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文学からみる100年前の韓国の食べ物

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文学に綴られてきた「韓国の食」が、100年の時を経て、コリアン・フード・コラムニスト八田靖史によって生き生きと蘇る。 さぁ100年前の「食の文学紀行」へ出かけよう。
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#名月館

朝鮮料理店の始祖「明月館」/毎日申報

 10年ほど前の我が国には、およそ料理と呼べるものがなかった(訳注:1912年12月の記事なので1900年代初めを指す)。  いわゆる居酒屋のほかは、チョンゴル(鍋料理)店、ネンミョン(冷麺)店、チャンクッパプ(スープごはん)店、ソルロンタン(牛スープ)店、ビビンバ店といった料理の専門店と、カンジョン(米菓子)などを扱う菓子店、王宮を離れた宮中料理人の開いた店があるぐらいだった。  ほこりの積もったぼろぼろの食卓に、全羅道産の大竹(イメージ写真:全羅南道潭陽郡の竹林)を細