別冊・医学のあゆみ p70-75を読んで

DCPは臨床研修開始後に初めて聞いた用語であり、構成要素と利用方法、目的について理解できていなかった。専攻医となってからはⅠの期間に●●、〇以降は出来高になるよ。という個々のデータを入力する側の目線では見ていたが、データを利用・システムを構築する側の目線で見たことはなかった。
今回は、知り得た内容をまとめる。

・DPCについて
DPCは diagnosis(診断)procedure(処置)combinationの略である。
2003年に本邦で開発された患者分類手法の事。これを利用した診療報酬支払制度DCP/PDPS(Pre-Diem Payment System)は本邦の大部分の急性期病院にて適応されている。

・DPCは3つの要素に分けられる
①DPC診断群分類
 CCP(Comorbidity Complication Procedure)マトリックス
②1日当たりの定額支払い
③DPCデータ

・DPC/PDPSの支払いの特徴
 1入院ごとに14桁のDPCコードの割り付け、疾患群分類点数表に基づいた
 1日当たりの包括支払い点数付け。
 病院ごとに支払額が異なる。この差を決めるのが医療機関別係数である。
 ・医療機関係数
 基礎係数:病院の種類により設定
 機能評価係数Ⅰ:出来高の点数を反映
 機能評価係数Ⅱ:病院機能を反映 DPCデータ分析で算出される
 激変緩和係数:診療報酬改定時の激変の緩和目的、改定年度1年目のみ
        適応

①DPC診断群分類
 CCP(Comorbidity Complication Procedure)マトリックス
傷病名と副傷病、手術・処置の組み合わせにより、樹形図のように細分化されていくため、分類項目を細かく設定すると分類数が増える。
新たな手技手術が増えると、下位の分岐も増えるため関連する傷病名分類に
の支払い分類にも影響が出て更なる細分化を要する。
このため、細分化された支払い分類のうち類似するものを支払い上同等とみなし1つのグループにまとめることで、最終的な支払い分類を減らす取り組みである。支払い分類を減らしまとめるための評価を進めることで、傷病に対する手術・処置の医療経済学的評価が精密となる。現在、脳梗塞・肺炎・糖尿病にCCPマトリックスが導入されている。

③DPCデータ
 DPCデータは6つの要素で構成される。患者情報、臨床経過、レセプトが反映されている。実臨床で継続的に蓄積されるデータである。
患者個々の臨床像を反映するマイクロデータの集合でありRWDとして、診療とアウトカムの関連という視点から分析に利用される。
また、医療機関ごとの診療実態を反映し、マクロデータとして医療提供体制の検討に利用される。加えて、疾患別の症例経過を反映するデータとして利用される。
DPCデータを用いた各種分析により、DPC/PDPSにおけるDPC診断群分類点数の見直しや医療機関係数の設定が行われる。

・DPCデータの分析方法
①ケースミックス分析
医療機関ごとの患者のプロフィールを加味し分析する手法である。
医療機関ごとの在院日数を比較する場合、受け入れ患者の重症度や検査数によって左右される。これを、効率性指数、複雑性指数として評価する。
結果をDPC/PDPSの疾患分類点数や医療機関係数に反映する。
②プロセス・アウトカム分析
医療の質を評価する方法である。医療機関に集まる症歴の軽症・重症患者の割合で、手術成績・合併症率も異なることから公平な評価が難しい。そこで、ガイドラインの尊守率を評価する分析が期待されている。
③地域医療分析
地域ごとの医療提供体制を評価する。地域の疾患割合、各医療機関の位置付けを評価する。これにより地域の医療資源需要を分析、病床機能の分化と医療提供体制の整備が期待される。
④臨床疫学研究
医学研究への利用である。調査項目の追記はできないが、実臨床での詳細な医療データが記録されており、データ収集の手間がかからない。
DPCデータを用いた研究がすでに報告されている。
 
今後の課題
運用体制や医学研究における二次利用のルール設定は確立していない。
また、医療機関入院中のデータはあるも、退院後のデータはなく患者個々の長期的データは得られない。
DCPデータ運用体制の確立が望まれている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?