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【レビュー】IE 100 PRO

全部がキッチリと豊かに鳴る、超優等生のコスパモンスター

価格に対して豪華な構成のイヤホンや、個性的な音をした無線をいくつも持っているが、この機種に根本的な精度の高さでぶん殴られ目が覚めた
解像感と定位の良さの重要性を思い知らされる超万能機種だ

※ケーブルは特殊な端子を使用しています
 リケーブルを検討している場合、下部のカスタム例を読んで下さい

音質

モニター系の音はつまらないという扱いもあるが、ささやき声や吐息がパリッと電子音のように鳴ったり、複雑な音楽が団子になってうるさいと感じることを防ぎ、聞きたい音を探せるのは個人的に楽しく感じた

イヤホンというのは、イヤーピースの種類や深さの具合で弱ドンシャリや弱かまぼこ傾向になりうる
なので、音楽鑑賞目的なら完全なフラットを狙うより、好みの具合を探ってイヤーピースの試行錯誤をしていきたい

低音がドカドカ鳴るのも楽しいが、イヤホンはサブウーファーが使えるわけではないので、そういった特化した機種はどこかが沈みがち
もっと10万単位のものになれば別なのかもしれないが、そこまでの金額を出せるのはかなりの少数派だろう

全体的に音が濃く、瑞々しいと感じられ、しっかりと空間に広がっていて音と耳の間に壁が無い

高音域はよく伸びて澄んでいるが、これを刺さると表現する人もいるのは理解できる
悪いシャリつきのようなものはないので、サ行やささやき声のような部分も安定している
個人的には高音はこれくらい出ていて欲しいが、どうしても気になるようならAZLA SednaEarfit max ASMR Standardのような高音や炸裂音をカットするイヤーピースを選択するのもアリ

中域も沈まず明瞭で、ボーカル部分は生声のように鳴ってくれる
複数人が歌っているような曲も、それぞれ聞き分けられるほどの分離感
高低域に邪魔されにくく、逆にボーカルが強すぎて高低域がカサついた印象にもならない
楽器の細かなニュアンスや、吐息やビブラートの余韻が現実並かそれ以上に伝わってくる
滑舌の悪さや、細かすぎる音までバッチリ入ってくるので、生配信を聞いたりするのには好みは分かれるかもしれない

低域は見事なまでにビシッと締まっていて、ベースの細かなディテールまで伝わってくるのは自分に合っていた
空気が耳に当たるような派手な低音ではないものの存在感は強めで、消え入りそうな小さな部分も余す所なく聞こえてしまう

精度が高いので録音の悪さやノイズが乗りがちかと思ったが、若干高いインピーダンスのおかげかノイズ感はそこそこ抑制されている
感度は高く直差しでも音量は確保出来るが、せっかく繊細さが売りで定位感も良いので、それを活かすためにDACを通しつつバランス接続をしたい

用途

万能過ぎてとりあえずコレという感じ
ちょっとだけ高いけど、これだけ買って終わらせておけば安く済む
モニターなのでフラット寄りで簡略化される音がなく、何かしらの制作にも役立つのは当然として
音楽鑑賞や映像鑑賞に使ってもいいし、ゲームでも使えるし、正直ASMR向けとして売られているものよりそれ用途に向いていると感じた
ただ高音の再現性があまりにも高く、一部の耳を触ったりするようなASMRで高音が炸裂音のようになってしまい、刺さって嫌と言う人がいるのも理解できる
そこは上でも触れたASMR用イヤーピースで対応していきたいが、自分は刺さるくらいの刺激も楽しめるタイプだった

ドンシャリが好きならイコライザーで弄ればいいが、そうするとやはりどこか薄味に感じる領域が出てくるのは事実なので、大きく弄らないことをオススメ
なので、ドンシャリやかまぼこ傾向のイヤホンを別で持っておいてもいい

装着感

装着感の良さだけで買う価値があるというくらいに良い
不快感の少なさ含めての音楽鑑賞だと思うので、高級で重たい機種より選択肢に入りやすいように感じた
例えばこれが3000円で、もっと音が悪かったとしても軽い装着感で優れているからとオススメできるくらいには良い

立体的な箱のような形状で、音質の向上を狙って硬質な樹脂や金属パーツを多用した他のイヤモニ型とは違い、プラのモナカ構造で薄い筐体はハッキリ言って安っぽい
だが、その軽さとフィットしやすい形状の組み合わせが圧倒的な装着感の良さに貢献していて、金属みたいに冷たくなることもなく、とにかく文句が出ない
耳からの飛び出しも少ないので遠心力による負担も少ないし、有線なのであまりおすすめしないが、横に寝たときのダメージも少ない
軽いプラということは、落下時のダメージも少なくなっているだろう

その上で10mmという十分な大きさのドライバーを搭載し、意外にも音漏れは控えめ
コンパクトで軽量でありながら、他の重量級イヤホンと張り合える音質の組み合わせは価格以上の良さがある

気になる点

純正イヤーピースのスポンジが悪さをするのか、そのまま使うと解像感に物足りなさを感じる
それを取り除くと、よく見かける細かい網のフィルターではなく、本体ノズルにまたスポンジが詰め込まれている
洗えると思えば良く受け取ることもできるが、交換品が一切売られていないので無くしてしまわないか不安になる
純正イヤーピースを外して社外品を使うとノズル内のスポンジがむき出しになり、少々不安になる

どんな人にオススメ?

普段3000円前後クラスの高評価な機種を使っている人が、これを一つのゴールとして買うのをオススメする
価格に対して得られる音質が劇的に上がるのを体験できる
もしくは、普段1~2万クラスのヘッドホンだけしか使っておらず、ボーカルの繊細さに物足りなさを感じている人にもオススメ
下手な2万クラス以上のやつよりこれが好きという人も多いらしく、創作・ゲーム・ASMR用として絶対に腐らない高い定位感と原音再現性もある

フラットな特性故にイヤーピースで好みな音に変えやすく、失敗が少ない
ただし、定価からかなりの値引きがされているので、同価格帯の新型機種が近く出る可能性を頭に入れておきたい

カスタム例

上部の画像は「AZLA SednaEarfit ORIGIN Standard 4.4mm」と「Acoustune ARMシリーズ Pentaconn EAR Long」を使用している

このイヤーピースは汚れ防止フィルターが入っていないのでノズルのスポンジに汚れが直接行ってしまう所と、他社同サイズより一回り大きいのに注意したい
今現在使用しているイヤーピースと同じ太さか、一回り小さいものをオススメする
自分はSpinFitのMサイズ等を使っていたが、ORIGINのMサイズは若干キツく、浅い装着によって低音が膨らみすぎる感じがあってMSサイズを書い直した
失敗が怖いなら複数サイズ入りのものを買ったほうがいい
やや肉厚なので想像よりキツく感じるが、先端に行くほど薄くなる構造になっていて、装着感自体は抜群に良い
音の素直さ・解像感も良く、グリップ感が強めなのに痒みが出にくいのも良い所

リケーブルを楽しみたいなら、通常のMMCXに対応していないことを忘れずに
通常のMMCXは回転による摩耗や、汗による腐食が問題となるのだが、この機種はそれを軽減するために特殊な端子を使用している
すぐに壊れてしまうよりはマシと思おう
本体よりは安く、4.4mmで編み込みケーブルとなるとAcoustuneのものしか見当たらなかった
他の製品は耳掛け部分のチューブが無かったり、純正品は本体より高額になるなど、致命的な問題もありそうだったので、実質コレしかないはず
もっといい感じのがあったら申し訳ない
リケーブルで得られる音質の向上は些細と捉えるか大きいと捉えるかは人次第であり、音質を大きく変えるならイヤーピースを優先したい
それでもケーブルを変えたくなる理由は、取り回しの良さにある
純正のケーブルもかなり出来はいい方なのだが、編み込みケーブルの暴れない特性と比べると扱いにくい
このケーブルは触った感じ硬質でかなり細いのだが、印象とは裏腹に大人しくて取り回しがいい
軽い筐体に軽く細く取り回しのいいケーブルはとても快適だったので、決して安い物ではないが悪い買い物ではない
端子の差し込みもキツすぎず緩すぎず、丁度いいという感じ

総評

価格に対しての音質
音質に対しての軽さと装着感の良さ
これらの完成度が高すぎて、色々模索する前にこれを買えばよかったと後悔しているが、色々渡り歩いたからこその感動でもあった
よく売れる価格帯のものと比べると高額だが、それに少しだけ追加してやるだけで相当良くなるので、是非オススメしたい

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