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第1部-CROSS SYNCが考える現医療体制の課題

株式会社CROSS SYNCは、2023年2月15日付で4名が新たに取締役として就任いたしました。今回は新取締役の2名と当社の代表取締役2名に「CROSS SYNCが今思い描くこと」をテーマに対談した内容を、3部にわたってお伝えしていきます。第1部の今回は、「医療ベンチャーとしてCROSS SYNCが考える現医療体制の課題とその課題に対してCSが提供できる価値」について取り上げます。


CROSS SYNCが「いま」思い描くこと

第1部:医療ベンチャーとしてCROSS SYNCが考える現医療体制の課題
    課題に対してCROSS SYNCが提供できる価値

第2部:これから目指すCROSS SYNCの在り方
第3部:理想とする日本の医療体制


(髙木)よろしくお願いします。CROSS SYNCが「いま」思い描くことのテーマの一つ目として、医療ベンチャーのCROSS SYNCが考える現在の医療体制の課題について話して行ければと思います。まずは渡部さんお願いします。

(渡部) 髙木先生がCROSS SYNCを創業した原点の考え「急性期の医療現場で急変を未然に防ぐ」こと、「医療従事者や集中治療専門医不足を解決する」こと、このテーマを二つの視点で考えてみたいと思います。

‐医療×DXにいち早く取り組む

一つ目の視点は、デジタルが日本の医療や社会を変える大きな流れ。医療×DXで日本医療の課題を解決するということ。

CROSS SYNCが取り組んでいる AI 、遠隔ICUの技術、モニタリングの技術を使った早期発見による、より良い医療の提供、現場の負担軽減、安全と質の改善、地域の格差の是正などは、まさに今世の中が取り組み始めたこと。CROSS SYNCはそれをいち早くやっているので、非常に大きな期待があると思います。

二つ目の視点が、ベンチャーでしかやれないことをやろうということ。スタートアップだからこそできるリスクへのチャレンジ。 スピードが速いとか、あるいはOPENイノベーションとかは優秀な若い人たちを惹きつける魅力があります。そういうことに積極的に取り組み、社会課題を解決していくということを続けていきたいな思います。

(春日) 市場背景を少し引いた観点から俯瞰して見た時に、CROSS SYNCは日本と世界の両方にポテンシャルを持っているスタートアップだと思います。

日本と世界では抱えている課題にそれぞれ特色がある。日本は、なによりも高齢化社会に入っていて、高齢の患者も増えている。対して生産年齢人口は減っているので、保険の支え手も減る。金銭的にも人的にも医療全体に対して今まで高い負荷がかかっていたが、さらに高い負荷がかかるようになってきました。

‐医療資源の適正配分が待ったなしの課題

結果として、 医療資源の適正配分が待ったなしの課題になっているというのが、日本の大きな市場背景としてあると思います。医療資源の適正配分というのは、例えばデジタル化を通じた病床管理の効率化、あるいはその資源配分の最適化ももちろんあると思いますが、 CROSS SYNCが取り組んでいる急性期の医療に着目してみれば、例えば高度救急病床が地域によって非常に偏って存在している。東京は過剰に存在しているという意見もある一方で、地方では明らかに高度集中病床が不足している状況があります。そういった地方間の偏りをどうしていくか、医療資源、とくに急性期における医療資源の偏在の問題をどうしていくかということは、すごく大きなテーマの一つになってくるだろうなと感じています。

一方、世界に眼を転じて見てみると、米国は顕著ですが、医療訴訟に端を発した医療費の高騰が大きな課題になっている。予後の改善をいかに進めていくか、あるいは高度救急治療をきちんとデータ化していって、データドリブンにしていくことで、訴訟に対して、適正に向き合えるような環境を作る 、こういったところが米国でも大きなテーマになっているという風に感じています。そういったところに対してCROSS SYNCが取り組みを進めていけると良いなという風に思います。

(左)春日氏 (右)渡部氏                                 

‐集中治療専門医の少なさ

(中西) ICUの中でもまだ患者さんの急変の見逃しがあったり、防ぎ得る危険を防げていなかったりする。現在の医療体制になにか課題があるとすると、集中治療専門医が少ないというところが挙げられると思っています。

その中で、来年から医師の働き方改革が施行される。労働時間の適正化、夜間の労働時間の制限が出てくると、さらに状況が厳しくなると思います。

デジタル化でその手助けをしたい。手術室では、手術室の中の記録がしっかりと残されていない、手術室からICUに渡されたときにそのデータが引き継がれていない、記録が分断されているといった課題を聞いたことがあります。ICUの中で管理するときに、きちんとデータで渡されて、この患者がどういう経過を辿ったのかがわかると医療の質が上がっていくのではないかと思っています。そこにCROSS SYNCが提供できる価値があるのではないかと思います。

‐電子化しても、20年前と今の医療のレベルはそんなに変わっていない

(髙木) 私の研修医の時代と今の医療のレベルってそんなに変わっていないような気がしています。今でも20年前と同じような急変、インシデントが起きていて、事故の原因を探ってみるとうっかりしてたとか確認を怠っていたとかですね。情報が連携できていなかったって、あまり以前と大きく変わってない。変わった点は、カルテが紙から電子化をしたことですが、それでもまだ日本全体での普及率は40何パーセントでそれほど多くはないんです。

実は、電子カルテになったからといって事故が減っているわけではなくて。情報量も多くなりすぎていたりと、整備が追いつかないままで医療現場はすごく疲弊をしている。なので、患者さんに接する時間が足りない。もう少し効率的にデータを活用することはまだまだこれからの課題かなと思います。

‐日本は病院間ですらデータが分断されている

ICUと手術室のデータが分断されている話もありましたが、病院間でも情報は分断されています。海外は州ごとに情報がつながっていてデータがしっかりやり取りされています。日本はまだまだ患者さんの情報が非常にアナログで、今の医療体制の問題です。

‐日本は世界で一番初めに高齢化が来る

あともう一つ、日本は世界で一番初めに高齢化が来るのですが、そこに対して医療のリソースが足りない部分は20年前からずっと変わってないなと思います。医療の提供体制が足りていない課題をデータの利活用・保管で解決につなげていかなければと思っています。

-CROSS SYNCが提供できる価値について

(中西) 情報の整理、それを正確に記録、共有することが大切といった話が出ていましたが、今開発している重症患者管理システムはそこを目指していると思っています。

患者さんの急変の見逃しをなくし、見守りの体制をサポートするためリアルタイムに病態把握をすること、医療従事者の負担を減らすということ、医療従事者間の情報共有を助けるということ、そういうところに我々が提供するべき価値があるとおもっております。

CROSS SYNCが提供できる価値に関するイメージ

‐人が最もお金を払うのは、命に対して

(春日) 投資家として様々なメディカルあるいはヘルスケアのスタートアップを拝見していて、今後世の中がどういうスタートアップあるいはどういう技術・ソリューションに対してお金を払いたがるかということを色々と見てきました。

人々が最もお金を払いたがることは、命です。その次が健康、そして3番目が効率化。この順番です。CROSS SYNCはこの全てに対して価値を提供しているという風に思う。人々がお金を払うということは、どれだけ切実にそれを必要としているかということを反映していると思います。なので、命、健康 そして効率化という 3つの順番を意識しながら価値をより高めていけると素晴らしい事業になっていくのではないかと感じています 。

‐高機能化し、色々なデバイスと繋がれるようになり、知の蓄積をしていくこと

(渡部) 春日さんのコメントでCROSS SYNCが提供する価値のWhatについて素晴らしい知見をいただいたんですけど、Howという観点で言うと、三つの軸があるかなと思います。

一つ目は、重症患者管理システムの見守り・予測機能がどんどん進化、高機能化をして、より良い医療を提供すること。

二つ目がシステム周辺の色々なデバイスと繋がっていくこと。患者さんの心拍数や血圧などのバイタルサインをモニタリングする生体情報モニター、あるいは色々な遠隔システムとつながってく、広がっていくことが価値を生み出す軸なんだと思います。

三つ目が、データなどの知の蓄積をしていくこと。長いタイムレンジの中でデータを蓄えて分析していくことで新しい価値、医学の知見であったり、より良い医療提供をしていく。

‐人ができないことを、AIがする

(髙木) 私からも三つ、考えていることがあって、まず重症患者管理システムは人にはできないことができる。多くの急変事例って、人が見れていたら防げたよね、という部分がある。AI、機械、デジタルだからこそ、例えば24時間365日見守り続けることができることというのが一つのポイントで、重症患者管理システムで医療現場を変えていける理由の一つかなと思います。

もう一つはデータの利活用をするメリットを積極的に発信していくこと。今まではデータの利活用って一次利用の診療に使っているところと、研究で使う二次利用が多かった。現場がその場でデータを活用することで本当は防げた死亡が改善されるということを発信し、空気を作っていくっていうのはCROSS SYNCが切り開いていく部分かなと思っています。

‐人と人のハブになる

最後に、他企業との連携を通して、病院間や病院外の人との連携を進めていこうとしているので、人と人との間に入るハブになること。医療って人と人がうまく繋がって情報が繋がることでスムーズに進んでいくところがあるので、CROSS SYNCがいないと、重症患者管理システムがないと病院間連携、人との連携ってうまくいかないよねっていう、コアなところに入っていけるといいなと思います。


次回の第2部では「これから目指すCROSS SYNCの在り方」について取り上げます。

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