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年を重ねて、変わること

鮮やかな赤や緑と、ふわふわの例のあれ。
今日、人目を惹く振袖姿の人を数人、見かけた。

今日は、成人の日だったのか。
数年前に成人式を終えた私にとって、今日はただのありがたい祝日となっていた。
慣れない格好に身を包みながら笑顔を浮かべる新成人の皆さんをみて、ふと自分の成人式はどうだっただろうかと思った。

***

私は、一人で成人式に行った。そして、旧友とひさしぶり~と言葉を交わすこともなく、一人で帰った。
私立の中高に電車で通っていたため、地元の友達がいなかったのだ。

参加しても、友達がいないのなら、わざわざ行かなければいいのに。
私もそう思う。
でも、その年の私の市の成人式のゲストは、アニメ映画『時をかける少女』の主題歌を歌った奥華子さんだった。
あの、まるく透き通った声を、生で聴いてみたい!実は、その理由だけで成人式に行ったのだった。

だから、成人式自体に思い入れはなく、振袖は着なかった(前撮りはちゃんとした)。
成人式の後、中高の集まりがあったから、一応黒のドレスを着ていたが、その上から普通の紫のコートを着た。
たぶん、浮いていた。

***

そのくらい。
私の成人式の思い出。

奥華子さんの声が、人間から出てくる音とは思えない透明度だったのは覚えている。
偉い方のありがたい言葉とかは、覚えていない。
私の、成人を迎えての抱負だとか感慨だとかも、覚えていない。というより、特に何も思わなかったのだと思う。

20歳の誕生日もそんなようなものだったと思う。
生まれてから20年、きりがよくても、そこからぴったり何かが変わることはないのだろう。
19歳の私も20歳の私も21歳の私も全部一続きで、そのときに変わったかどうかと言われれば、分からないとしか答えられない。

でも、20歳の私と、今の25歳の私は、違うと言える。
あのときより、人との関わりを大事にできるようになったし、自分ともよく向き合ってきた。
たくさんのことを知って、強くなったけれど、その分、弱くもなった。

たぶん、変わるというのは、グラデーションなのだ。
空のように。
夕方、日が落ちてくると、水で溶いたみたいに青が少しずつ薄まっていく。オレンジやピンクや黄色がにじんできて、次第に紫がじんわりと濃くなっていく。そして、黒になる。
青から黒にひとっとびすることはない。
間にたくさんの色を含ませて徐々に変わっていく。

***

私は今、25歳。
まだだと思ってはいるけれど、アラサーという言葉がちらつく。
30歳。
自分の身に降りかかる数字ではないような気がする。
そのくらい、20代と30代の間には壁があると思ってしまう。

でも、きっと、30歳はそんなに大げさなものではない。
だって、20歳になるのも大したことなかった。
26、27、28…と1年ずつ年を重ねているうちに、自然と30歳になっているのだろう。

少しこわい。
でも、年を重ねて、変わっていく自分というのは、きっと、素敵だ。

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