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身の程知らずという才能

会社のジョブローテのせいで、毎年異動がある。毎年違う職場で全く新しい仕事を任される。毎年役に立たない邪魔な人間として、ご迷惑を掛けてすみませんという姿勢で仕事をする。役に立たない人間が唯一できることは「精一杯働いています」と全身で示すことだから、毎日気を使う。

やっと仕事に慣れてきたあたりには異動になって、また一からやり直し。すごく疲れる。本当に辛い。でも同じ境遇の同期はみんな平気な顔をしている。私は人より下に立つことが許せないプライドの高い人間だから余計辛いんだろうか。

私は特段優れたところはない人間なので希望の部署へ異動できたのは根性を評価されたからだろうと思っていた。が、根性もないようだ。
根性があって、上昇志向の女(いま会社は幹部の女性比率を上げるのに必死だから)だからかもしれないと思ったりした。なんで私はこんなに何に関しても一ミリも自分の功績だと思えないんだろう

でも、自分は頭も悪く、要領も悪く、怠惰で、我が強いのに、身の程も知らず上を目指そうとする。なんで素直に自信を持てないのに、上昇したいと思えるのか。

自分が願った地位を得るたび、本当の自分がいるべき場所から随分離れてしまったと、ハリボテの自分に罪悪感でいっぱいになる。私なんかよりよほど優秀で努力家なのにも関わらず謙虚な生き方をする人たちを思うと羞恥心でいっぱいになる。

こんな感情間違っていると思うけど、どうしてもそう思う。評価なんて運や印象で決まる。自分の努力以外でなんとでもなる。だから私はだましだましここまで来れてしまった。評価されるべき人を押しのけて来た。私に優れているところがあるとするならこの烏滸がましさだけだ。

人間の価値に序列をつける愚かな人間だから、自分には何かを成し遂げなければ価値がないと思う。だからなんとかしてなにか成し遂げたと思えるように生きてきた。だけど、だから、本当は成し遂げたい何かがあるわけではない。ただ自分に価値があると思えるような理由がほしいだけだ。本当になにかしたいことがある人には永遠に追いつけない。

私はこのまま一生自分の価値を保証してくれる理由を探しながら生きていく。
そんなもの、なにかと引き換えにしか得られないものではない、元々備わっているものだということに、一生かけて気づくために。

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