時代に置いていかれることの恐ろしさ
私の父はコンピュータグラフィックスの関係の仕事をしていたので長らくIT関係の最先端を走っていた。
だから我が家はくそくそ貧乏だったくせにPC付近は割と充実した生活を送っており、そのおかげで私は同年代の中では割と普通にネットがわかる方だ。
我が家にはいつも父が選んだメーカーのデスクトップPCとノートPCが2,3台あり、姉も私もタイピングゲームで遊んで育った。
PC関係で困ればいつも父に聞いたし、たまに壊れたPCを解体して緑色の板を引っ剥がして見せてくれた。
父は当時世間よりずっと先を見ていて、20年くらい前にはもう、非対面型の英会話教室ができる、とかって話をして、仕事にしようとしたりしていた。
その父が、最近、少しずつ時代に追い越され始めていることを感じる。
営業に騙されておっせぇ光回線を契約させられたり、
PCについて質問しても答えが曖昧だったり、
スマホに変えるのを嫌がりずっとガラケーだったせいで、いざ変えると簡単な操作すらおぼつかなかったりする。
時代のずっと先を走っていたはずの父が。
いつでも時代を見越していた父に対する尊敬は今でも変わらない。でも、時代ってすごい勢いで変わっていくんだと恐ろしくなる。
必死にしがみつかないとあっという間に何もわからなくなっていくんだ。
いや、そんなこと、実は想像に容易いことだ。
私の職場で、年上の先輩方のPCやスマホの扱い方が全く私達世代と異なることに気づいたことがある。
・オンラインで会議をするとき、何度伝えても話す前にミュートを解除し忘れる先輩は、
オンラインでコミュニケーションを取ることに慣れていないから、実際にそこにいる人と話してるつもりなのだと気づいた。
・別の先輩は、スマホのサービスのログイン画面で、メールアドレス入力の際にはコピペせずに一文字一文字入力する。
どこを見れば自分のメールアドレスが載っているか、どうやって開いてるページを保留にしたままメールアドレスを持ってくるのか、どうやってコピペをするのか、そもそも知らないからだ。
私達がじゃあなぜそれらを知っているかといえば、スマホの構成自体がPCでの操作から直感的につながるように出来ているから、PCの操作経験から簡単に予想し、学ぶことができるからだ。
パスワードを作ってください、というなんてことない指示に戸惑わずに入力できるのは、何千回と大文字小文字記号などあらゆる組み合わせのパスワードを作ってきたからだ。
アプリに表示される歯車マークは?
横棒3本のマークは?
ただの丸は?
「共有」の意味は?
慣れ親しんだ我々からすれば考えすらせずにわかることが、彼らには分からない。
そりゃそうだ。
今存在するサービスのあらゆる機能は、私達が長い間デジタルコンテンツに触れながら培ってきた「常識」を前提として作られているのだ。
そう、『新しいもの』は、決して新参者に優しいわけではない。
『新しいもの』が人に向けられたものである以上、それらは今までのユーザエクスペリエンスの地続きでやってくる。
日々、ユーザと開発者の間では膨大な文化と常識が形成され、それを前提として次の『新しいもの』が誕生していくのだ。
だから、一度離れた人間が、それらの文化と常識を持たずに新たなサービスを使いこなすのは非常に難しい。
サービスを継続して使うためには、一つ一つの操作に引っかかりなく、ストレスなく使えること、それが一番大事なことだから、
『この記号が示す意味は、』
『このボタンは?』
『この言葉は何を示す?』
といちいち引っかかっていては、やる気が失せてしまうだろう。
では、時代に取り残されずに生きていくには、どうすれば?
「最新のテクノロジーとサービスに触れることを一瞬たりとも休まないこと。」
これしかないのだ。
毎日仕事をして、家事をして、ほんのちょっとだけ趣味に使う大人たちには大変なことだ。
今をやり過ごすことで精一杯だ。
時代がどうとか、知ったこっちゃない。そうだよ。
でも、わたしは、なんとかやってみたい。
せっかくこんなに数年で全てがひっくり返るような、激動の時代に生まれたのだから、
時代の最先端の特等席で、世界が変わっていく様を、見続けていたい。
私はそう思うから。
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