第2話 きのホ。「きのうまではポジティブでした!」のライナーノーツのようなもの
というわけでやってまいりました。
きのホ。のアルバム「きのうまではポジティブでした!」の感想文です。
今回はもう無駄な話は書かない!
NO MORE 無駄話!
NO MORE 映画泥棒!
このくだりがもう無駄だよ。
はい。
9月5日午前0時、ついにきのホ。の初音源「きのうまではポジティブでした!」が配信された。
1曲目「emo衛門」を再生すると、レトロなシンセによる和風の単音フレーズが印象的な4つ打ちロックで、一聴して“和”がコンセプトであることがわかる。この曲はサウンドとしての斬新さはそんなに感じなかったが、ボーカルが入ってくると印象が変わる。
これはアルバム全体に言えることだが、ミックス/マスタリングにおけるボーカルに対する処理が過剰すぎず、非常に生々しく聴こえる。
メンバー各人の声の響き、歌唱を非常に重視していると感じるが、最終的な処理によって統一感を出すというのも普通のことなので、あえてそうしているところに意図を感じて面白い。
何にせよ「emo衛門」では小気味のいいリズムに乗りながら次々とメンバーがソロパートをとっていくので、いわゆる自己紹介曲的なイメージを想起するし、実際ライブの1曲目にも相応しいと感じた。
2曲目の「観月京」は公式YouTubeで確認するとお披露目映像のBGMやオーディションでの課題曲になっており、まさにきのホ。というグループの代名詞として作られた曲であることがわかる。
疾走するギターロックでメロディに非常に訴求力があり、やりすぎない和のテイスト、サビでの印象的なコーラスワークなどロックサウンドを基調にしたアイドルが昨今多い中でも際立った存在感を示してくれそうな楽曲だ。
こちらもボーカルの生々しさが作用して、Bメロやサビの終わりのハイトーンのフレーズなど非常にスリリングなサウンドになっており、デビュー前の衝動性というか荒々しさというか、ヒリついた感じがとても良いなと思った。
3曲目の「相合傘」はスカっぽいスピーディな4ビートでメジャーコード主体のかわいらしいナンバー。全体の歌メロとコード進行が凄く好きで、僕は一番気に入っている。
この曲は非常にポップだけど構成が面白くて、A→B→サビ→A→Bときたところでサビではなく大サビにいき、その後さらに別のCパートが現れる。この外し方はうまいし、大サビとCパートに登場するメロディが本当に素晴らしい。
今のところきのホ。の楽曲の中ではメジャーコードがメインの曲はこの曲だけであり、手拍子やコール(世が世なら)なども入れやすそうなのでライブで非常に映えそうだ。
4曲目「夜の庵」。ここまでいわゆるアイドルポップス的な曲が続いていたところでギアチェンジしてシティポップ的な16ビートの落ち着いたナンバーが入る。構成が本当に上手い。
オルガンといなたいギターサウンドが特徴的だが、そのサウンドに合わせてここまでハキハキと歌うタイプの歌唱がメインだったメンバーたちの歌声の新たな面を知ることができるのも良い。
少し背伸びしたようなメンバーの歌声は、歌う内にそれぞれの解釈が深まってさらに成長していく曲なのかなとも思った。
5曲目「爛漫」は音楽的にはアルバム中で一番の変化球かもしれない。歪んだギター、印象的なピアノのサウンド、淡々と刻まれるリズムがどこか浮世離れした不思議な楽曲だ。Cメロで登場するメロトロンのサウンドがまたマニア心をくすぐる。
歌詞も非常に示唆に富んだ内容で、厭世観も感じるし、希望も感じる。アルバム中最も内省的な楽曲であり、聴いていると自己との対話をしているような気分になる。
きのホ。というグループの内包するものが一番表現されているような気がする。
6曲目「きのみきのまま」はまさにエンディングにふさわしいミドルテンポのどこか懐かしさがあるメロディが彩るフォークロックソング。
「終わり良ければすべて良し」ではないが、この曲に帰結することでこのアルバムが描いてきたものがより浮き彫りになるように感じる。
この曲の後で「emo衛門」をリピートすると、「ああ、この曲はこの位置(1曲目)にしかありえないな」と思うと同時に、また新たな旅の始まりを感じられる。
そうやってアルバムを何度もリピートしていくことで螺旋のように深く世界に入り込み、その度に新しい景色が見えてくるように思う。
ここまでで約24分。ボリュームとしてはEPとかミニアルバムといった趣ではあるが、きのホ。というグループが表現したいものをまず名刺代わりとして世界に提示するには、これ以上でもこれ以下でもあり得なかったのではないかと思う。
きのホ。は今のこの揺らぎ続ける閉塞感に満ちた世界で、何か信じられるもの、希望と呼べるようなものを見出そうともがくような、そんなグループに感じられるし、それを表現できる楽曲とメンバーが揃っていると思う。
これからが本当に楽しみだ。
ね、無駄なこと書いてなかったでしょ。(主観からの断定)
つづくかも。
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