別冊・医学のあゆみ p12-16を読んで

 読んで浮かんだのは、日常臨床での漫然とした姿勢が問題を長期化させる。ということ。

  医療費増額と医療システムの維持について
私が4年生のとき国民総医療費は40兆円と習ったが、2020年では42兆円と増額している。内訳を最も占めるのは保険料であることには変わりないも、公費の負担割合は増加の一途をたどっている。
まず問題となっているのはこのまま公費の負担割合が増加していくと、
国民の医療費は賄えるのか、今の保険医療システムで良いのかという問いである。

 ①医療費の出どころ、②保険医療システムの2つの点から問題点が述べられ、改善策が提案されている。
 ①医療費の出どころ
医療費の負担割合は、保険料>公費>患者負担、このランキングは変わっていないが、この20年で刻々と公費の割合が増えている。
国民総医療費が増えるだけでなく、公費の割合が増える。GDPに対する医療費の割合も増えている。ここで、日本の財源が潤沢であれば公費で国民医療費の歳出が増加することに何ら問題ない。
しかし、現在の公費負担含む歳出は公債金(借金)によって賄われている。
公債金が増えることは財政破綻のリスクとなる。
 では、この解決策として医療費を減らせばいいのか、減らし方はどうすればいいのか。そこで、医療費が増える理由が挙げられている。
医療費が上がる原因トップ3
・医療技術の進歩
 a供給者と患者の情報の非対称性
 bモラルハザード
・所得増加
 bモラルハザード
・高齢化
 c保険料負担総額の減少
が1-3位を占めた。昨今のニュースでは出生率の低下や高齢化、人口減少がクローズアップされ、高齢化がもっともな原因であるかのように感じるが、
まあ3位にとどまる。しかし、この高齢化は医療費のもっともを占める保険料の合計に関わる問題である。
 医療費の増額の原因を占めるからという理由で、医療技術の進歩が悪なのか、そんなことは全くない。国民の所得が増えてはいけないのか、それはないだろう。進歩した医療技術の適正利用が大事なのである。
ここで医療技術が適正に利用できない原因として下記2点があげられる。
 a供給者と患者の情報の非対称性:導入した医療技術の稼働率向上のため  
  医療者側の判断で過剰提供する。患者は不要と判断すれば拒否できるが  
  しない、そこには医療者と患者の情報格差がある。
 bモラルハザード:医療保険によって患者負担額が減り、患者が過剰に医
  療サービスを利用する。
aの対策として、進歩した医療技術にかかる費用のみではなく、学術的成果をエビデンスに基づき費用対効果を評価し適正に利用する必要があるとしている。
bの対策案の裏付けとして、筆者らは70歳時点での負担額が1割であった2011年9月~2014年3月までのレセプトデータをもとに自己負担引き下げによる所得別の外来医療費の増減を評価した。高所得層では外来医療費が7.7%増加、低所得層では増加は認めなかった。高所得層のみでの増加から、医学的に必要な医療は所得に関わらず提供できいているが、効果の薄い医療サービスへの利用が増えたためとしている。そこから、bへの対策として所得別の自己負担設定を提唱している。
医療費増額をもたらすa-cの問題点を是正する②医療システムの実施と①医療費の出どころの調整が、人々の健康維持と下支えするシステムの財源の維持に必要であると述べられている。

 ここで気になるのは、効果の高い・薄い医療サービスとはなにかということである。その臨床データを集め、医学的に検証し、効果について結論を出していくのが我々の役目である。そのためには、疾患ごとに今までに構築された臨床研究に基づいた医療の提供を行い、提供する中で効果そのもの・費用対効果について感じた疑問を前向きまたは後ろ向きに調査していくべきと考える。
 簡単に言うならば、臨床の中で漫然と流れ作業医療をしないことが大事なのであろう。かのアレルギー分野にて、成果を出している先生の言葉(ママは覚えられずうる覚え)、何百人と私の外来に来るが、その中に新たな発見は隠れている。と。
 漫然とやらず、目的意識と疑問を持ち、解決策を臨床応用できることがどんな立場の人間に対しても役立てるのだ。

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