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#60 踏み出せない/くろさわかな

【往復書簡 #59 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈“韻踏合組合東北支部”的なものもいいかもしれない〉
水曜日:泖〈10年目の正直〉
金曜日:くろさわかな〈ショートヘアにしてみたいけど〉

ショートヘアにしてみたいけど

髪をバッサリ切れません。
もうかれこれ10年以上、高い位置で結べるくらいのロングヘアを維持しています。

年齢を重ね、顔も髪質も変わってきたというのに、私の髪は10年前のまま。
顔周りの髪の毛が伸びてみっともなくなったなと思ったら、渋々美容院に行き、なんとなーく揃えてもらったり、なんとなーく色をいれてもらったりしています。

元々、あの「髪を切られる」という行為が、あまり好きじゃないのです。
大きな鏡の前でてるてる坊主みたいになって、パーソナルスペースによく知らない美容師さんを招き入れ、無防備に髪をザクザク切られるという行為が。当たり障りのない会話を適当な頻度で行って、相手の様子を伺いながら適度に雑誌に切り替え、とはいえそちらに集中しすぎず時々こちらから話題を振ってみたりという高度なコミュニケーションテクニックが必要な、あのキラキラした場所が。

マッサージとかエステとかはあまり抵抗ないので、「他人の手で見た目をがらりと変えられてしまう」のが怖いのかもしれません。美容院に行ったあと何日かは、よくも悪くも自分が自分じゃないみたいな気分になります。魂と髪型を馴染ませなければいけません。切った直後、美容師さんにセットしてもらった髪型はまったく馴染んでいないので、家に帰って洗髪した後、髪型をできる範囲でいじって魂に寄せたりしています。逆もまた然りで、鏡を何度もみては「これが今のわたし」だと魂を髪型に寄せていったり。

そんな面倒な性格なので、バッサリ切るなんておいそれとできることではありません。
本当は、そろそろショートカットにしたい。前髪も無くしてスッキリと……。ついでに髪色もちょっと派手めな色を入れて……。
でもそれをやったら、1ヶ月くらいはふわふわした自分でいることになりそうです。ふわふわした結果、いまの自分は外見だけでなく内側も変わってしまうんだよなと思うと、なかなか踏み出せません。

ロングヘアが好きだという旦那の言葉も足元に絡みついています。
第一子を妊娠した後、大変になるからとショートカットにしたときにどうしようもなく似合わなかった嫌な思い出も杭のように突き刺さっています。

ああ、どうすれば一歩踏み出せるかなあ。
よい踏み出し方法があったらぜひ教えてください。

くろさわかな

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