うたのはじまり 1 cumr 2020年7月18日 23:10 久しぶりに映画を観に行った。やっぱり映画館はよい。今回は「うたのはじまり」という映画を観たのだけれども,この映画をぜひおすすめしたい。とにかく映画の最初から最後まで震えた。劇中に出産シーンがあるのだけれども,これがすごく良かった。みんなお母さんのお腹から生まれる,この世にいる全ての人はお母さんのお腹から生まれてくるのだ。当たり前のことなのかもしれないけれどもお母さんから生まれて来ない人はいない。これは地球上全ての人に共通している部分だ。みんな母から生まれてきて生活している,そしてみんないつか死ぬ。このようなことを考えていると何とも言えない不思議な気持ちになった。全ての人に共通するこの現象を目の当たりにすることは(映画だけれども笑)何か忘れていたことを気づかせてくれるようにも感じた。映画うたのはじまりは「うた」がテーマになっている映画なのだけれども,ぼくにとっては「うた」のまわりにあるものに惹かれた。それは監督の映画の撮り方と言ってしまえばそれまでなのだろうけれども「うた」を取り囲む空気感がよいのだ。齋藤陽道さんの真っ直ぐな生き方にも心が洗われる。陽道さんを取り巻く人たちがとても素敵だ。東京の街の外れというシチュエーションもリアリティーがあってよかった。そういった映画に流れる空気感が好きだった。ぼくはこのように表向きのテーマではなくて意図していなかったものが「ぶわっ」とにじみ出てくる作品が好きだ。例えばイランの巨匠,故アッバス・キアロスタミ監督の制作した「ライク・サムワン・イン・ラブ」で東京を舞台にした映画もそうだ。出演するおじいさんと1組の男女のカップル,3人の人間模様を描いた作品なのだけれども,その作品にぼくは"音楽"を感じた。この映画には劇中にサウンドトラック的なものはほとんど流れていない。けれどもぼくはこの映画に"音楽"を感じた。それはどういったことかと言うと,東京や都会に住んだことがある人であれば分かると思うけれども,東京に住んでいると家の中にいても常に外から人の声や車の騒音が聴こえる。家の中で生活していて本当に静かになることが一日にほんのわずかな時間しかないのだ。東京で生活していると騒音に慣れてしまうので騒音を雑音,もっというと音として捉えないのだけれども,この作品は騒音やもともと音として捉えないものを音楽として捉えて表現している,と感じたのだ。例えば休みの日にソファーに横たわってまどろんでいると外から子供達の遊んでいる声が聞こえる。それがとても心地よくて子守唄のように聴こえるといった経験はないだろうか?普段は騒音(音としても捉えないもの)としてしか意識はしていないのだけれども,ちょっとした心境の変化やふとした瞬間などにその音は音楽のように心地よく感じることもあるのだ。そうやって本来の監督の目的ではないかもしれないけれど,勝手にそういった部分を切り取って見つけ感じることがぼくは心地よかったりもするのだ。いつの間にか他の映画の話になってしまってけれども,とにかく「うたのはじまり」をぜひ観ていただきたい。こういった状況なので映画館に行かずとも観れるシステムもあるみたいなのでぜひ。https://utanohajimari.com/ 1 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート