見出し画像

AmpliTubeでの基本的な音の作り方(ウォームなクリーントーン編)

ハイゲイン編に引き続き、AmpliTubeを使ったクリーントーンの音作りについても一度ここで紹介したい。個人的にはハイゲインサウンドよりもクリーントーンの方がAmpliTubeを使った音作りには苦労してきたが、最近になってようやくコツを掴めるようになってきた感覚がある。クリーントーンといっても色々なトーンがあるが、今回は主にジャズなどに使う真空管アンプのようなウォームでメロウなクリーントーンの作り方について紹介したい。

1: オーディオインターフェイスの入力レベルとAmpliTubeのINPUTを調整する

まず一番大事なのがここで、ギターからの信号が0dBを超えることがないように入力レベルを調整する。聴覚上割れていないように聞こえたとしても、強く弾いた時にインジケーターが赤く光ったりレベルメーターが0dBを超えてしまうことがないように十分にレベルを下げておく。一方でレベルが低すぎるとS/N比が悪くなりその後の音作りがやりにくくなるため、低くなり過ぎないように注意する。

また、必要に応じてAmpliTubeの左下にあるINPUTを調整する。レベルが低すぎてインジケーターの右側が全然点灯しないようであればレベルを上げ、逆に右端まで到達してしまっているようであれば少しレベルを下げて余裕を作っておく。

2: アンプモデルを選ぶ

ハイゲイン同様、サウンドの方向性はほとんどここで決まる。

AmpliTubeには色々なクリーン用のアンプモデルが用意されている。基本的に好みに合わせて選べば良いのだが、自分のおすすめは定番であるFender系の下記のモデルだ。

1. Fender '57 Deluxe

コントロールがトーンとボリュームしかないためわかりやすく、最初に扱うにはおすすめ。

2. Fender '65 Twin Reverb

定番モデル。自分の場合Reverbは後でDAW側でかけるので、ここでは0にしてしまうことが多い。

3. American Tube Clean 2

こちらはDeluxe Reverbがベースとなっているモデル。無料版でも使用することができる。

3: ゲインとトーンについての考え方

アンプのモデルを選んだら、ここからゲインとトーンを調整していくことになるわけだが、クリーントーンにおいてはドライブサウンド以上にこのゲインとトーンの調整具合が最終的な仕上がりに与える影響が大きいため、一度考え方を整理しておきたい。

AmpliTubeにおけるアンプの歪み具合はゲインのノブでコントロールできるものではあるが、実際には「アンプへの入力信号の大きさ × ゲインつまみの設定」で音の歪み具合は決まる。さらにいうと、アンプへの入力信号の大きさは「ギター本体のピックアップからの信号の大きさ × ギター本体のボリューム設定 × オーディオインターフェイスの入力ゲイン設定 × AmpliTubeの入力レベル(INPUT)設定」で決まる。そして、これらの各ポイントにおいてレベルが高すぎると音が歪む原因になってしまう。最終的なサウンドがドライブサウンドの場合、これらのどこかの地点で音が歪んでいたとしてもそれが目立つことはないが、クリーントーンの場合はどこかの地点で音が歪んでしまうとその先でどれだけ頑張ってクリーンな音作りをしようとしても最終的なサウンドは歪んで濁ったものになってしまう。従って、クリーントーンを作る場合は各ポイントで信号レベルが過大になりすぎないように注意して録音したい。

オーディオインターフェイスの入力レベルについては、大抵インジケーターがついているものなのでそこをしっかりみて調整していれば音がクリップして歪んでしまうことはないだろう。意外と違いが出るのがギター本体のボリュームだ。ボリュームを絞ると副作用でニュアンスの出方や音質自体も若干変化し、また歪むかどうかはピックアップのパワーや弦との距離によって変化するため一概にはなんとも言えないが、自分の場合はクリーントーンを取るときはギター本体のボリュームも6-7程度まで下げて演奏・録音することが多い。

トーンに関しては、「ギター本体側のトーンの設定 × AmpliTube側での音作り(アンプのイコライザーや、場合によっては前段・後段に挟むイコライザーなど)」の組み合わせによって決まる。「ギター側のトーンを絞ることによって得られるサウンドの変化」と「AmpliTube側でのトーンやイコライザーを使って得られるサウンドの変化」は同等ではないため、ギター側のトーンを絞った方が目的の音に近づく場合はギター側のトーンを絞り、アンプ側のトーンをいじった方が目的の音に近づく場合はアンプ側のトーンいじるというような音の作り方をしていくことになる。最終的なサウンドはそれらの組み合わせによって決定されるため、「どういう順番でどこから探っていけば良いのか」慣れるまでなかなか難しいという問題がある。

そういう点で、最初はアンプ側のコントロールがシンプルなFender '57 Deluxeモデルをお薦めしたい。これを使う場合、調整可能な箇所がギター側のトーンとアンプ側のトーンの二つのノブに絞られるので、調整で迷子になりにくくなる。自分の場合はギター本体のTONEである程度音作りをしてから、アンプ側のTONEで微調整をするという作り方をしている。その際、ギター側のTONEを絞りすぎないように注意している。ギター側のTONEを絞った状態で録音をしてしまうと、ミックスの段階で「ギターの音が埋もれすぎる、抜けが悪すぎる」といった際にできることが限られてくるからだ。AmpliTube上でのトーンは、ミックスで問題が見つかれば開放していくことができるが、ギター本体側のトーンの絞り具合は一度録音してしまった後ではどうすることもできない。

4: アンプのゲインやイコライザー、トーンを調整する

ゲインとトーンの考え方について整理をしたところで、実際に調整をしていく。

さて、先の項で「いかに不要に歪ませないか」について説いたばかりだが、ゲインの扱いはとても難しい。クリーントーンというからには「歪まない」範囲で大きめに設定すればよさそうだが、ウォームでハリがあるクリーントーンをよく聞くと「よく聞くと少しだけ歪んでいる」ことが珍しくない。とはいえその絶妙なラインを見つけるのはなかなか難易度が高いので、ひとまずアンプのゲインは「歪まないギリギリの大きさ」を目指して設定する。そこから少し物足りなさを感じるようになったら、少しだけゲインを上げてみるとよい。

イコライザーもしくはトーンについては、アンプモデルによって制御できるものが異なるが、自分がウォームなクリーントーンを目指す際に意識しているポイントは「耳に痛くない控えめな高音域」と「薄っぺらくはならないが邪魔にもならない適度な低音域」の二つ。このうち、前者に関しては上の項に書いた通りアンプ側の設定で調整しても、ギター側のTONEノブで調整してもどちらでもOKだが、ここではアンプ側での調整方法について記す。

トーンノブしかついていないタイプのアンプでは、耳への痛さがなくなり心地良くなるところまでトーンを絞る。絞れば絞るほど痛さは軽減されるが同時にモコモコして輪郭が失われていき、他のパートと合わせた時に存在感が薄れミックスがやりにくくなるので、「耳に痛くない」と感じるあたりで止めておくのが良い。

Treble / Middle / Bassを独立して調整できるタイプでは、まず耳に痛くならなくなるまでTrebleを絞る。Bassは一旦ゼロまで絞ってみてから、「薄っぺらさ」を感じなくなるまで上げていく。Bassをあげすぎると無駄に圧が高まったりミックスで邪魔になったりするので、上げすぎないように注意する。TrebleとBassの調整だけでは何か物足りないような時はMiddleを上げたり下げたりしてみる。

4: エフェクターどうする?

クリーントーンの音作りにおいては、一旦エフェクターの使用は最小限にするのが良いのではないかと思う。

クリーントーンにおけるノイズゲートの使用はとても悩ましい問題だ。結論から言うと、自分の場合はクリーントーンの場合はノイズゲートを基本的には使用していない。どうしても音の減衰部分が不自然になってしまうためだ。

ハイゲインの時同様、ギターによっては低音のブーミーさが気になる時がある。そういう時はアンプの前にイコライザーを挟み低音成分を少しカットする。カットしすぎるとスカスカの薄っぺらい音になってしまうので、カットしすぎないように注意する。それ以外の目的では基本的に使用しない。感覚的な話になってしまうが、クリーントーンでイコライザーを使って音作りをすると、どうしても「作られた」感が出てしまうためだ。こういっては元も子もないのだが、クリーントーンの音作りに関しては「ギター自体の音の特性を活かす」ように作っていくというのが基本で、ギターからの音に物足りなさが感じられるような場合、それを音作りで補うというのは基本的に難しいものなのではないかと考えている。

コンプレッサーは、演奏性を左右すると同時にクリーントーンにおいては音質変化も大きいエフェクターだ。AmpliTubeの中にも数種類のコンプが用意されている。BOSS CP-1Xの投稿でも書いた通り、コンプレッサーは便利なエフェクターだが適切な設定を見つけ出すのが難しい。AmpliTubeに搭載されているペダルタイプのコンプレッサーには残念ながらレベルインジケーターがついていないので、コンプのかかり具合については耳を頼りに設定しなければいけない。その中で、Fender Compressorはかかり具合を4段階から選ぶだけというかなりシンプルな操作性なので、とっつきやすさという点ではおすすめ。レベルを上げていくと音色が少しずつ変化し歪んだりし始めるので、歪まないレベルを選んで使えば良い。もちろん、弾きやすさを追求するためにはもう少し細かく設定できるCompressorやDcompを使っても良いが、音が歪まないようにLEVELのつまみを適正な位置に調整することが重要だ。

5: ラックエフェクターで最終調整する

AmpliTubeを使った音作りでサウンドを「プロっぽい」感じにする強力なツールがラックエフェクターで、それはクリーントーンについてもあてはまる。

自分の場合はLA-2AをモデリングしたWhite 2Aというコンプレッサーを、メーターが-3〜-5あたりにおさまるようにPEAK REDUCTIONを調整してかけることが多い。このコンプを通すことで、粗が多少整えられて一段と「聴きやすい」音になる。

Fenderの'57 DeluxeのようにTONEツマミしかないアンプでは、前段で低音をカットしたとしても最終的な出音でまだ低音が出過ぎていると感じられる時がある。そういう時はラックエフェクターのイコライザーで多少削ってやれば良い。Pultec® EQP-1AのモデリングであるVintage EQ1-Aでは、細かい音域の調整はできないが、名機と言われた機材のモデリングというだけあっていくつかあるノブをいじるだけで良い感じにサウンドが変化する。低音をカットしたい場合は、上のATTEN(アッテネーター)ノブを回してカットしていけば良い。右側のノブでカットする周波数帯を調整できるが、デフォルトの30のまま使っても十分良い感じにカットしてくれる。

6: DAW側で空間系をかける

クリーントーンにおいては、ディレイとリバーブが非常に重要な役割を持ってくるが、ここに関してはミックス時の勝手の良さやステレオで空間の広がりを作りたいということもあり自分の場合はAmpliTubeの内蔵エフェクターは使わずDAW側でかけるようにしている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?