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パンチ&ジュディ

今日もパンチは歌って踊って楽しそうだ
おや
向こうから誰か来るぞ
地主の大河内だ
地主の大河内は大金持ちで大いばりのくせに
大ドケチで困った人を助けてやったことなど一度もない
今日食うものもない人に金を与えていると思ったら
あとで利子をたんまり取っていたという話まである
ふてぇやろうだ
「おい」
「なんだ? パンチか」
「なんだとはなんだ。金をよこせ」
「なんでお前に金をやらなきゃならん。さっさと小屋に帰って寝てろ」
「金は人を狂わすな」
「なんだ急に哲学者みたいなことを。そうだな。だからこそ私のような修身のいきとどいたものが管理すべきなのだ。お前のような愚か者には渡すことはできん」
パンチは足下においていた棍棒でポカリと大河内をやっつけました。
「ほら、金をだすか」
ポカリ。
「だすか」
ポカリ。
「ださないか。どっちだ」
またポカリ。
大河内は地面にねそべったままぐったりとして動かない。
それでパンチはふところをまさぐって金貨のたっぷりつまった袋をぬきとった。
「金は冷たい。寝ているときに腹にあたると、体を冷やしてよくないからな。人助けだ」
パンチはあくびをひとつ。
「おおい! ジュディ!」
大きな声をだすと、すぐそばの小屋から眠たそうな顔をしたジュディがのそのそ出てきた。
「なんだい。あんた。おおきな声だして」
「ほれ、見ろ。金だ」
「あら! どうしたんだい、結構な額じゃないの」
「大河内の旦那がびんぼうな俺たちを哀れんでめぐんでくだすったんだ」
「そうなの。やっぱり旦那と呼ばれるお方は違うわね」
「そうだな。ちょっと酒買ってこい」
「そうだね。今日はうんと腕をふるってやろうね」
ジュディは血まみれの財布をうけとって、うれしそうに小走りで市場へと向かう。
パンチはその女房の背中をうれしそうに見つめて、それからまた歌って踊りながら小屋に入っていった。

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