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ニンダイを前にスプラトゥーンを振り返る

明日2021年9月24日にニンテンドーダイレクトを行うとの公式アナウンスがありました。Twitterトレンドでも上がっていた通り、長らく情報の無かったスプラトゥーン3に関する紹介が含まれると思います。

スプラトゥーンとは長い付き合いになります。2015年に初代スプラトゥーンがリリースされて以来私のライフスタイルは大きく変化しました。フルタイムで働いているのに勤務時間よりゲーム時間の方が長かったこともあれば、寝食を忘れて1日20時間プレイに費やしたこともあります。スプラトゥーン2が発売されて3年、未だに毎日このシリーズを楽しんでいます。

もちろんスプラトゥーン2はそこそこ面白いのですが、初代スプラトゥーンを上回る輝きがあったかというと、そこまで評価はできないというのが正直なところです。スプラトゥーン3の詳細が発表される前に、どうして初代スプラトゥーンがそこまで自分にとって特別だったか、スプラトゥーン2で何が失われたのか、スプラトゥーン3に何があれば初代スプラトゥーンの熱気を取り戻せるのか、言語化してまとめておこうと思います。

初心者を絶えず引き込む仕掛け

スプラトゥーンに限らずPvP要素のあるゲームは、熟練プレイヤーを満足させつつ新規参入のハードルを低くキープしなければならないジレンマを常に抱えています。具体的には熟練者向けのテクニカルなマップや複雑なルールだったり、初心者でも勝てる強力なアイテムだったりです。よくインフレなどと呼ばれ、どのようなゲームでも時間と共にこれらの仕掛けは極端になりがちで、最終的には古参に飽きられ初心者には敬遠されてブームが終了します。

初代スプラトゥーンは「如何に初心者をフォローできるかを競うゲーム」に徹したことで、このジレンマを見事に解決してみせました。鮮やかで革命的とすら言って良いかもしれません。塗ってくれる人を巧みに守れば守るほどランクが上がるようにデザインされていました。スペシャルウェポンが超強力だったので熟練プレイヤーは常に味方の初心者にスペシャルを吐いてもらうよう気を配る必要があり、それがインフレを避けて長く愛されるスプラトゥーンの本質となっていました。

人数有利がゲームを左右する

初代スプラトゥーンがスペシャルで勝敗を決めるゲームだったことに対する批判も多くあったように思います。それもあってかスプラトゥーン2ではスペシャルが極端に弱体化され、テクニックさえあればスペシャルをうまく活用することも防ぐことも可能になりました。今になって考えてみれば、このスペシャルの弱体化がスプラトゥーン2を凡庸なゲームに貶めた原因ではないかと思っています。

スプラトゥーン2は人数有利を形成してキルを重ねるゲームです。もちろんそうではないとおっしゃる方も多くいるとは思いますが、初代タッグマッチにあった「3人チームでも参加できる」オプションがスプラトゥーン2のリーグマッチで削られていたり、キルアシストもカウントされるようになっていることから、任天堂がチームプレーを強く意識していたのは間違いないでしょう。実際スプラトゥーン2では回線落ち等で3人になってしまうと、よほど腕前に差がなければ勝ちはありません。

デスに対する恐怖心

結果どうなったかというと、味方への同調圧力が初代スプラトゥーンに比べて大きくなりました。初心者はデスを避けようと前線には出なくなり、キルに参加しない味方に強いストレスを感じるようになりました。塗り専門のプレイヤーがひとり居るだけで前線は3対4になって人数不利でやられ、前線がリスポーンしている間にそのプレイヤーもやられ、自陣が塗られてしまっているので自分のスペシャルを溜める事もできず、マッチの中盤にはもはや挽回できないほどの差が付いています。

スペシャルが弱いので塗る意味が薄く、塗ってくれる味方をフォローする動機も薄く、味方を囮にするにしても前線に出てくれないという具合で、これが初代スプラトゥーンとの決定的な差になっていると感じました。延々と敵の来ない自陣を塗り続けては当たらないマルチミサイルを連発している赤ZAPにイライラした経験は1度や2度ではありません。

スプラトゥーン2では初心者はホコは持ちたがりません。ヤグラにもなかなか乗ろうとしません。なぜなら初心者は敵ではなく、デスした自分を責める味方の方を怖がっているからです。

初心者をフォローする動機づけ

前述の通り、塗って一撃必殺のスペシャルを溜める初心者・初心者の塗りをキルで阻止する中級者・中級者のキルを迎え撃つ上級者が三者三様シームレスに関係しているのが初代スプラトゥーンの醍醐味でした。自分がどのパートで立ち回るか動的に模索し、うまくハマった時の快感がどの層にも用意されていました。

確かにスペシャルはゲームをひっくり返せるぐらい強力無比でしたが、スプラトゥーン2が目指したチームワークは皮肉なことに初代スプラトゥーンにこそ存在したと感じます。スペシャルが強すぎるという文句のほとんどは、敵のスペシャルに負けたのではなく、味方にスペシャルを撃たせてあげられなかったことによるものです。

スプラトゥーン2で敵のスペシャルに負ける理不尽さは確かに減りましたが、その代わり初心者へのフォローが求められる事もほぼ無くなってしまったのです。

Wii Uゲームパッドは偉大だった

以下はスプラトゥーン2が発売された直後に投稿されたコントローラーの遅延をテストした動画です。

もちろんゲームパッドの上に直にProコントローラーを置いているなど検証方法に問題が無いとは言えませんが、それでも目で見て分かるほどジャイロの精度に差があることがわかります。私は専門家ではありませんが、WiiUのゲームパッドが高度な地磁気センサーを積んでいたことでスプラトゥーンのプレイ体験が劇的に向上していたのではないかと思います。

(ジャイロスコープと加速度センサーは)物体の位置の相対的な変化を追跡するということを得意としていますが、たとえばポインティングデバイスへの応用を考えた場合、あなたがどの場所を指しているのか、ポインターはどこにあるのかといった絶対的な位置情報を扱うことはできません。地磁気センサーは、地球の地場を参照しています。センサーのおかげで、ゲームパッドを常に絶対的な座標の上に誘導することが可能になります。
(中略)
この技術を応用する対象としては、ファーストパーソンシューターやレースゲーム、ある種のフライトシミュレーターなどが適していると思います。ソニーのシャープシューター(Moveコントローラーの周辺機器)でも同じようなことができたのですが、私達が実際に遊んでみたところ、トラッキングの正確性を欠いていたように思えました。応答には遅延があり、また精度も不正確なものでした。この技術をゲームに応用しても、熱心なユーザーはジョイスティックや伝統的なコントローラーに戻ってしまったでしょう。しかし、たとえばシューティングゲームにおいて、プレイヤーが意図した物体をとても正確に、かつ遅延することなしに(もしくは最少の遅延で)狙うことができるならば、ゲームの遊び方を変革できると思います。

まさにスプラトゥーンの人気を予言したかのようなコメントで、実際ゲームパッドの製造コストはWiiUの価格の大きな部分を占めていたようです。初代スプラトゥーンのお披露目動画を見直すと、ゲームパッドの性能についてかなりの時間を割いている事がわかります。

残念ながらゲームパッドの性能はずっと過小評価されてきたように思います。少なくとも私はSwitchのスプラトゥーン2でジャイロのもっさり感を体感するまでゲームパッドの真価に気づくことはありませんでした。

SwitchのジョイコンやProコントローラーには地磁気センサーは搭載されていません。SwitchがコードネームNXとして発表されたのが2015年の3月、初代スプラトゥーンの発売がその2ヶ月後ですからSwitchの設計段階でWiiUが持っていた高価なセンサー類が切り捨てられたであろうことは想像できます。しかし、これこそがゲームへの没入感のために必要なのだと思います。

ギアパワーとマッチング

初代スプラトゥーンではメインのギアパワーはギアで固定されており、外見からそのプレーヤーについているギアパワーの傾向を知ることができました。例えばリッターを担いだイカ娘(パワー)が味方にくれば遠距離は任せようとか、ヤコメッシュ(防御)を被ったスプラシューターは硬いから気をつけろとか、プレイヤーがどういう動きをしたいのかが一目瞭然でした。

左からスペシャル延長ダイオウイカ、筋肉リッター、人足ガン積みリールガン。

スプラトゥーン2ではアネモのオンラインショップでギアパワーの異なるギアを入手できるようになったため、コーディネートの幅が広がった反面ギアとギアパワーを通じたハイコンテクストなやりとりが失われてしまったように思います。見た目からどういう動きをするのか予想できないのです。

初代スプラトゥーンもスプラトゥーン2もマッチング後に武器を選べませんから極端なマッチングに放り込まれる事も少なく有りません。同じブキ同士が味方に重ならないようにマッチングは調整されているという話ですが、プライベートマッチのようにマッチング後にブキ選択できるようにすればそもそもそういった不満も起こらないんじゃないかと思います。

まとめ: スプラトゥーン3に期待するもの

以上だらだらと思った事を書いてみましたが、まとめると以下の3つがスプラトゥーン3にあれば良いなぁと思いました。

1. 初心者を守ることが勝利につながるゲームデザイン
2. 高性能センサーを備えたコントローラー
3. マッチング後のブキ/ギア選択

何か思いついたら加筆するかも。

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