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撃ち抜くぞ。


人が撃ち抜かれる瞬間を見た男の話をしよう。




撃ち抜かれたのは彼の母だ。



それは 2023年4月4日火曜日 午後7時をまわった頃だった。


男と男の母は、焼きサバと肉じゃがと大根とキノコの味噌汁、という純和風な夕食を食べていた。

もうほとんど食べ終わっていた彼が、スマフォを取り出しニュースを見ようとしたその時、


テレビを見ながらサバをつついていた母が 


あっ

  とも

ひっ

  ともつかない声を上げた。



胸を抑えながら、椅子と共に後ろに倒れそうになっている彼女の腕を咄嗟に掴み、

男は銃弾が発せられたであろう方を見た。



くそっ


またお前か。



力が抜けてあらぬ方向を見ている母を、しっかりと椅子に座らせる。


そして男はもう一度犯人の方を振り返った。



そこにいたのは












スナイパーシゲ




またこいつにやられたのか 

かあちゃん。


母は、まだ力の入らない両手で口を抑えながら

「シ シゲちゃんが・・・ウインクを・・・私に・・・」

と、今わの際のダイイングメッセージのように呟いている。



しっかりしろ!

いいか やつはカメラに向かって片目を瞑っただけだ。

現実に戻って来い、かあちゃん。


男は母の頭を軽くポンと叩いた。



はたと我に返った彼女は

何事もなかったかのようにサバを食べだした。

テレビの中の人から一瞬も目を離さずに。


夕食を食べ終わり

はあぁ  とため息をついた彼女は、また胸をおさえ

「かわいい…」

  と、うわ言のような言葉を吐いた。



男は 今度は少し力を込めて、


母の頭を叩いた。



         おしまい



            したっけ








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