ステージにて(Y氏のこと)

まず断っておく。この記事は不謹慎な表現が含まれることになる。しかしそれでも、書いておきたいことなのだ。

本日、馴染みの古書/中古レコード店に挨拶しに行ったところ、2/4にかつての友人だったY氏が亡くなっていた、という話を聞いた。

Y氏というのは、以前ここでバンドの話をした時に書いた女子高生ドラマーの父上であり、僕の音楽仲間だった、二回りぐらい年上の気むずかしいオタクの彼だ。

Y氏は先月末、地元のライブハウスでブルースの演奏中に倒れた、という話だった。Y氏は優れたベーシストで、ルイズルイス加部をリスペクトしていた。まさに「Got My Mojo Working」を演奏していた最中、だそうだ。慌てて病院に搬送されたがそのまま帰らぬ人となった。死因はくも膜下出血だったらしい。

失礼な話だが、出来すぎだ、と思った。そして不謹慎にも、プレイヤーとしては(文字通り。になってしまうのがなんとも切ないのだが)冥利に尽きるじゃないか、なんて。

正直に言ってしまおう。僕は彼のことが少しばかり疎ましかった。ここ数年連絡を取っていなかったのもそのためだ。数カ月前に一度、ブックオフですれ違ったがその時も声をかけなかった。そして今は、そのことを後悔している。

久しぶりにきちんと話がしたかった。それは亡くなってしまったから、という話だけではない。その前から、何かきっかけを掴んで再び友人としての関係を修復したいとは思っていたのだ。

またはっきり言う。彼は大人げないところがあった。けれどそれは僕だって同じだ。いい社会人であっておかしくない年齢だった僕を、彼は叱った。当時の僕は疎ましかったけれど。

それでも楽しかった思い出が沢山ある。バンドを組んでライブをやったこともある。同じライブを観に行ったこともある(確か、オフでの出会いがそこだった、と思う)。旅行に行ったことだって。

一度、彼のコレクションを見せてもらったことがある。家の離れに建てられたプレハブには、壁一面所狭しとCDが収納されており、圧倒された。あの時目に焼き付けた光景は、オタクとしての僕の到達点だ、と今でも思っている。

ねえ、Yさん。あの時聴かせてもらったIl Balletto di Bronzoの『Ys』、僕も買いましたよ。深町純の『六喩』も久しぶりに聴いて、シビれてます。いくらピンククラウドが好きだったからって、ルイズルイスを差し置いてジョニー吉長にセッションを申し込んじゃ駄目ですよ(もう、サインとか貰いに行ってそうですけど)。久しぶりに貴方の憎まれ口が聞きたくなっても、もう叶わないのですね。貴方の居ない地元なんて、鳥坂先輩不在の『究極超人あ~る』みたいなものです。

ただ、冥福を。ブルースの悪魔に連れて行かれた一人の男を思いながら。

投げ銭してくれると小躍りしてコンビニにコーヒーを飲みに行きます。