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ケケコの眉毛

◎ももこ、という名前を持つ。
愛らしいとか、似合ってるとか。
私の名前は比較的、
肯定的に捉えていただく場合が多い。
ただ、当の本人はというと。
この名前のせいで、とは言わないが。
「万葉仮名」の授業が大嫌いだった。

◎だって、モモコは毛毛己。
ケケコですもの。
もう一回言います。
ケケコですもの(やけくそ)。
毛生えすぎ。2倍増し。大増量。
自分の名前を万葉仮名で書いて、
前の席の人に渡すとき、
すごい恥ずかしかったな。
(つくづく自意識過剰)

◎そういえば、一日何回、
脱毛広告を見かけるのだろうか。
テレビは観ないが、SNSは見る。
思い返せる中で、
一日20回くらいは見ているはず。
無意識に見ている回数は、
あまり考えたくない。
それだけ、欲求とか願望が、
他者に意図的に植え付けられているのを
自覚するのは、
とても怖いことだと思うから。

◎毛に対して、きちんと
意識を持ち始めたのは、小学生のとき。
男の子に
「男じゃないのに、なんで髭生えてるの」と、
口回りの産毛の濃さを指摘された。
幼少期から高校卒業まで(といいつつ、未だに)、
家庭内ではいつもタオルケットを握っていた。
他者様より、顔を含めた身体に、
タオル生地をあてる時間が長かったから、
摩擦に耐えようと
体毛が頑張りすぎたのだと思う。
要らぬ努力をして空回りするどころか、
状況を悪化させてしまう感じ。
身体の所有者の【私】にそっくり。

◎あとは、後ろ姿を
「襟足/うなじ、綺麗にしなよ」と
言われた側(そば)で、
テレビから脱毛広告が流れてきて、
「芸能人じゃないんだから、
脱毛は必要ない」という声も聞こえた。
同じ記憶の中に、三者三様の解釈があって、
私の身体のデザイン権みたいなものは、
誰に一任すればいいのか、
未だによく分からない。戸惑ってしまう。

◎でも、目に見える範囲で
毛の剃り残しを見つけると、
外出が億劫になるのは、変わらない。
手足もそうだけれど、
例えば、眉毛とか。
私は生まれながらの太眉だから、
中高時代の写真は、全て三角型の太眉。
もう、絵でも描かなきゃもったいないくらい、
立派。こうやって自虐はできるけれど、
未だに精神的なコンプレックスが溶けてなくて、
写真を見返すことが苦手だ。
(今は毎日、眉毛を整えている。
多分、限度を超えて薄くしたり、
細くしたり。分かっていても
色々気になって、やめられない。
気持ちはヤンキー)

◎先日、2週間の古民家暮らしを体験した。
先輩が管理されている、函館市の古民家。
暮らし、だから寝食を共にするはずなのに、
やっぱり私はこの、毛の恐怖に負けた。
(皆様の心の声)嘘でしょ‼
↑これぐらい驚いて、
あるいは笑っていただかないと、
むしろ心が持ちません。笑

◎お借りするバスルームに、
除毛用のカミソリを
置きっぱなしにしてしまったら。
朝起きて、
毛むくじゃらになっていたら。
こんな、どう考えても絶対に命とは
引き換えできないであろう(くだらない)
(と書いているものの、
やっぱり気になってしまうウジウジ)
悩みを優先するあまり、
ほとんど自宅で入浴を済ませてから、
夜ご飯と寝るためだけに、
荘に通っていた。
もちろん、ノーメイクで。
こう書くと、
すっぴんの方が見られて恥ずかしくない?
と疑問を呈していただける場合もあるが、
多分、同じ恥ずかしさでも、
私の中ではとにかく、
毛というものの恐怖排除に
軍配が上がったのだと思う。

◎…という心の淀(よど)の一部を、
先日友人にこぼさせていただいたら、
少しだけ気が楽になりまして。
それに、この悩みに限らず、
身体的、精神的なコンプレックスは
(あの人も困ってたのか~)と。
誰かの硬直した心を柔らげる、
誘発剤になり得る場合もあるのかもと。
(流石に、自惚れすぎか)

◎ご自身の大切なお時間を割いて、
ここまでご一読いただけたことに、
もう感謝しかない。だって。
ただのケケコの
戯言(たわごと)ですもの。

◎きどももこ…函教大4年。趣味は読書、水泳、献血、落語鑑賞。月30~60冊、年間600冊以上の読書量を積む。今年度から選書サービス「きどの¥3000選書」を開始。将来の夢はブックコーディネーターとラジオパーソナリティー。

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