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撃ち抜くぞ。
人が撃ち抜かれる瞬間を見た男の話をしよう。
撃ち抜かれたのは彼の母だ。
それは 2023年4月4日火曜日 午後7時をまわった頃だった。
男と男の母は、焼きサバと肉じゃがと大根とキノコの味噌汁、という純和風な夕食を食べていた。
もうほとんど食べ終わっていた彼が、スマフォを取り出しニュースを見ようとしたその時、
テレビを見ながらサバをつついていた母が
あっ
とも
ひっ
ともつかない声を上げた。
胸を抑えながら、椅子と共に後ろに倒れそうになっている彼女の腕を咄嗟に掴み、
男は銃弾が発せられたであろう方を見た。
くそっ
またお前か。
力が抜けてあらぬ方向を見ている母を、しっかりと椅子に座らせる。
そして男はもう一度犯人の方を振り返った。
そこにいたのは
![](https://assets.st-note.com/img/1680872246065-JiHH6aiZES.jpg?width=800)
またこいつにやられたのか
かあちゃん。
母は、まだ力の入らない両手で口を抑えながら
「シ シゲちゃんが・・・ウインクを・・・私に・・・」
と、今わの際のダイイングメッセージのように呟いている。
しっかりしろ!
いいか やつはカメラに向かって片目を瞑っただけだ。
現実に戻って来い、かあちゃん。
男は母の頭を軽くポンと叩いた。
はたと我に返った彼女は
何事もなかったかのようにサバを食べだした。
テレビの中の人から一瞬も目を離さずに。
夕食を食べ終わり
はあぁ とため息をついた彼女は、また胸をおさえ
「かわいい…」
と、うわ言のような言葉を吐いた。
男は 今度は少し力を込めて、
母の頭を叩いた。
おしまい
したっけ
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