放射線障害 P824

A 放射線の概要
1 放射線とは

・放射線
■空間や物質内を伝搬するエネルギー
■通常は,高エネルギーを伝搬する粒子の流れ,または電磁波のうち,とくに通過経路にある物質をイオン化させる能力をもつものを放射線と呼ぶ

・放射能:放射線を照射する性質・能力のこと

2 種類と透過力

種類
・アルファ(α)線:正の電荷をもつ
・ベータ(β)線:負の電荷を帯びた粒子線
・ガンマ(γ)線:電磁波(光子)で,その波長は紫外線よりもさらに短い
・X線:電子ビームの照射によって人為的に発生させたもの
・中性子線 ■中性子線は高速で飛翔する中性子,■電荷のない粒子線

透過力は放射線の種類によって異なる

出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/


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3 単位と線量

・ベクレル(Bq):放射性物質の量

・グレイ(Gy):物質が吸収した放射線エネルギーの累積量

・シーベルト(Sv):人体が吸収した放射線の線量当量

4 被ばくの分類

分類
・外部被ばく:放射性物質やX線発生装置のように放射線を発するものが体外にあり,それらから発せられる放射線が身体を透過するような被ばく

・内部被ばく:放射性物質が吸入や嚥下などにより体内に取り込まれ,組織や臓器に沈着してその周辺の組織や臓器を照射するような被ばく

被ばくの形式と汚染の種類


出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/

5 汚染の種類

・体表面汚染
■放射性物質が体表面や衣服に付着した状態
■放射線による外部被ばくや二次汚染の原因となる

・創傷汚染:体表面汚染のうち,創傷部の汚染。創傷部から放射性物質が体内に吸収されると,内部被ばくの原因ともなる

B 人体への影響

放射線が人体に与える影響

①影響を受ける細胞,②障害発生の時期,③線量当量と障害発生の関係

放射線量別の人体への影響

出典:へるす出版 救急救命士標準テキスト 改訂第10版
https://www.herusu-shuppan.co.jp/997-2/

1 影響を受ける細胞による分類

身体的影響

・放射線による影響(障害)が体細胞に及ぶ場合
・皮膚の紅斑・水疱形成,消化管出血,悪性腫瘍など
・もっとも重大なのは遺伝情報を担うDNAの損傷
・DNAの損傷が軽微であれば,その自己修復機能によって自然修復されるが,一定以上の損傷が起こると,細胞分裂が不可能になる
■または異常なDNAによって細胞の癌化や機能異常が起こる

遺伝的影響

・放射線によってDNAが突然変異をきたし,その生殖細胞の分裂によってできた配偶子(精子または卵子)が受精すると,被ばくによる障害が子孫に現れる
2 障害発生の時期による分類

急性障害

・被ばく後数時間~数週間にかけて発生
・身体的影響のうち,皮膚や消化管の障害

晩発障害

・被ばく後,長期間を経て発現
・白内障や悪性腫瘍

急性放射線症候群

・全身が高線量(1Gy以上)のγ(X)線や中性子線に曝露されると,数時間~数週間後にさまざまな臓器障害が出現
・典型的な急性障害
■悪心や嘔吐,全身倦怠ではじまり,骨髄の造血幹細胞の障害により血球数が減少
・5Gy以上の吸収線量
■腸管の上皮細胞の脱落による下痢や下血
■皮膚障害や中枢神経障害などが出現
・被ばくによる急性期死亡のほとんどは急性放射線症候群による
3 吸収腺量と障害発生の関係

確定的影響

・吸収線量が,ある一定量(閾値)を超えた場合にのみ発生する人体への影響(障害)
・白内障や皮膚障害,胎児への影響,不妊,急性放射線症候群など
・吸収線量が閾値に達しない場合,確定的影響による障害は発生しない

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