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[機材レビュー]EVH Wolfgang Special

エディヴァンヘイレンのシグネチャーモデルは過去にKramer、Musicman、Peaveyなどから発売されてきたが、2007年以降はFenderが設立したEVHという専用ブランドで製造・販売が行われている。販売されているのはストラト/ディンキーシェイプの5150/StripedシリーズとMusicman EVH(Axis)/Peavey Wolfgangの流れを汲むWolfgangシリーズの2種類で、2020年にヴァンヘイレンが逝去した後も毎年新しいギターが販売されている。

Musicman EVH(Axis) / Peavey Wolfgangに関しては、自分の場合B'zの松本さんのイメージが強い。1990年代後半にメインギターとして使用されていて、1995年のBUZZツアーの様子を収めた“BUZZ!!” THE MOVIEでもオープニングから登場するピンクのMusicmanを確認できる。1999年にGibsonからシグネチャーモデルが発売されて以降しばらくMusicmanの使用頻度が減り、紛失騒動などもあったが2020年の配信限定ライブB'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820の1日目では、一曲目からMusicmanを使用しておりこれも印象的だった。(ライブのコンセプト的にYamahaのMGがどこかで出てくるのではないかと思っていたが、そちらは出てこなかった)

現在EVHから販売されているWolfgangにはUSA / Special / Standardの3つのシリーズが存在する。USAはその名の通りアメリカで製造されているが、Special / Standardについては現在は主にメキシコで製造されている。2010年代にはSpecialが一時日本で製造されてたこともあったらしい。自分が所有する2021年製のWolfgang Specialもヘッド裏にはFenderのロゴとMade In Mexicoの文字が書かれている。

Wolfgang StandardとSpecialの大きな違いはトップの形状にある。Standardがフラットトップであるのに対して、Specialはアーチドトップになっている。このQM, Baked Maple Fingerboardというエディションでは、ネックに所謂ローステッドメイプルが使われている。

このギターのネックは素晴らしいと思う。弾きやすい上に、非常に安定していてどのポジションでもほとんどビビりが発生しない。

柾目のローステッドメイプルには、カーボングラファイトによる補強が行われている。ネックエンドまで伸びたトラスロッドの影響もあってか、このネックはかなり硬くて強く安定している。T's GuitarsのDST-DX22もそうだが、この組み合わせは最強なのではないかと思う。

スケールはレギュラー(64.77mm)で、12インチ-16インチのコンパウンドラジアス指板になっている。ジョイント部分はヒールレス加工がされていてハイポジションの演奏性が高い。ネックの塗装はサテン仕上げでサラサラしており、演奏性については文句のつけようがない仕上がりだと思う。ちなみにこのギターは独特の木の匂いがするのだが、おそらくその理由はこのネックだと思う。

電装系はダイレクトマウントされた2ハム + 3WAYトグルスイッチ + 1ボリューム + 1トーンで、かなりシンプルだ。コイルタップなどの機能も特にない。この辺りはヴァンヘイレンらしい。ボリュームノブは低摩擦で回りやすく、トーンノブは高摩擦で回りにくくなっている。最初それを知らず品質が悪いのかと思ってしまったが、ウェブサイトにも記載されているように意図的にそうなっていて仕様だった。

フロイドローズブリッジのマウント部分はザグリ加工がされていてアームアップもできるようになっている。引っ張ると瞬時にドロップDにチューニングを変更できるD-Tunaも標準で搭載されている。ただ、今までこれを使う場面は現れていない。

サウンドはタイトで少しブライトで、リアは特にバイト感があってザクザク弾くのが楽しい。若干ノイズは乗りやすいように感じる。中央が盛り上がったアーチドトップとピックアップセレクターの位置から、構えた時の印象はレスポールに近いのだが、ボディがバスウッドであることとピックアップがダイレクトマウントされていること、フロイドローズ特有の金属的な響きなどからか、音の印象はレスポールとは結構異なる。

しかし、シグネチャーモデルを以ってしてもなかなか本人と同じようなサウンドは出てこないものなのだと改めて実感する。

ちなみにこのギターを購入してから一年が経つ。ネックの造りが素晴らしく歪ませたサウンドも気持ちがよく弾く分には非常に楽しいギターだが、映像に残すとどうしてもヴァンヘイレン色が強くなってしまうので、ヴァンヘイレンの曲を弾く以外ではなんとなく使いにくいという気持ちはある。

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