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#42 財布の紐がゆるむとき/くろさわかな

【往復書簡 #42 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈私のかわい子ちゃんのために〉
水曜日:泖〈菊池風磨くん系全般〉
金曜日:くろさわかな〈自分への投資という甘美な言葉〉

自分への投資という甘美な言葉

「夫は成長教に入信している」という漫画をご存知でしょうか。

自分の成長しか見えていない上にそれすらも空回りしちゃっている「夫」さん…。こういう旦那さん持ったらしんどいだろうなと奥さんに同情しつつ、実際わたしも成長教に片足突っ込んでいるような面があるので、気をつけなきゃなと思う次第です。

最近はだいぶ抜け出せましたが、なにかを買うとき、「これを買うことで自分はどのくらい変われる(成長できる)か」「これは消費か浪費か投資か」というジャッジをしていました。コストに対してその成長率が小さいようであれば、なんとなく気に入ったものでも買わないという判断をすることもしばしば。逆もまた然り。そう、この「一見成長できそうなもの」に対して、財布の紐がゆるくなりがちなのです。

代表的なものは「本」です。「本」って、読めば身につく→成長する!っていう気がしちゃって、いくら使っても浪費にはならないだろうと考えてしまいます。さすがに今、自己啓発本の類は疲れて買わなくなりましたが、なんとなくよさそうな本(理解したらきっとすごく成長できるんじゃないかと思った本)は興味がなくても買ってしまいがちです。結局そもそもの興味がないので読まない、頑張って読んでも理解できなくて自分のものにならず忘れてしまう。どう考えても浪費なんですけど、なぜか、それを買っただけで偉い→投資だった、と自分でちょっと思ってるところがあってだいぶ厄介です。

いい加減、好きな本を「浪費」だと認識した上で買いたい。それのなにが悪いんだ、と。だってドラえもんの原画集買うときですら「藤子・F・不二雄先生のリアルなペンタッチを感じられたら、わたしの中の眠っていたなにかが湧き上がってなにかしらの成長ができるかもしれないし!」というふわっとした言い訳をして買ってますからね。これは浪費ではない、投資だ! そういう勢いで6,900円の購入ボタンを押してますからね。実際読んでみての感想は「やっぱり藤子・F・不二雄先生は偉大だな」です。十分わかってたことです。浪費がすぎる。

最近買おうかなあと思っているのは新しいiPadなんですが、これも別に今のiPadが故障したとかではないので、100%欲しいだけです。だけど「スペックよくなってるし、打ち合わせに持っていったら仕事が捗りそうだから投資だよな!」という言い訳が聞こえています。打ち合わせなんて1ヶ月に1回あるかどうかなのですが、iPadを新しくしたらいろいろと活躍できるから打ち合わせが増えるという説もあります。だからきっと買うべきでしょう。新しいApple PencilとMagic Keyboard、それにAppleCareをつけて、20万くらい――🤑🤑🤑


そんなふうに制御ができなくなってきたなと思ったとき、ちょっと立ち止まらせてくれるのがジェーン・スーさんのこの言葉。

わたしの場合、パワーストーンを手首にたくさんつける方向にはいかなかったけど、根本の「努力をせずに、特別な私になりたい」というところは同じですねきっと……。ああ、業務スーパーのベルギーワッフル食べて寝るだけで成長できたらいいのになあ。成長するのは体重ばかりなのです。

あ、業務スーパーも財布の紐がゆるゆるになる場所ですよね。おすすめはベルギーワッフルと牛乳パックにみっちり入ったコーヒーゼリーです。


くろさわかな

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