ラウドネスノーマライゼーションの話
ラウドネスノーマライズの話をするとしよう(CV:諏訪部順一)
っていってTwitterで書き始めたんだけど、歴史から入ってしまって無駄な情報が多くなってしまってちょっと失敗したなあと思ったのでリライト。
簡単な、本当に簡単な話から、少しずつ掘り下げていく形にしてみようかと。
ラウドネスノーマライズの誤解
まず最初にラウドネスノーマライズに対する誤解を挙げておこうかと。
・ラウドネスノーマライズされると音が悪くなる
・何かの基準に合わせないといけない
このあたりが、多く見掛ける誤解かなぁ、と。
それはある側面では間違いではないんですが、でも人間の耳で知覚できるレベルで言えば、それはどちらも誤解です。
気にしなくていいんです。
これらの誤解については今は解説しません。
このnoteを半分くらい読んだころにはきっと誤解は解けているので。
ラウドネスノーマライズって何?
それじゃあ、まずはこのラウドネスノーマライズってのが何かっていうところから。
音楽を聴いてる時、突然音のデカい曲が流れたら音量を下げますよね。
逆に、音が小さい曲の時は音量を上げますよね。
それを自動でやってくれる。ただそれだけです。
ボリュームだけ調整するので、音質の劣化はほとんどありません。ゼロではないですが、人間が知覚できるようなレベルではありません。
ボリュームだけ調整するので、音色の変化はありません。リミッターとか掛かったりしません。
ひとつ嘘をついてるんですが、こんな感じで理解しておけば充分です。
でも困ったことに、これだけだと誤解が解けない。
「じゃあ、もう過度に音圧を稼がなくていいんだね!」ってならない。
それだけ今までの、音圧は稼がねばならないという強迫観念は強かった。
それではその、ひとつの嘘についてネタバレしながら、もうすこし理解を深めていきましょうか。
ひとつの嘘:音が小さい曲の時は音量を上げる
嘘です。音量上げません。下げるだけです。
でも、ここを誤解がないように「正しく書く」と、さらなる誤解が生まれるんだって最近気付きました。
単純に、これ以上大きい音になったら下げますよっていう基準値が、結構小さい音量に設定されてるんです。
それはどれくらいかっていうと、マキシマイザーを掛けてない音よりちょっと大きい程度。
普通にマスタリングした曲はほぼ確実に音量を下げられてしまいます。
だから、過度に音圧を稼ぐ必要はないんです。
音量を上げない=0dBを超えない=デジタルクリップしない=リミッターを掛ける必要がない。なのでラウドネスノーマライズでリミッターは掛りません。「音色の変化」という意味での音質の劣化はありません。
ビットパーフェクトじゃないという意味では「劣化」はありますが、今までダイナミクスの情報を削りまくって音圧稼いできたのと比べると、無視していいレベル。
もしかすると、ラウドネスノーマライズっていう言葉自体が誤解を生みやすいのかもしれないですね。
波形編集ソフトのノーマライズみたいに、基準値まで音量を上げることはありません。あくまで下げる方向だけ。
これでひとつめの誤解は解けたかな……?
規格に合わせる必要はない
-14LUFS Integratedとか、-12LUFS ShortTermとか、そういうのどうでもいいんですよ、実は。
自分が許容できる範囲で音圧稼いでおけば、あとは再生ソフト側が勝手に調整してくれるので。
もちろん音圧を稼げばその分数値的な音量は下がるんですが、規格にぴったり合わせたものと、それより多少音圧を稼いだもので、体感音量は変わりません。
一応、差分の数dBのダイナミクスは失われるんですが、狂気のCD音圧に比べれば微々たるもの。
そもそも「自分が許容できる範囲で」音圧を稼いでいれば気づかない差なんじゃないかと。
だから、配信サービスとかの規格にカッチリ合わせる必要はないんです。
もちろん合わせてもいいんですけど、それは自己満足の世界です。
このあたりは試してみるのが一番早いです。
音圧稼いだものと、音圧あんまり稼いでないのをiPhoneに放り込んで、「音量の自動調整」をオンにしてみればわかります。
ちなみに「アルバム情報」を揃えてしまうとアルバム単位で音量調整されちゃうので、アルバム情報は空にしておいてくださいね。
それでも、音圧を稼ぎたい
止めません。どうぞ。
別に音圧稼いだからといってラウドネスノーマライズ環境で音が小さくなったりするわけでもないですし、好きなだけ音圧を稼げばよろしい。
ちなみに。
音圧を稼いだ音の方が迫力がある、だから音圧を稼ぐっていうひと。
それ、トータルコンプ掛ければ解決します。
CDの時のような、2mixにコンプ掛けた質感は、コンプ掛ければ再現できますから。
まぁ当たり前なんですけど。
ラウドネスノーマライズに対応したマスタリング
必要なことだけをすればいいんです。
必要なことだけ。
今までどんなマスタリングしてました?
EQ掛けて、コンプ掛けてましたか?最後に掛けるのはマキシマイザー?マルチバンドコンプとかも使ってました?
EQは?
そのEQで何してました?必要なら使ってください。
ピークを抑えるためにどこかの帯域を削る、みたいなことをしていたのであれば、それは多分必要ないと思います。
超低域にHPFを入れるのは、やっておいた方がいいと思います。
コンプは?
そのコンプ、何のために掛けてました?
ピークを抑えるためですか?じゃあ要らないですね。
コンプ掛けた時の質感が欲しかった?じゃあ使ってください。
マルチバンドコンプ?
……何に使うんですか?
マキシマイザーは?
私は使います。トゥルーピークで-1dBを超えないためのブリックウォールリミッターとして。
適当にラウドネスメーター見ながら、アタック感とかが損なわれない範囲で掛けていきます。
といっても常にリダクションし続けるんじゃなくて、時々掛かる程度。
他のスパイスはお好みでどうぞ。
おしまい。
色々と端折ってるのでデジタルデータ的な意味での突っ込みどころはあるんですが、試聴者にとって価値あるものかどうかはまた別の話。
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