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◆虎に翼20話、お腹

昨日の19回では轟、梅子さんの胸を借りて花岡が弱音を吐いたり、自分を見つめ直したりしていた。
花岡がこんなの自分じゃないとしたものを、梅子さんは「どれもあなたよ」と伝える。
いくらでも自己否定、自己否認を繰り返せる便利な手だ。自分を甘やかしたくなるだれもがしてしまうものでもある。

梅子さんは自分を鼓舞したり慰撫したりする過程で体験してきたのだろう。大庭の家の者は梅子さんにひどい態度を取っている。
18回で寅子たちに自分を卑下したり、下げてみせたが、あれは大庭で長いこと否定されてきたことの蓄積も影響しているのだろうと思うと、やるせない。

そんな自分でさえ、梅子さんは自分に接続しないとと思っている。
罰が当たったという言葉に滲む思いは、いかばかりか。

そんな梅子さんだからこそ、安易な逃げと否認をいけないことだとして、花岡に伝えているように感じた。
あれは自分の地獄を走る梅子さんが差し出すエールなのではないか。


本日の第20回では寅子の父、直言が贈収賄の疑いで逮捕。
家宅捜索が始まる。
優三が駆けつけて、動揺する猪爪家の矢面に立ち、靴を履いたままあがろうとする警官たちに「せめて! 靴はお脱ぎください」と迫る。

緊張するとお腹にきちゃう優三、真夜中までかかった家宅捜索に対応しきって、寅子をフォローしている最中に決壊寸前。
そそくさとトイレに逃げる。本当によく耐えた、あなたはすごい。

場違いに思えるくらい真夜中にいつものお兄ちゃん節で帰宅する兄、直道。これには寅子も遅いと怒鳴るが、仕事上がりに家に帰って花江とこどもをなだめて、急ぎ駆けつけたのだろうなあとも思う。

優三の機転に脱力せずに、はるさんは手帳に記録を残す。
動揺しているときほど記憶は曖昧になりやすい。
出来事の渦中にいるときほど、しっかりと書きしたためておく。
時代が、時流が許すなら、あるいはそれらを押しのけられるほどに自分の力が及んでいたなら、穂高先生ははるさんもいまの寅子のように学生にしたかったのではないか。
社会の壁よ。


どんなあなたもあなた。あなたのいう本当のあなたがいるのなら、どうか大切にしてね。
梅子さんにあたたかくも力強い言葉をかけられた花岡、これを放っておけぬと穂高に直訴。
社会の壁、猪爪家に詰めかける記者の目、思うように過ごせない日常。
そうした障壁を乗り越えて、花岡は穂高と共に、ふたりで寅子の元をこっそりと訪れる。

さて、来週どうなるか!


虎に翼は思わぬ場面まで驚くほど凝っていて、なにげなく見ていると見逃してしまうことがやまのようにある。

学校で穂高が生徒たちに「予審前は罪状は確定していない、まだ不明なままだ」として勉学の必要性、法学の意義を述べる。
このとき花岡は包帯が完全に取れていた。
けっこうな怪我だったが、もう包帯が取れるくらいの時間が過ぎていたのだ。
これはSNSで感想を見かけて、遅れて気がついた。
みなさん、すごい!

冒頭ではるが警官たちの相手をしているとき、猪爪家寅子の弟の直明が勇気を振り絞って応対に臨もうとしていた。

梅子さんは嫌悪じゃ済まないであろう旦那、大庭徹男に頭を下げて弁護を依頼しようとしていたが、長男の徹太と共に辛辣な拒絶と罵倒を浴びた。
梅子を見ていた光三郎くん、忸怩たる思いといった表情である。

よねもひとり、カフェーで新聞を読んでいた。
だれもいないなか、掃除の手を止めて広げた新聞記事も、情報が盛りだくさんであった。

今回の直言への嫌疑。
そのモチーフとなった事件がSNSで指摘されていた。
来週の予告では厳しく迫られる直言のシーンがある。
いまこの現代においてなお、日本は人質司法、自白の強要がたびたび問題になっている。(議論するのであれば、具体的な件数を元にしたい。しかし、その件数をいかにして抽出するかも難問に思える)
ましてや当時の警察とくると、どうか。
直言は無事であろうか。

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