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岸辺と反復

終わりのない岸辺には
老人のような干からびた木
半分を波にひたして
むきだしの白化した根は
どこか剽げた踊りのしぐさにも見えた

しきりに後ろを気にしながら
じりじりと背が燃え
こうしているわけにもいかないのに
じりじりと背が燃え
干からびた木と
反古にされた戦闘の一時停止案と
無限に広がる可能性とを
こどものビー玉遊びのように
わたしはぼんやり眺めていた
じりじりと背が燃え

なにをしてよいかもわからず
とりあえずわたしは砂浜に穴を掘って
掘るうちにだんだんとやみつきになってきて
とりつかれたみたいに掘って
それから
そっと
穴のうちのひとつに
わたしは自分自身のペニスをおさめた

じっと動かずにいると
モノ足らなくなってきて
どうも違うぞと
わたしは飛び起き
パンツもはかないまま
穴をどんどん広げていった
背中がじりじりと焼けて
そうしているうちにも
どんどん皮膚が泡立ち
水ぶくれができていく感じがした

ああ
あのシャツをおいておけばよかったな
無責任な忘却の色をしたシャツ
立派なにんげんになりなさい

浜辺でもがくわたしに
天井からふりそそぐ声

ふと見上げると
そこは二重格天井
大樹様がいらっしゃるまで
まだ時間はあるぞ
rippa な n インゲ に なり na shai
まだだ、まだ
まだ時間はあるぞ
諦めちゃいけない

自分の墓穴を掘っているとも知らぬままに

打ちおろされた首切り刀のひたむきと、
血を拭う処刑人の疲労と、
白浜にバッと散った私の血と、
まだ時間はあるぞと
うれしげに叫ぶわたしの首とを
老人のような木が眺めている
あれからもう百年にはなろうか
終わりのない岸辺で

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