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朽ちることの強さと美しさ 

国道23号を名古屋から三重に入りしばらく走ると、ハナミズキというホテルがある。
義理の親父に初めて会ったのがこのホテルだった。
宮路オサムの一カ月公演のバックバンドでサックスを吹いていた。
開演前のリハーサル後に、ホテル内の鰻屋でひつまぶしを喰わせてもらった。
テカテカと光るワインレッドのステージ衣装に身を包んだデカい体にニコニコとずっと笑った顔。
隣には一カ月限定で再結成した殿様キングスのメンバーがいたのですが、あまりの華やかさと浮世離れした空気感に驚いた記憶がある。
山川豊、鳥羽一郎、水前寺清子、船木一郎、錚々たる歌い手が御園座や中日劇場での長期公演をする度にバックバンドとして参加した。

男として破天荒であり、家庭を顧みることなどない人だっだけれど、外面の良さは天下一品であった。
唯一、母親をたった一人で99歳で送り、泣き言や愚痴なんて聞いたことがなかった。


16歳で名古屋ラテンクォーターのバンドボーイになり、サックス一筋、その道一本で生きてきた、今も現役のサックス奏者である。

抗癌治療の証である脱毛すら笑い飛ばし、未だ現役であることにこだわる生き様に空恐ろしさと人としての器の大きさを感じた。

生きものは全て弱っていくもの。
そして肉体は必ず滅びる。
摂理とか運命とか、それは理解じゃなくて受け入れるものなのかもしれない。
そうと知りながらも受け入れることができない自分、受け入れようとしない弱くて小さな自分がいるのを目の当たりにしている。


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