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殺す夢

「多くの犠牲者を出しかねない行為をした貴方を、殺害にて贖ってもらいます」

そんな夢を見た。
どちらも何かとんでもないことをして、許されない殺人鬼になった。
夢の中ではそれが正しいようだ。まるで昔の話のように。

けれども、相手は抵抗もしなかった。
何故自分はもっと早くあなたに会えなかったんだろうなと、悲しみさえ見られたけど
殺すことで終了とする問題だから、私は刃を突き立てねばならない。
概ね長短刀か短脇差ほどの長さの本物を刺した。

時間経過で死ぬだろう。
いくらあの2人が「あなたに早く会えていれば」と思っても、死にゆくのだ。
……しかしあまりに悲しそうにするので、「生まれ変わったら、今度は友人になってくださいね」と言うと、一層「ああなんで罪を犯したんだ」と悲しむ。
出来ることがないわけじゃないけど、もう刺したあとだから、どうにも出来ない。
「こんな自分と、次はやり直させてくれるのか」と涙すら見える。それに笑顔だけ返す。
生まれ変わったらあなたは別の人間になる。その時は、どうか笑いあえるように。

……までは普通のことだったのに、なんか一向に死なないので、兄弟子みたいな人に「私は刺し方や刺す場所を間違えましたか?」と聞いてみたら
苦笑いだけが返ってきた。
夢の中の私は分からなかったが
起きた私からすれば
「そこ肋骨があるから刺しにくいのでは……」が感想だった。
横に刺したし、刺さった感覚もあったけど、違うところに刺さったから、苦しみはしても死にはしなかったんじゃないかな。
だって先に刺した方いつまで生きてるのよ。

結局、2人とも死なないまま、改心だけして終わるのだろう。先に起きたからわからないけど。
張った惚れたみたいな「死ぬ事でもうあなたに会えない」と罪を悔いる涙は本物で
いちばん「死にたくない」と思ったんだろう。
「あなたにもっと早く会えていれば。」


そんな、夢を見た。

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