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本を読む_ “女”を考える


あのこは貴族 / 山内マリコ

「あるの。女同士の義理ってやつがね」

容姿や出自、その他無限にあるチェック項目、「スペック」って無機質な単語で括られて無差別に査定を受け続けるすべての持って生まれた宿命を、丸ごと軽やかに纏って生きていきたい。

普段から特段気にして(気に病んで)生活しているわけじゃないけど、読みたくなって手に取る本はなぜか女性の持つ生きづらさや不条理、自分がこのまま歳を重ねてゆけば確実に直面することになるであろう感情にフォーカスしたものが多い気がする。

そんな本に出会うたびに、実はこっそり傷付いたり肩身の狭い思いをしていたことに今更気が付いて、傷付けた相手や素知らぬ振りした自分に遅れて憤ったりする。

でも、私は自分以外のどの人間にも生まれ変わりたくはないから、ならば私はこの私のまま、もっともっと軽やかに生きる逞しさが欲しい。

この小説は、家柄によるヒエラルキーや都会/田舎、東京という街の特異性を思い切り映すけど(私はそれがフィクションやデフォルメであるかどうか判断する眼も持ち合わせていない)、自分というそのものに「住めば都」を感じられれば、それは生まれ落ちた冥利に尽きるし、彼女たちの持つ憂いだって全てなんてないことだ。

誰しもの「女性」の固定概念に存在する、自分下げマウントや陰湿さを赤裸々に落とし込んだ話なんだと自嘲しそうになったけど、最後に本当の赤裸々をやってくれたのが嬉しかった。
私の知る「女性」は美紀のように逞しくて聡明で、そして何より小粋だ。私はそんな美紀に憧れる!

『あたしたちよくやってる』『さみしくなったら名前を呼んで』『ここは退屈迎えに来て』『かわいい結婚』『パリ行ったことないの』『選んだ孤独はよい孤独』、他にもたくさん読んだけど、山内マリコさんが小説やエッセイを通して切り取る女性が好き。フェミニストとはまた少し違う、YouではなくWeとして貫く鋭さを持った女性讃歌が最高です!

#読書の秋2022

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