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『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』感想

 2020年9月18日(金)より全国の劇場で公開された『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を昨日見てきたので、想ったことを書き留めておこうと、この記事を書いております。

 座席が空いて落ち着いて見れる時期を狙ってたんですけど、他作品の公開タイミングでデカいスクリーンで(恐らく)見れなくなる気がしたので、ついに足を運びました(笑) やっぱ映画体験に重きを置いているので、どうせなら万全の、最上級の状態で作品を味わいたいという…。


 ってそんな話はどーでもいいか、では早速感想書いていきます。

 視聴完了後すぐ思ったのは、

アニメーションクオリティとしては文句なしに最強だったけど、物語としてはちょっぴり消化不良?

な作品でした。(因みに、久しぶりだったのでちゃんとTVシリーズを復習してから行きました。10話ぁ…)

 Twitterを毎日使っている以上、自然と流れてくる前評判の影響を全く受けてないと言うと嘘にはなるんですけど、そうだとしても、めっちゃ感動できるときはやっぱり素直にできるので(この作品に限らず今迄何度もあったし)、そこはそこまで関係ないはず…自分の感性を疑ってはいないです。

 何でいきなりこの話かというのも、明らかな泣きポイントで号泣できなかったのが良くも悪くも、視聴後につっかえたから。たまにあるんだけど難しいんだよなぁ…これ(笑)
 自分の感性が反応しきらなかった理由も何となく感づいているからそこへの自信みたいなものがある反面、涙腺が崩壊しなかった悔しさみたいなものも少なからずいつも生まれてくる。人の感性なんて人それぞれで、ないものねだりではあるんですけど、なんか"泣きたかったなぁ..."っていう謎のモヤモヤが生まれる(共感してくれる人いるかな…)。

 "むっちゃよかった"んですけど…その感想は刺激から反応までのプロセスが自然で圧倒的な時のそれではなくて(こんな文章化する必要がないくらいの)、他の余地を与えてしまった時のそれだった、っていう話です。後者が悪いわけではないのだけれど、やっぱり前者を求めてしまう人なので。


 大雑把な印象としてはこんな感じで、ここから先はネタバレありでいくつか書きたいので、(いないとは思いますが!)まだこちらの作品をご覧になって方は是非ご覧になってからどうぞです。


1.個人的な"泣き"のピーク

 "泣き"に絞るな!とかどっかから刺されそうな気もしますが、この作品は泣きに振ってると自分では認識してるので、ご了承ください。

 一番泣けたのはアイリスがユリスの元に駆けつけて、手紙を書こうとしてから電話を用意するとこまで

まじでよかった。アイリスが好きになるくらい。あのシーンに至るまで、彼女のドールとしての夢だったり、電話に対する危機感とかだったりを描いてくれたのが本当に効いた。
 彼女は手紙を書きたかったはずで…書き上げてみせたかったはずで…ユリスと自分の為に。あの土壇場での大きな依頼を成し遂げてみせるっていう気持ちも少なからずあったと思うんです…でもそれにこだわっている場合じゃないっていう葛藤みたいなものや、ヴァイオレットの引継ぎで来た自分には十分に書けないっていう悔しさだったり、それ以外にも本当に複雑な心境だったと思います(臨終に立ち会う、あの嫌な空気感や焦りもあって)。
 だけど、それらを全部差し置いて、何よりも想いを伝える、繋ぐことを最優先した彼女の姿に胸を打たれた。あの一連の動きは声が聞こえなくて、映像だけだったのも、凄いよかった。ああいう余白を残してくれるの凄い好きなんですよね。触れ幅の上限を受け手側でどこまでも伸ばせるから。ベネディクトも一緒に凄い勢いで駆けまわって、近所の電話のある家に頼みこむとことかまじでよかった(記憶違いだったらすいません)。
 その後無事、電話が繋がって2人が言葉を交わすシーンもお蔭でそのまま泣けました。彼の死と向き合うとこが後に展開されるであろう、と必死に身構えてはいたものの泣けてくるやつでした。リアルでもアニメでも人の死はやっぱり辛いです。身近な、大切な人ほど余計に。
 それで極めつけは、廊下でこっそり涙と言葉を零すアイリスの姿よ…本当に忘れられません



2.初体験だったクオリティ

 見たことないアニメーションが目の前に拡がってて息を呑んだシーンが大きく2つ。

 ひとつめ。
ヴァイオレットとギルベルトの再会シーンです。
 ここはねぇ…まじでビビった。ナニコレ…って感じでした。そしてこれまたリアルではないんだよなぁ…リアルとは違う水の表現における美が確実にあそこにはあった。欲しいとこでくる波打つ感じも、綺麗に魅せる角度を狙ったかのような集光模様も、素晴らしいものを見させていただきました。

 ふたつめ。
電波塔の完成祝いで花火が上がったシーンです。
 花火と、その光が夜空や街、人々を照らしていくのが本当に綺麗だった。本物より好きかもしれないって思うから、自分はアニメが好きなんだろうと、今では思う。映画館という大スクリーンで観れたのもそう思えた要因かもしれないです。光と音の圧は映画体験そのもの。

 全体的にもクオリティアップしてた気がするけど、特に印象的だったのはこの2つといった感じです。何だろね、質感と色味がめちゃくちゃ良かった気がする。程よい主張で。もっかい見たいなぁ…メイキングとかも。



3.ヴァイオレットとギルベルトの再会

 前の節で書いたので触れておくと、ここでほぼ泣けなかったんです…これが冒頭に触れたモヤモヤでもあります。「みちしるべ」(アレンジ版よかった)が流れてくれたお蔭でギルベルトが必死に駆けていくとこは涙しました。多分、劇伴が違かったら泣けなかったかもしれない、わからんけど。
 あのシーンは素直にヴァイオレットやギルベルトに感情移入できたら違ったのかなぁ…。ギルベルトの生存が大分早い段階で明確になった時点で落としどころが視えてしまったのもあって、視聴中のウェイトとして妨げに入る部分があった。あとはもう物語の起伏としての極点、特大の泣きが来る!っていう身構えと期待値。不意に来る方が泣けるは泣けるんだけど、ただそうじゃなくても感動できるシーンは問答無用で感動できるじゃないですか。感性ってそういうものでしょう。涙を出すんじゃなくて、涙が出てくるっていうか。それがそうならなかったのはやっぱし、2人の関係性に浸り切れなかったからなのかなぁっては気はします。冒頭の繰り返しにはなるけれど、だから逆にあそこで大号泣できた人は素直に羨ましいなぁとも少し思います。

 長年ずっと救われてこなかったヴァイオレットの気持ちがやっと救われた、自責の念や自分といない方がいいというストッパーからギルベルトがやっと解放された、みたいな理解はできたけどそこまでなんよね…。ただまぁ、ホッとした温かい幸せな気持ちで見届けられたのは事実です。



4.その他、印象に残ってるシーン

 まじで大した話ではないんですけど、個人的に書き残しておきたくて(笑)えっと、

 ひとつめが、
兄貴のディートフリートの「ブーゲンビリアの家は俺が継ぐ!」ってとこのギルベルトの背中を押すシーンです。
 お前ぇ!(作品の流れとしても、今迄描かれてきたこの兄弟の関係性としても)良いとこ持ってたなぁ!このズル!
って思いました。一人でニヤニヤしてました。あんな上からで、微妙に照れ隠しで、けど兄貴面で、なんか無駄にくそカッコよかっただけに、すんごい印象に残ってます。

 ふたつめが、
ホッジンズが娘か息子かで"父親だったら"としての悩みを何度か言葉にするシーンです。
 結局、どっち無理やん!ってなって面白かった。面倒見はいいので、どっちもいけそうなのにね。そんなことで身体が持つか持たないかの心配なんかしなくても、彼は身を粉にしてでも行動するいい父親になってくれそうです。それだけにもっと彼の笑顔も見たかったなぁ。
 花火のシーンなんかも彼がいつもの調子で"ヴァイオレットちゃん"って話しかけてるようなシーンがあってなんかね…胸が締め付けられるものがありました。あそこも声は聞こえない余白があって好き。

 みっつめが、
ユリスの死顔を映すシーンです。
 好きではないけど、あそこで文句無しの美しい死顔をちゃんと描いて、真っ正面から映せる作品ってそう多くはないんじゃないかと思うんです。単純にその成果物もだけど、そこに至るまでにあったであろう色んな考えを踏まえると凄いなって…。臨終に立ち会う空気感もよかったけど、それだけで終わらせず、最期の最後まで描き切ってくれたのは流石というか、あの笑ってるような綺麗な顔が見れてこそ、ちゃんと一区切りつけれる気持ちがあるのをわかってるというか。本当にいい顔でした。



5.さいごに

 特に書きたかったことは書けたので、まとめに。
TVシリーズで10話とかボロ泣きした割には、存分に泣けなかった…っていうモヤモヤみたいなものはあるけれど、そこはこの作品に限らずいつも自分の所為だと思ってるので、本当にそれ以外の大部分は大満足の作品でした。
 隅から隅まで、アニメーションを構成する各要素にこだわりと本気を感じれたのが一番大きいです。それに、ヴァイオレット一人をとっても、作品世界全体をとっても、やっとここまでこれたんだなぁ。っていう喜びというか、凄い明るい気持ちになれました
 あと帰宅後に読んだパンフレットに、原作者である暁佳奈さんのメッセージがあって。それを読んでこの作品に対する様々な気持ちが強くなりました。その日の内に劇場で買えてよかった…。


 ということで、感想は以上になります。

 二度の延期を経て、溜めに溜めた楽しみにしていた気持ちがちゃんと良い物に変わってくれました。やっぱり映画はいいですね…。
 この素晴らしい作品を制作してくださった皆様、その他関係者の皆様、心温まる素敵な作品をありがとうございました。

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