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文学からみる100年前の韓国の食べ物

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文学に綴られてきた「韓国の食」が、100年の時を経て、コリアン・フード・コラムニスト八田靖史によって生き生きと蘇る。 さぁ100年前の「食の文学紀行」へ出かけよう。
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#イルジョルミ

愛の餅、風流の餅 延白インジョルミ/長寿山人

 その名声は幼い子どもたちの間にも深く浸透している。インジョルミ(きな粉餅)は数ある餅の中でも、もっとも身近で、もっとも美味しい。  春はヨモギ、端午はヤマボクチ、夏はゴマ、秋はササゲやナツメ、冬は黒豆のインジョルミを作る。  どれひとつとて美味しくないものはない。  しかし、こうした季節の品々を飛び越えて、我が国でもっとも名高いのは黄海道(ファンヘド)の「延白(ヨンベク)インジョルミ」だ。延白地方のインジョルミは、原料となるもち米の品質に優れているだけでなく、餅のつき