循環障害 P181

・循環障害:心臓を出た血液が動脈から毛細血管を通り,静脈あるいはリンパ系を経て再び心臓に戻る経路に生じた障害の総称

・局所の循環障害:虚血と梗塞,うっ血,浮腫,出血,血液凝固など

・全身の循環障害:ショックや高血圧など

A 虚血と梗塞
1 病態
・虚血
■虚血:その組織の需要に見合うだけの動脈血が供給されない状態
■主な原因:動脈硬化,血管内に生じた血栓・塞栓,外部からの血管の圧迫,血管の損傷などによって生じた動脈の狭窄・閉塞
■脈血流の減少により,酸素や栄養の組織への供給が不足し,代謝が障害され,細胞障害へとつながる
■血流の減少により赤みが減り蒼白となり,温度は低下し,強い痛みを生じる
■虚血が続くと急性の虚血では組織は壊死(梗塞)に陥る
・梗塞
■梗塞:高度な虚血によって細胞傷害が進み,局所が壊死に陥ること
■動脈には,枝分かれした分枝間に吻合があり,一部の血流が途絶しても他の経路から補われ,壊死まで陥ることは少ない
■ほかの動脈との交通のない動脈が閉塞すると,血流が途切れ壊死に至る
心臓,脳,腎臓,脾臓などで生じやすい
■脳と心臓は組織の代謝が活発で酸素需要が高いため,動脈の完全閉塞に至らなくても梗塞を生じることがある
2 代表的な疾患

・心臓:不安定狭心症,急性心筋梗塞,心臓突然死の原因となる

・脳:内頸動脈や椎骨・脳底動脈, それらの末梢で生じた脳血管の狭窄・閉塞によって一過性脳虚血発作や脳梗塞が生じる

・腸管
■上腸間膜動 脈などの狭窄・閉塞によって腸管,腸間膜が壊死に陥る
■緊急性が高い腹部救急疾患として重要

・腎動脈:腎梗塞

・脾動脈:脾臓梗塞

・四肢の急性動脈閉塞でも壊死に陥ることがある

B うっ血
1 病態

・うっ血:静脈や毛細血管に血液がうっ滞した状態

・滞留した血液により静脈は拡張する

・局所的なうっ血:血栓や塞栓,外部からの圧排などによる静脈の狭窄や閉塞が原因となる

・全身性のうっ血:心臓のポンプ機能が損なわれ心臓につながる静脈全体の流れが滞ることなどで生じる

・うっ血した部位は暗赤色で浮腫を伴うことが多く,その部分の体積が増加

・充血
■細動脈が拡張した状態
■鮮紅色で温かい
■流入する動脈血液量の増加や局所の動脈の拡張などで生じる
2 代表的な疾患
・局所的なうっ血
■下肢静脈血栓による静脈閉塞,妊娠子宮による骨盤内静脈の圧迫など
■肝硬変によって門脈にうっ血が生じることもある
これは胃食道静脈瘤の形成やその破裂などの原因となる
・全身性のうっ血
■とくに右心系のポンプ機能の低下によるうっ血性心不全で生じる
■肺血栓塞栓症,心タンポナーデなどもその原因となる
■頸静脈に怒張が生じ,時間経過とともに浮腫,肝腫大,腹水なども出現
・肺うっ血
■左心系のポンプ機能の低下により生じる
■肺静脈系の血液量が増大
■肺静脈系の血液量が増大することで,肺水腫による呼吸困難,起坐呼吸,心臓喘息,胸水の貯留などの原因となる
C 浮腫

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