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なぜ私は2013年にイーサリアムを買ったのか

仮想通貨に惹かれた私の体験

はじめまして、ケビンです。日本の金融庁より暗号資産交換業者として登録を受けている Xtheta(シータ)の共同創業者です。本名は武藤浩司といいますが、私はアメリカ生まれ、香港で幼少期を過ごしたので、普段は英語名の方で呼ばれています。

香港にいた頃、家には住み込みで働くフィリピン人のメイドさんがいました。幼かった私や弟の世話をしてくれたのが、そのメイドさんでした。今でもよく覚えています。
なぜメイドさんがいたのかと言うと、それが現地の生活での通常の風景だったからです。フィリピンのメイドさんは、同じ英語圏の他の国で働き、給料をもらい、その給料を自分の国に送金することで生計を立てています。
メイドを雇用する側は、比較的安い賃金で言葉が通じる住み込みのメイドを雇うことができ、双方にとって良い取引が成り立ちます。

出稼ぎ労働の市場は大きく、特にそれが主要な産業になっているフィリピンでは、出稼ぎ労働者がフィリピンに国際送金する金額が年間2〜3兆円にもなります。それほどの金額が動くため、国際送金を取り扱う事業も多数あります。しかし多くの場合、手数料は異常とも思えるほど高いものです。もし日本から送金しようと思えば、数千円から1万円ぐらいの金額になってしまいます。平均月収3〜4万円の国からすれば、高すぎます。送金手数料を可能な限り抑えてくれるような国際送金事業というものが成り立っているというのも理解できます。手数料が高い背景には、当然高いなりの理由があることも分かります。しかし、利用者に選択肢が少ないということが、何よりも問題です。

大人になり、そういった背景を理解した時、ふと思いました。自分がお世話になっていたあのメイドさんも、国際送金をしていたのだと言う事。その手数料は、彼女の頑張りに対して、あまりにも高かったのかもしれないと言う事。

国際送金手数料がほぼかからず、短時間で世界中どこにでも送金できるビットコインを初めて知った時、これで多くの人が救われるかもしれないと感じました。あの頃にもしこの技術が存在しれいれば、どんなに良かっただろうと、思わずにはいられません。

私はそうしてビットコインにのめり込むようになり、仮想通貨の可能性に賭けようと、本格的な事業を立ち上げました。ちょうどその頃誕生したイーサリアムと呼ばれる新しい仮想通貨も、私の人生を大きく変えていきました。

イーサリアムとは何か

イーサリアムは、世界第2位の時価総額を持つ仮想通貨です。しかしこの単純な説明では伝わらない、本当の可能性が秘められています。では、なぜイーサリアムが期待されているのか、これから先にどういった可能性があるのかについて、解説したいと思います。

イーサリアムは、ビットコインの思想に影響され、少し遅れて開発されたものです。2013年に、ビットコインの開発にも関わっていたプログラマーの Vitalik Buterin によって、提唱されたのが始まりでした。

同じ仮想通貨という分類ではありますが、ビットコインとは大きく違うことがあります。後から作られたので、当然、何か別の目的があって作られているのです。そのためにはまず、ビットコインが作られた目的を少しだけ振り返ってみます。

ビットコインは、Satoshi Nakamoto と称する人物が、人と人とが直接決済ができる電子通貨として提唱しました。その背景には、今の金融市場に対する強烈な抵抗感覚があったのです。私の体験にも通じるものがありますが、Satoshi はもっと大きな視点で、金融社会への問題提起をしています。
お金は銀行が発行し、銀行に預けられ、国家の政策次第では価値を簡単に失われています。人類の歴史を振り返れば、一般大衆の貴重なお金は、何度も奪われてきました。それを繰り返さないために、自分たちで信用ができる通貨を作り、それを用いた決済システムを作ろうと言うのが、Satoshi の提唱したアイデアでした。そして目論見通り、現代の金融市場に対する不満や不信を持つ多くの先進的技術者に評価され、開発はされていきました。

イーサリアムはビットコインの思想、試みに大きな影響を受けながらも、違う目的を持って作られました。意外に思われるかもしれませんが、イーサリアムは通貨として作られたものではありません。イーサリアムは、ビットコインのような決済のための通貨では無いのです。

イーサリアムが目指したものは、誰にも搾取されない、管理されない、世界中に広がる自由で公平なコンピューターの開発です。コンピューターとはつまり、何らかのプログラムを実行し、目的を達成するために存在します。

私たちが普段使っているスマートフォンやパソコンには、様々なソフトウェアが搭載されています。ソフトウェアは、コンピューターで計算され、動いています。そのようなソフトウェアを動かす環境として、中央集権的にどこかの組織や国家が独占するものではなく、全世界に開かれたものを作ろうと言う試みなのです。
それによって、ソフトウェアという形で動くあらゆるものが、誰の管理も受けない世界に解放されるのです。例えば、クレジットカードの決済システム、株の売買システム、国際送金システム、電子投票のシステム。そういった、決して誰かが介入し、改ざんしてはならないシステムも全て、ソフトウェアとして作られ動いています。イーサリアムが目指したのは、それらのソフトウェアの公平性を実現する環境の構築です。ビットコインが国家や銀行の管理からお金を解放しようとしたように、イーサリアムはあらゆるソフトウェアを解放しているのです。

具体的に何ができるのかで考えましょう。例えば、イーサリアムと言うコンピューターを使えば、ビットコインのような新しい仮想通貨を作ることができます。実際に、イーサリアムと言う世界中に広まるコンピューターを使うための利用料金を支払う通貨として、Ether(イーサー:通貨単位 ETH)と呼ばれる通貨を発行しています。これが皆さんご存知の、イーサリアムと呼ばれる仮想通貨の正体です。

イーサリアムで開発・実行できるのは、仮想通貨だけではありません。ゲームであったり、電子的な証券であったりと、様々な応用ができるのです。それを実現するためにイーサリアムが取り入れた特徴的な機能が、スマートコントラクトと呼ばれるものです。スマートコントラクトについては、後半で解説します。

そんなすごいイーサリアムですが、その開発の資金を集めるために、2014年の7月〜8月にかけて、オンラインでクラウドセールが実施されました。支持者やこのプラットフォームに参加を表明した人、組織は、ビットコイン等の仮想通貨を送金して、将来稼働するイーサリアムの利用権利である Ether(イーサー)を購入したのです。その後、2015年7月30日にブロックチェーンが稼働しはじめました。

自分がイーサリアムに出会ったのは、まさにその時でした。

まとめると、イーサリアムは単なる仮想通貨ではありません。通貨を作るシステムそのものであり、世界中に広がる、非中央集権のコンピューターネットワークなのです。応用の可能性を考えれば、その価値は無限大に広がります。

なぜこの技術に賭けているのか

イーサリアムの特徴は、なんと言っても「スマートコントラクト」と呼ばれる機能です。

これは、「プログラムによって契約のルールを記載し、それを改ざん不能なブロックチェーン上で共有管理し、あらゆる取引においてルールを破ることをできなくする」ための機能です。契約の自動化であり、契約の履行を強制する仕組みと言えます。
これによって、仲介者、立会人、管理者が不在でも、事前に決めたルールを破ることを不可能にし、安心安全に取引をすることができます。つまり、現実社会の契約ごとを取り巻くあらゆるコストをカットし、安全性を高めることができ、取引の流動性を大きく向上させます。
簡単に言えば、スマートコントラクトを使って作られた仕組みの上では、取引相手を信じたり、確認したりする必要がなくなるのです。

この機能を提供することによって、技術者は「独自の仮想通貨=独自のトークン」を発行することができるようになりました。また、通貨の発行以外にも様々な応用が期待されています。

決済や商取引を含むあらゆる契約において、心配事はつきません。

- 相手が嘘をついているかもしれない。
- 取引を仲介する人が騙したり搾取しているかもしれない。
- 取引のシステムが不具合を起こすかもしれない。
- 取引の裏側で何か予期せぬことが起こっているかもしれない。

イーサリアムを使って実現したスマートコントラクトを使えば、利用者はそれらを気にする必要はありません。信用するとかしないとかではなく、取引において何が真実なのかがはっきりと証明できるのです。

金融業界に目を移せば、この機能によって、圧倒的なコストダウンや業界の構造変化を巻き起こすものがたくさん存在しています。例えば、暗号通貨で完結する投資ファンドであれば、事前に決めたルールに則って利益を上げた場合、自動的に出資比率に応じて収益を分配することもできるようになります。あるいは、事前にプログラムで決めておけば、出資比率に応じて投票権を付与し、株主総会のようなことも遠隔、自動で実現できるようになります。
従来型の中央集権的なシステムでも、もちろん似たような仕組みは実現できます。しかし、決定的に違うのは、そのシステムを運用している組織や会社を信用する必要がなくなると言うことです。

ではここで、もう少し掘り下げて、スマートコントラクトを使った独自の仮想通貨(トークン)を発行する流れを解説します。自分で通貨は作れるのでしょうか。
スマートコントラクトをもう一度定義し直すと、スマートコントラクトとは、いわゆる文書での契約書と同様に、取引のルールを「法律用語ではなくプログラミングによって」記述したものです。独自の仮想通貨であれば、それを発行する人がルールを決め、ブロックチェーン上に書き込み保管することで、結果としてそのスマートコントラクトに従った独自の「トークン」を発行できます。

イーサリアムで言えば、まずプログラミングをして契約の取り決めを記述し、それをイーサー(暗号通貨 ETH)を支払ってイーサリアムのブロックチェーン上に記録します。その結果、独自の「仮想通貨=トークン」を発行でき、そのトークンは生成過程でスマートコントラクトによって記述されたルールの通りにしか利用できないものになります。

例を示します。

1. 通貨の発行体がイーサー(Ethereum を使うための通貨 ETH)を買う
2. イーサリアムのブロックチェーン(データベースの集合体)に独自発行したいトークンで扱う契約の内容を書き込み保存する
3. 書き込むために事前に購入しておいたイーサーを支払いブロックチェーン全体に保存を依頼する
4. その依頼を受けてブロックチェーンを維持管理する人たち(マイナー)が承認をして独自通貨(トークン)の発行が完了する
5. 出来上がった独自通貨を誰かが買うことで契約に従った権利が譲渡される
6. 独自通貨が売買されて市場で流通するたびに契約に従った権利は移転される
7. スマートコントラクトで定義した契約が履行されたらその記述に従いなんらかの特典が独自通貨保有者に付与される

全てがこの通りではありませんが、こういうことが実現できるようになります。

上の例で最後に出てくる特典ですが、例えば次のようなものがあります。

- 独自通貨の売買に制限がついているもの(=譲渡制限をスマートコントラクトで設定しているもの)を市場でドルや他の暗号通貨に換金できるようになる(譲渡制限解除)
- 設定割合の独自通貨が追加付与される(金利報酬)
- 独自通貨保有率に従って事業体の保有する通貨が自動的に分配される(配当報酬)

スマートコントラクトの記述そのものは、それほど複雑なものではありません。当然、通貨や独自の取引モデルの設計などにはその分野の知識や経験が欠かせませんが、これまでの社会では到底想像ができなかったようなものを個人でも開発することができるようになったのです。

イーサリアムが実現したこの革新的な機能により、人々の持つあらゆる権利の移転が確実に行えるようになり、また分割や統合も容易に実現できるようになります。結果として、権利や資産の流動性が生まれ、新たな市場が誕生するのです。

他にも、スマートコントラクトがあることの利点は多くあります。

- 透明であり誰がみても(プログラム=AIが見ても)簡単に真実であると保証できるため低コストで安心できる
- 事務手続き不要で報酬の付与を確実に間違いなく実行できる
- さらに暗号通貨の特性である送金手数料の安さと少額決済機能のおかげで1円以下も正確に取り扱いできる
- 投票権のあるトークンに設計しておけば株主総会的なことが低コストで実現できる
- 管理は全てトークン保有者に委ねられるので搾取されることも没収されることもない

この先に起こり得ること

ブロックチェーンを使った仮想通貨(=トークン)を売買するプラットフォームには、2種類あります。

1. 中央集権方取引所
2. 分散型取引所(DEX)

1は、いわゆる大半の、企業が運営する仮想通貨取引所や、トークン取引所のことです。誰かが管理している取引所、ですね。私が運営している Xtheta も、この分類に該当します。今後登場が予測される、上場有価証券や金融商品をブロックチェーンベースのトークンに置き換えて売買されるプラットフォームなども、この分類です。

2は、企業が介在しない、自律運用される売買プラットフォームです。正確には企業が仲介しているタイプの分散型取引所もありますが、説明をシンプルにするために、仲介しないタイプに限定して解説します。
仮想通貨の理想的には、全てがこの分散型取引所になるべき、という考えがあります。それが、真の非中央集権型金融で、中間搾取も管理も、顧客の本人確認も、マネーロンダリング防止や徴税も、預金封鎖も運営会社の倒産による没収もないからです。運営企業がいないので、政府も口出しすることができません。

仮想通貨の世界では、持っている資産の売買の方法として、相対取引が行われることがあります。直接誰かと対面で、売買する方法です。業者を仲介しない分、安く売買できると言う考え方もありますが、交渉次第で条件が決まるため、よほどのプロフェッショナル同士で無い限り、価格や取引方法で揉めたり、消失したり、盗まれたりと言う問題に発展しやすい問題があります。それをきちんと資産の安全をお互いに守りつつ、かつ価格も公正な市場価格で決めて、受け渡しの方法も取引所のプログラムのルール通りにやりましょうと言うのが、分散型取引所です。

今後、分散型取引所がスマートフォンで使えるようになったりすれば、世界中で、銀行を持たない人たちも参加した、少額の融資や投資などの市場(マイクロファイナンス市場)が実現していくと言われています。クララウドファンディングやソーシャルレンディングなどもそこに含まれますが、市場規模はこれまでの比ではありません。行き着く先にあるのは、管理不要でも詐欺ができず、基軸通貨に換金しない限り徴税不可能で、本人確認もする必要が無く、少額からでも世界中に送金でき決済にも使える金融社会です。

Facebook の提唱した少額決済を目的とした独自の仮想通貨 Libra が、アメリカ政府や金融機関に妨害された背景には、そういった新世界の到来に対する警戒があります。この Facebook の失敗から学び、次に何が市場に評価されるのかを見極め、今後も解説をしていきたいと思います。

今後の予定(ステーブルコイン/ステーキング/DeFi)

いかがでしたか?どうしても難しい技術用語や金融用語が出てきてしまうため、説明が難しいのが仮想通貨です。昔あるテレビ番組でコメンテーターが言った「コンピューターのよくわからない所と、お金のよくわからない所を合わせたのが、ビットコインだ」という言葉がありますは、まさに真理です。
できる限り、皆さんに理解していただけるように、これからも力を尽くしていきます。

今後の予定ですが、次のようなテーマを考えています。質問や希望などありましたら、インスタのコメントか、LINE グループでお気軽にコメントをください!

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