A little strange thing 2:Izumi Sakai + Yasuharu Konishi 『Can't Take My Eyes Off You』

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 1999年作品。Izumi Sakai - 坂井泉水、つまりZARDの8cmシングル。今作は単品でリリースされたものではなく、ZARDのアルバム『永遠』の初回盤に、歌詞カードに挟み込まれる形で封入されていた特典である。

 タイトルの時点で判っている人が殆どだと思うが、フランキー・ヴァリのクラシック「君の瞳に恋してる」のカバーである。しかし今作、何故か小西康陽がプロデュースしている。小西がZARDに関わったのは恐らく今作が唯一。そもそも当時はBeing系とあまり関係は無かったと思うので、何故このようなコラボレーションが実現したのかはかなり謎。

 子供の合唱をフックとして使用したフレンチポップ風のアレンジ。しかしそこは小西康陽、アコーディオンはあのcoba、ジャケットもフランスの有名イラストレーターFlorence Deygasというガチ仕様。故にかなりハイクオリティに仕上がっている。個人的な感想を述べさせてもらうと、「君の瞳に恋してる」の解釈の仕方の一つとして椎名林檎のカバーに並んで好きなアレンジだ。
 カップリングの「Readymade Wizard Mix Short Cuts」はこちらも小西が手掛けたと思しきリミックス。こちらは当時のReadymade Recordsの傾向を反映した、フレンチ・ハウスふうのシリアスなアレンジになっている。ちなみにここに収録されているのはタイトルの「Short Cuts」が示している通り、短く編集されたショート・バージョン。
 後にファンクラブの会員向けに限定販売(?)された、ZARDのコンピレーション盤『Cool City Production Vol.6 ZARD ~What Rare Tracks!~ Second Edit』には「Readymade Wizard Mix Rare Edit」なるものが収録されているらしいが詳細不明(この文章を書くためにいろいろ調べていてこのバージョンの存在を初めて知った)。

 この『永遠』初回盤には8cmシングルと一緒にアンケートを兼ねた応募ハガキが封入されており、応募者の中から抽選で1999名にこのシングルの12インチシングル(レコード)がプレゼントされた。この12インチには「Readymade Wizard Mix」のフルバージョンが収録されている。

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 なおこの12インチは後に2万枚限定で一般発売されている(抽選品と同じ仕様なのかどうかは不明だが収録されている内容は同一の模様)。中古市場ではたまに見かける盤なので、興味がある人は少し探せば入手できるだろう。

 察しの良い人はお気づきだろうが、今作はZARDのアルバムの特典であるにもかかわらずアートワークに「ZARD」という言葉が一切使われていない(上の写真を見ればわかるように応募はがきには「ZARDと小西康陽による」という文言があるにもかかわらず、である)。discogsやオークションサイト等の画像で確認してみると、先述の一般流通した12インチで初めて「ZARD」という表記が使われていることがわかる。何やらいろいろな事情がありそうな作品である。

 ZARDはBOXやベスト盤などのリイシューが頻繁に行われているアーティストであるが、今作は一般発売されている作品には再録されていない。『永遠』そのものが何枚も売れたヒット作なので入手自体は容易。diskunion等の封入物を明記するタイプの中古店で8cmCDを付属している旨を記載した盤を買うのが確実だろう。『永遠』自体も傑作なのでお勧め。
 一応2004年にZARDのファンクラブ会員限定で販売されたCD『Cool City Production Vol.6 ZARD ~What Rare Tracks!~』には再録されているが、オリジナル盤よりもこのコンピレーション盤の方がよほど入手困難だと思われるので素直に『永遠』初回盤を探した方が良い。
 ちなみに後にGIZA Studioがリリースした『Christmas Non-Stop Carol』というコンピにも「Can't Take My Eyes Off Of You」のカバーが収録されているが、こちらは葉山たけしが編曲した完全なる別物なので要注意。

(文中敬称略)