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#61 嫌いな言葉/くろさわかな

【往復書簡 #60 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈思考を止めたくない〉
水曜日:泖〈信用の基準〉
金曜日:くろさわかな〈対話放棄ワード〉

対話放棄ワード

「相手の思考を強制的に停止・あるいは混乱を招こうとする言葉」「対話を放棄するような言葉」、わたしも嫌だなと感じています。「けしからん」とか「で?」という言葉はまさにそれで、ただただ強い言葉を使って相手の思考を上から押さえつけているように感じます。それを対話中にされちゃったら、こっちだってシャットダウンですよね。

「対話放棄ワード」はいろいろありますが、嫌いな言葉を一つあげるとしたら「嫌なら見なきゃいい」です。あまり嫌な言葉だと思われないが故に、余計モヤモヤするのです。

テレビやYouTubeで羽目を外しすぎたり迂闊なことを発信してしまった有名人が炎上(炎上という言葉もなんだかなと思うところもあるんですけど)すると、擁護する側の意見として必ずといっていいほど出てくるワード。「そういう番組なんだから、嫌なら見るな」「強制じゃないんだから見たい人だけ見ればいいのに」「なんで見るの?」。

いやいやいや、そもそもそれ、ブーメランじゃない? 
嫌なら見るなって言ってしまうなら、そちらもそうしたらいいのでは。的外れな意見だな、気分の悪くなる批判だなって思うなら、無視したらいいじゃないですか。それができないのは、やっぱり「嫌なら見なきゃいい」じゃなくて「自分たちがいい気分で盛り上がってるところに水を差すな」なんですよね。

わたしも、楽しんでいるときに余計なことを言われるのは面白くないし、攻撃されたと身構えてしまいます。
だけどたいていの人はむやみに人を攻撃しようとしているわけじゃなく、自分や周りが傷つくのを守ろうとしているだけなのだと思います。つまりそれは、発信側が誰かを傷つけている(その恐れがある)からで。

その傷を「嫌なら見るな」「嫌なら聞くな」「つまらないことを言うな」で黙らせるのではなく、そしてまた安易に「じゃあ止めます止めれば文句ないでしょう」で片付けるのでもなく、丁寧に考えられる人でありたいです。その結果として、そのまま続ける・表現を変える・止めるの選択をしていきたい。見た人全員が満足する表現は無理だし、100%誰も傷つけないことも同じように無理でしょう。でも、やりたいことをやる上で、その努力は怠らないようにしたい。そして万が一傷ついてしまったという人がいたとき、その人との対話を放棄するようなこともしたくありません。

だからもしわたしが「嫌なら見なきゃいいのに」なんて言ってしまった日には、おふたりが叱りつけてください。西城秀樹のブーメラン・ストリートを歌ってくれてもいいです。よろしくお願いします。

くろさわかな

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