ポケットに入る小型マルチが欲しい - Mooer Prime P2
かつてKORGからPANDORAという超小型のマルチエフェクターが発売されていた。ちょうどスマホくらいのサイズで、うろ覚えだがベルトにつけて使用している写真が広告で使われていたような気がする。
最近セッションに参加させてもらう中で、PANDORAのようなポケットに入るエフェクターが欲しいと考える機会が増えた。人数が多いセッションではステージ上が混み合いペダルを置くスペースを見つけるのが難しいこともあるし、入れ替え時にエフェクターの配線に時間をかけると他の参加者に迷惑をかけてしまう。ただやはりアンプ直ではなく、エフェクターを使いたい場面は時々ある。そんな時に、足元ではなくポケットに入るエフェクターがあったら、入れ替えで手間を取らず、空間的な自由度もあって良さそうだなということを考えていた。
調べてみると、残念ながらPANDORAは2013年に出たペダル型のデバイスを最後に、既に販売も開発も終了してしまったようだ。そこで他のメーカーの製品も探してみたが、なかなか同じようなコンセプトの製品は見つからない。同じようなサイズ、機能の製品としてはBOSSのPocket GTもあるがこちらはヘッドホン出力での使用がメインとなっていて、エフェクターとしては使いにくい。ZoomのMS-50G+はコンパクトなマルチエフェクターという点では求めているものだが、ポケットに入れるには少し大きすぎる。ようやく見つかったのがMooerのPrime P2というデバイスだった。しかもタイミングよく国内では今月頭に販売が開始されたばかり。
2023年11月現在の実売価格は35,000円。他に良さそうな製品が見つからなそうだったので思い切って購入してみることにした。
iPhone程度のサイズで、若干厚みはあるがポケットには余裕で入るサイズだ。重さも大体スマホ程度。入出力の端子が上面に揃えられているので、ケーブルを繋いだ状態でもスムーズにポケットに入れることができる。
側面には電源ボタン、USB端子(Type C)、MIDI端子(3.5mm)がある。充電はUSB経由で行う。
本体の液晶はタッチパネルになっていて、音色の切り替えのほかに音量調整やチューナーの起動などの操作ができるが、ここで音作りをすることはできない。
音作りは本体とスマホをBluetoothで接続した上で、アプリを使って行う。エフェクター、アンプ、キャビネットは自由に組み換え、並び替えることができて、音作りの幅は広い。最近のデジタルエフェクターはどれもそうだが、音質は十分良く不満点は見つからない。アンプ・キャビネットをONにすると、ヘッドホンやミキサーに繋いでアンプシミュレーター的な使い方ができるし、OFFにしてアンプに繋げばエフェクター的な使い方はできる。アプリでの音作りは画面の小ささ故に少し煩わしい部分はあるが、使いにくいということはない。本体上で音色のエディットやエフェクトのON/OFFの切り替えはできないので、サウンドの切り替えたいときはあらかじめプリセットを音色分用意してそれを切り替えて使うというのが良いのだろう。
エフェクター以外の機能としては、ドラムマシーン・チューナー・ルーパーの機能が用意されている。チューナーの機能は本体側からでも呼び出して使うことができるが、それ以外の機能は基本的にはアプリ側もしくは別売のフットスイッチでの操作になる。また、BluetoothでPCやスマホから音楽を再生させてギターの音とミックスさせることもできるようになっている。この辺りの機能はライブではあまり使わないだろうが、練習用には便利そうではある。
まだ購入してからセッションで実践投入する機会がないのだが、二つほど実物を触っていてわかった懸念事項がある。
一つがバイパス機能がないこと。バイパス用のプリセットを用意してそれに切り替えれば実質的にバイパスは実現できるが、エフェクター的な使い方をする上では即座にバイパスできる機能が欲しかった。
もう一つが操作性の問題。本体側での操作は基本小さいタッチパネルのみとなるため、演奏中に音色を切り替えたり何かを操作するというのが難しい。別売のフットスイッチを使って欲しいということなのかもしれないが、せめてプリセットの切り替え、さらに言えばバイパス機能だけは物理ボタンでステージ上でも操作できるようにして欲しかった。
実物を触ってみルト、やはりこのデバイスも「ポケットに入るマルチエフェクター」というよりはPocket GTのように「コンパクトなギタープロセッサー」という色が強いのだなというのを感じた。実際にステージで使うとまた印象が変わるかもしれないので、プリセットを作りつつ次のセッションを楽しみにしておこうと思う。
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