あれから二年 #7
とある日の夕飯後。
夫が外でタバコを吸っている時に、義父からこっそり打ち明けられたことがある。
この家は、お前たちが買った家だってのはわかってるんだけど、時々、昔住んでた家に似ていて、そこにお前たちが居候してきた気持ちになることがあるんだ。
スーパーに買い物に行ってお店をでたときも、ここはどこだ?
俺の住んでる町じゃない。そうやって、しばらく考えることがある。
しばらくしてから、
あ、そうだ。もうあの家から引っ越して同居したんだ。
って思うんだよ。
・・・そう言われて、これはおそらく斑ボケだろうな~って直感した。
そうですよ、お義父さんが前に住んでた家は、みんなで荷物まとめて掃除して引っ越ししたでしょう。
お義父さんが帰ってくる家はここです。でも、この家は夫と私が苦労して買った家です。
そこにお義父さんが一緒に住む、って言って、ここに来たんですよ。
この家は、屋根の瓦がはがれたままだと、いずれ雨漏りして腐ってしまい、住めなくなります。
住宅ローンもまだまだ残った状態で住めなくなったら、最悪、一家離散になるかもしれません。だから私は、いろんな業者さんと話し合いをして、書類を作成したりしてるんですよ。
・・・ちょっと、一家離散はオーバーだったかな・・・。
とも思いつつ、義父に少し考えてもらうようにと念をこめて話してみた。
夜、寝る前に。
夫に、さっきの出来事を話して、やはり認知症が気になるから、ケアマネさんに相談しようと思う。と話した。
「え、いいよ。恥ずかしい!そんなこと言わなくたっていいよ。」
もしこのまま病院に行かないで認知症が進んでしまったら。
徘徊していなくなってしまったら、大騒ぎになるよ。
早めに対処したほうがいいと思うんだ。
「いや、言わないでいいって。」
しばらく口論のようになっていた。
もう我慢できないんだよ!あなたは自分の父親のことも、家の直しの手続きのことも全部丸投げだし、仕事もめちゃくちゃ忙しいし
だれかに助けてもらいたいんだよ!あなたが自分の父親のこと手に負えないのに、私だって手に負えない!だれが面倒みるって言って引き取ったのよ??
もう泣きながら爆発したような感じで、かなり頭が痛かったのは覚えてる。
「じゃあいいよ、言えば。」
そんなやりとりで、その日は眠りについたけど、眠れなかった。
翌日。
仕事の合間にケアマネさんに連絡をとって話してみた。
この家が自分の家だと思っているから、主人と義父がぎくしゃくしている。
斑ボケのような言動をしていること。家の直しに入った業者さんを私の友達だと思っていて、俺の家にお前の友達をいれるな、と怒鳴られた。
義父がそのうち行方不明になるんじゃないかって心配になるときがある。
ケアマネさんは、「あーそんなことがあったんですね。
普段の生活はどうですか?っておとうさんに聞いても、なにも話してくれなかったんですよ。私も気になっていて。
環境が変わったから、まだ慣れてないのかな。って思って、様子をみてたんですよ。
お嫁さん、すごく心配ですよね。・・・でも、きっと大丈夫って信じましょう。
病院は、あんまり行きたがらない人もいるから、本人が自分の言動が変かもって気にしだしたら病院に連れていく、でもいいと思います。
今は、家の直しのことに集中していいかもしれません。少し様子をみましょう。また、困ったことがあったら言ってください。」
すごく親身に聞いてくださり、胸のつかえが取れた。
ああ、よかった。
ほっと安心して、その日はぐっすり眠った。
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