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【試し読み】vol.16 シナリオ「この世ならぬ黒」|えくすとら

本記事は、公式アプリ「クトゥルフ神話TRPG ルールブックPLUS」にて、有料プラン加入の方向けに公開中のアプリ限定コンテンツ、「クトゥルフ神話TRPG えくすとら」の試し読み記事です。

#シナリオ

※シナリオ内容のネタバレを含みます。閲覧の際はご注意ください


 探索者たちはミスカトニック大学を取り巻く「黒い」取引に巻き込まれることとなる。

作:ブライアン M. サモンズ 
訳:アーカム・メンバーズ 
イラスト:ウェイン M.ミラー 
マップ:ディーン・エンゲルハート

はじめに
このシナリオはプレイヤー2人から6人向けで、大学のある町や都市であればどこでも舞台にできる。幽霊にとりつかれたアーカムとミスカトニック大学をプレイヤーに紹介するのに最適だろう。1920年代を舞台としているが、このシナリオはキーパーがいくらか手を入れれば現代を舞台にしても問題なく成立する。

キーパー向け情報
 ジョナサン・ドーバーは未来がどうなるかを知ることにとりつかれた男だった。妻のマーガレットが突然の無残な事故により亡くなったことで、彼の世界は打ち砕かれ、破滅への道をたどることになった。彼は世界中を旅して回り、さまざまな部族や魔女のカルト、秘教結社、果ては個人の霊能者や占い師たちについて調べ、そのようなものが実在するというわずかな可能性でも学び取ろうとした。何年もの間、彼の調査は実を結ばなかったが、ついにアジアでとある古代から続くカルトに出会った。そのカルトは「あらゆる時間と場所」を見ることができる「夢の彼方からやってくる」ものを崇拝していた。ジョナサンはイブ=ツトゥルと呼ばれるこの存在に執着し、やがてこの存在と接触する方法、その手先を召喚する方法、そして最悪なことにその存在の胸の悪くなるような血液、「黒きもの」として知られるその血液を呼び出す手段を学んだ。
 普通、黒きものは武器として用いられるのだが、それがイブ=ツトゥルの血液であることから、外なる神の時間を超越して見る力のいくばくかが備わっているのではないかとジョナサンは考えた。そのため彼は黒きものを呼び出し、慎重にそれを摂取した。確かに、その血液は異なる時代や場所を見る力を与えたが、同時にジョナサンの正気を失わせ、ついにはその命までも奪ってしまった。息子のジェイコブはすでに成長していたが、孤独と苦しみの中に取り残されることになった。
 ジェイコブ・ドーバーは、自分の少年時代が未来を知るという常軌を逸した熱情に駆られて世界中を旅する父に連れ回されたことで費やされてしまったことを憎んでいた。アジアに行って以来、父が秘密主義を強め、ますます常軌を逸していくようになったことも憎んでいた。しかし彼がもっとも憎んでいたのは、かつては莫大だった家族の財産を父が浪費してしまい、ジェイコブを貧困に陥れたのみならず、数千ドルもの借金を背負わせたことだった。孤立し、友人もなく、愛されもせず、顧みられない子どもとして育ったジェイコブは、今や邪悪な性根の若者となった。
 そしてある日、彼は死んだ父の日記を読んだ。そして呪文や怪物についての父の正気を疑うようなたわごとの真実を知り、黒きものが父をすり減らしてしまったも同然であることを見いだした。それを知ったジェイコブは、唾棄すべき貧困から逃れるために冷酷な計画を思いついた。彼は黒きものを召喚するが、自分のためにではなかった。ジェイコブの目的は、それを快楽が得られる麻薬として他人に紹介し、ひとたび彼らがその邪悪な物質の中毒になれば、それを高値で売りつけることだった。
 彼の計画には欠点が2つあった。1つは地元の犯罪組織を怒らせたことだ。彼らの麻薬や酒の密売から客を奪っただけでなく、ブラックの乱用がもとで何人もの死者が出るようになり、招かれざる警察の介入を受けたためだ。2つ目はウォルター・レズニックという名の若者にブラックを売り、その結果として探索者たちが巻き込まれたことだ。

「クトゥルフ神話TRPG えくすとら」Vol.16

続きは公式アプリ「クトゥルフ神話TRPG ルールブックPLUS」にてご覧ください。

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