数。最新刊は2020年3月刊行予定の『韓国かあさんの味とレシピ』(誠文堂新光社)。韓国料理が生活の一部になった人のためのウェブサイト「韓食生活」(http://kansyoku-life.com/)、YouTube「八田靖史の韓食動画」を運営。

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