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しなやかに不器用に人生の変化を味わう

結婚、移住、出産など様々なライフイベントと並行してコーチングの学びを進めていたかっきーこと垣内優衣さん。さらにはコロナ禍による生活そのものの変化やそれによるストレスなど自分ではコントロールできないものが次々と起こり、不安や悩みなどが自分の中で起こっていたそうです。そのような変化の中を、ときにしなやかに、ときに不器用に、自分やパートナーの想いや願いをあきらめずに進んでいくストーリーです。

Co-Active Story Vol.14 垣内優衣さん
プロフィール:神戸大学大学院で教育経済学・人的資本論を学ぶ。インターンシップを機に「成果やインパクトを高めるための組織創り」に関心を持ち組織開発を専門とする会社に入社。企業の採用支援や異文化コミュニケーションなどのプロジェクトに従事。その後NPO法人クロスフィールズに転職。社会課題の解決に取り組む組織(社会的企業)の支援や越境学習を通じた個人の伴走支援に従事したことをきっかけにコーチングを学び始める。人の可能性を心底信じる関わりに共感し、2021年12月にCPCCを取得。2019年に米国に移住後、2020年に長男を出産。現在は遠隔で仕事を続ける傍、Kakkyとしてコーチの活動を続ける。「個人の生き方・あり方の選択が組織の成果、社会へのインパクトにつながる連鎖」をテーマに活動を模索中。

―今日はよろしくお願いします。まずは、資格取得おめでとうございます。資格を取ってどれくらい経ちましたか。

ちょうど1ヶ月半ですね。

―今はどんな心境ですか。

そうですね。コーチングの資格を取った「今」、コーチングのことだけではなく、自分の生活の仕方やキャリア、何を突き詰めてみようかとか、生活にはどんなことが必要かなど、いろいろ考え始めました。今は、現実的に行動を起こしていかないといけない局面にきたと感じています。ただ、自分の中にいろんなサボタージュ(注:内面にいる行動を妨害するような声)があって。かつ、選択肢を決めるにしても挑戦の幅が広がりきらない、自分が見えている中でしか考えられないなという感覚があります。そこで、上級コースのメンバーに声をかけて、「他人に目標を立ててもらう」というワークをやってみました。

―次に向けて進んでいるのですね。そしてサボタージュの声への対処がユニークですね笑。

メンバーにコーチングをしてもらうというよりは、みんなが私だったら、「どんな目標を立てる?」「どんな行動をする?」というのを出してもらったんです。それで、コーチングを生活の中の一つとして確立していくための道筋を創ろうとか、その他についても決めたところです。

―なるほど、面白い。自分ひとりで考えないというのも、コーチングで「相手と一緒に創っていく」という関わりを学んだからこそかなと思いました。

そうですね。自分自身のことを一番知っているのは自分というよりかは、誰かと一緒にやるというところに信頼・自信を持っている感じがありますね。

―コーチの関わりとしてそういう要素も学びましたよね。

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では、学んだことについてもぜひお話を聞かせてください。かっきーは、今アメリカに住みながら子育てもお仕事をされていますが、学び始めた時は日本にいましたよね?

そうですね。まだ結婚前で、日本で仕事をしていました。

―大きなライフイベントが起こる中で、学んでいたんですね。なかなか大変に思えますがいかがでしたか?

みんなが迎えるような変化を自分も類にもれず受けていました。いろんな感情がうごめいたり、悩んだりするようなイベントとともに、コーアクティブ・コーチングに触れていた感じですね。


―そこを経験する中でのコーアクティブ・コーチングの学びというのは、ご自身にどんな影響があったんでしょうか。

そうやって問うてもらうとどうだったのかなと今考えるのですが…。学び始める前には入籍することを決めていました。なので、コーアクティブ・コーチングに出会ってから考えていたのは、誰かと人生を共にする時に、自分の人生と相手の人生、また家族としての生き方やあり方みたいなことです。そしてその中の一部として自分はどうしたいかってことでした。

―自分がどう思っているかはもちろん、相手がどう思っているかにも思いを馳せるし、「家族として」という観点で考えてみるとか、いろんな観点で物事を考えていたんですね。

コースを進める度にいろんな視点があるということに、自然に気づかされていきました。その中で「家族のためにはこれが最善」という中に自分が主人公としていないことは、嫌だと感じる自分がいることに気がつきました。「家族のこと」「わたしのこと」と分離しちゃう気がしていて、最初はそれが苦しい感覚でした。いろんな視点を考えながらもそうじゃないあり方をまず自分の中に持ちたいと思っていました。抱合して自分もその中に存在させておきたかったんです。

―さまざまな視点(捉え方)に気づいた上で考えていたのですね。この辺りはコーチングの学びが反映されているようですね。

そうですね。パートナーはずっとアメリカにいたので移住するという選択肢はあったんですが、入籍してすぐにそれはしないことに決めました。自分がやってみたいこと、その時に大事だと思うことを追求しようとすると、日本でやっていたことを続けたかったので、しばらく離れて暮らすことを決めました。

―その選択をしてみてどうだったのですか?

意志を持って選んだものの、それについてはずっと考え続けていました。「これでいいのかな」とか、よぎっていたものはありました。パートナーには「一度決めたら覆さないでしょ」とか言われて、私は結構強いタイプだと思われたりしていて。「そうだね」と思いながらも、「本当は寂しいんだろうな」とか「早く来てほしいんだろうな」ということはよぎっていたので、コースに参加した時のクライアント体験の最初のテーマはそれでした。「実は今遠距離で…」みたいな。

―すごくリアルなテーマを扱い、学びながら、自分についても考える。そんな期間になったわけですね。

本当にまさしくそうですね。

―悩みを誰かに話して、聞いてもらうことで、相手のことや自分が大事にすることなど、いろんなものが出てきたのではないかと思います。学びを進めるうえで、自分について気づいたことはどんなことがありますか?

まず、私という人間は「これ気になるな」ということが一つ起こったら、それをやりたいっていう気持ちがすごく強くなるということです。そこになかなか触れられていないとか、何かの環境のせいで、できなくなることにフラストレーションを溜めやすいってことはわかったんですよね。その後アメリカに移住し、パートナーと一緒に暮らし、子どもができたりという中で、どんどんどんどん、自分のワクワクの栄養源になるようなところから遠ざかってしまう感覚がありました。

そして、私がそういう栄養源を持っていると同時に、パートナーや他の家族もそういうものを持っているんだろうなと思いました。誰かのワクワクや栄養源が、わっとすごく尊重される時とそうでない時の波があるんだろう、と。ただ、家族がチームとして一緒にがんばっていくことを考えると、お互いのワクワクの根源やお互いに対してどういう風にしていきたいと思っているとか、家族をどういう風にしていこうと思っているかなどをちゃんと話し合っていかないといけないと思いました。シンプルに「尊重」「協働」していくことがすごく大事だと思っていることに気づいて、それを家族にも働きかけるような動きになっていったような気がします。

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―なるほど。家族をチームとして捉えていくことが大事だと気づいていったんですね。具体的にはどのような関わりをしたのですか?

そうですね。子どもが生まれた後のことですが、そもそも出産後って、ホルモンのバランスが崩れて感情的になりやすいという中で、尊重・協働について話したいなと思いながらも、うまいことアプローチができていませんでした。そんな時に、事件が起こるんですよね。パートナーが勤めていた会社がなくなってしまうことになりました。それも結構急な話で、1週間前にはそんな前兆はまったくなかったのに、数日前に、「これはヤバい」ってなったんです。

それまで、わりと働き詰めで「働くのは僕やる」と。一方、私は赤子を生かす担当みたいな感じだったんです。でも、会社がいよいよヤバいとわかった時にパートナーが「めちゃくちゃ怖い」と言い出しました。アメリカの会社なので、もともと保証されていたわけではないけど、このまま何も心配はないだろうという感じだったわけですが、急にそれがなくなってしまうことが怖い、と。

収入源が確保できなくなるかもしれないことや自分が描いていたキャリアの道が急に閉ざされてしまうこととか、ミルクが買えるのかとか…。そこまでゼロになるわけじゃなかったんですけど、想像するとそんなところまで来てしまって。私も「まさかそんなことがあるとは」ってびっくりしました。
それで、パートナーから「怖いからすぐにでも就職活動を始めたいと思う」って言われたんです。

ただその時に、彼がまるで沼みたいなものが渦巻いているところから急いで飛び出すような、居心地がよくないからそこから抜け出そうとしているように見えて、なんかよくないんじゃないかと思ったんです。


―何か、恐れから行動しているような?

そう、恐れから行動しているような。それともう一つ、それまでの働き方や仕事に対しての見方、家族についての考え方や接し方について、もうちょっと話をしたいなというか。家族の協働のために、何か他のやり方はないかと話しかけたかった時だったんですよね。でも、当時は彼が大切にしている仕事を優先すると話をするための時間は取れない、と思っていたのです。

その二つのことが重なって、「今、いいタイミングなんじゃないか」という直感が降りてきて。さっき言っていた恐れからそれを無理やり回避しようとすることが、彼のためにも私たちのためにもよくない気がして、「その不安や怖さの中にもうちょっといてもいいんじゃない?」と伝えました。


―まさに、それはコーチングの関わりそのものですね。パートナーとしては恐れの中で危機を感じていて、それは家族の危機でもある中で、かっきーは直感で「これは家族の協働のチャンスだ」と思えたんですね。

そうですね。どんな風になっていきたいとか、妄想みたいなところも含めて願いがありました。少なくとも今よりはもっとよくできるんじゃないかなと。正直、私はずっと独身でいくと思っていたので、そういうチームを持つ、創っていくことを考えたことがありませんでした。

でも、その局面になってみると、当たり前ですが婚姻届を出したからとか、子どもが生まれたからって、自然に望むような形になるわけではなくて。まず、一人ひとりがいて、それを取り巻く環境も変わっていく中で、家族という形も変わっていくんだなと思うと、その変化するところも一緒に捉えながら、その時の自分たちのいいところを探っていくためには、対話が必要なんだな、と純粋に思いました。


―刻々と変わるそれぞれの変化を見ていたし、かっきー自身の中で「どうしていきたいか」という考え方もどんどんと変化していったんですね。

そうですね。安定して毎日仕事に行けるっていう時に思い描くことと、そうじゃなくなった時に思い描くことって、本質はすごく大きく変わるわけではないんですけど、「今必要なのはこれだね」とか「これをふたりの中で大事にしていこうね」というところに対して話せる内容がどんどん増えていったように感じますね。


―まさに意図的な協働関係創りですね。創ることをあきらめなかった。それはまさに、相手とともに環境を創る筋力が強化されたんだろうなと感じます。パートナーに「不安の中にいてみようよ」と言った結果はどんなことが起こったんですか?

まず、「今コーチングを受けるのとかいいと思うんだよ」って言ったんですよね。そしたら、彼は初めてコーチをつけることにしたんです。「いい人を紹介して」と言われたので、私もマイコーチに相談して。
それまでは、「コーチングって、趣味でやってるやつでしょ」くらいだったんですけど、これをきっかけに彼はコーアクティブの世界をライブで体感したんです。自分が考えないといけないテーマが本当にある中で、生きたテーマを彼が体感するというのが日常に取り込まれました。

私自身もそれは同じで、「さて、チャンスと捉えてみたものの、自分は?」という生きたテーマがあったので、それがコーチとの対話の中心だし、自分自身でも毎日考えていました。

彼がコーチングを受け始めたことによって、彼との間に「サボタージュ」などの共通言語ができたのは一つの進歩でした。さらによかったのは、ちゃんと自分のことを開示し合えるようになったことですかね。お互いが自分の声をちゃんと出せるようになりました。それまでは、「相手はこう思うだろうな」と思ったら、それに合わせた声を出していたわけなんですけど、それは結局サボタージュ同士が対話をしているみたいなことで。

それが何ヶ月も続いていてモヤモヤが残る感じでした。でも「本当の声ってこれだな」っていうのが出るようになっていきました。それが出てきたことで、お互いの信頼度が高まったかなと思います。

そうすると、今度は声がたくさん出るから「家族をどうしていくか」「ふたりの関係をどうしていくか」をあまり決められなくなってきて。「ちょっとこれは自分たち以外の力を借りて、対話をする機会を持とう」ということで、ふたりでシステムコーチング(注:組織と関係性のためのコーチング)を受けることにしました。


―「家族の形」を定義しづらくなるくらいまで率直に声が出せるようになった(笑)。ただ、決まらないんだけど、信頼度は高まったんですね。本当に信頼度を高めるためのプロセスを踏んだのでしょうね。それは大きいですね。

本当に大きいですね。言葉の表現が難しいのですが、元々信頼はしていましたけれど、さらに「自分の声を出しても大丈夫だな」というところも信頼できるようになった。「ちゃんと聴いてくれる」とか、「私も聴こう」「聴きたい」と思えるようになりました。


―それはまず、相手の話を聴きたいという関わりをしたことがきっかけですよね。パートナーも「あなたの話も聴くよ」というのが今まで以上に深まった感じがします。

本当にそうですね。どれだけ彼がコーチングに興味がなかったというエピソードを一つお伝えすると、「感情や気持ちを扱う」とかそういう表現に対して「それってどれだけ根拠があるの?」「どれだけ意味があるのか論ぜよ」みたいな感じだったんですよ。ははは。そんなところから、彼も聴いてくれるようになったし、聴きたいとなったりしているのは、すごい転換だなと思います(笑)

―そうですね。すごい変化ですね(笑)そういう意味では、このことはコーチングを学んだことでの大きな変化のひとつですね。

まさにそうだと思います。結局ずっと自分の中で問うているものとか、彼との対話のテーマって、変わらず「ファミリーの幸せって何か?」なんです。そこへの向き合い方が少しずつ変わってきているなって思います。

今は、そのテーマをふたりで握っているというか、ふたりで見ているような気がします。以前は「確固たるわかりやすいビジョンみたいなものがあった方がいいのかな」と思っていたのですが、今の私たちはそれを持つよりかは、話し合いを続けていくこととか、定期的にお互いの意見が出せる関係であることを大事に思っているなということを共通で認識できるようになったので、今はそのあり方を選べてよかったなと思います。

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―まさに、「よりよくなっていくためには」ということを追求しているんですね。そういうプロセスを踏んでいること自体が、かっきーのやりたかったことだし、得たいことを体現している。そんな風に伝わってきました。

言っていただくと仕事の中でもやってみたいことは、そんなところにもありますし、そういうアプローチが好きなのかもしれないですね。


―まさに実体験で学んでいるような感じですよね。

やってみたって感じですよね。ずっと、よりよくしていくためにはどうしたらいいかを追求していくとか、問い続けるっていうことは大事だと思っていたけど、それを「家族」というところで体現した気がします。


―自分が実現したいことを自分で体現しているっていうのは、これはすごいことですよね。

そうですね。


―自分の人生の目的を体現して生きているってことですよね。

あぁ、確かに。そうですよね。考えてみたら、やっていること、私が今関わろうとしていることって、私が実現したいことですね。


―まさに創りたい世界を自ら体現している。

不器用ですが、まず、身近なところから。


―一番大事なところから。

そうですね。より証明できている感じがするし、コーアクティブ・コーチングとかコーアクティブな関わりへの自信も高まっている気もします。あと、本当に「今だ」みたいな時ってあるんだなって。そういうベストな時が、誰にでもどんなところにもあるんだろうなって経験から信じられますね。


―ありがとうございました。



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