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映画配給会社の仕事⑥~今だから明かせる。こんなはずじゃなかった!

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次に上映用素材が届いたら、日本語字幕の制作に入ります。 
作品ごとに言語、作品のカラーにあわせ字幕翻訳者さんにご依頼。素材をお渡しして一か月ほどで、確認のためのシミュレーション作業に入っていき、調整をして最終の字幕版の完成。そして関係者と翻訳者さんが立ち会う初号試写となります。
今だから明かせますが、今回配信パックに入っている『イタリアは呼んでいる』の字幕では胃が痛くなるほど悩まされました。

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二人の中年男がミニクーパーに乗ってイタリアは北から南までを旅するお話。ショービジネス界にいる二人ゆえ、道中は映画俳優の物まね合戦。
マーロン・ブランド、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、マイケル・ケイン、クリスチャン・ベールなどなど、よく特徴をつかんでいて、見ているだけで大笑いです。その上イタリアの有名ホテルに星付きレストランを巡って旅する二人に同行している気分になれるのですからそれは楽しくて、イタリア好きの私としては外せない作品でした。

この時の字幕はY.Iさんにご依頼。Iさんはメジャースタジオの感動大作から、ギャグネタ満載の映画まで言葉のセンスがピカイチです。また落語好きなだけにコメディをお任せしたら右に出る人はいないといってもいいくらい。
しかし、その I さんが固まってしまうくらいに、二人の会話の情報量が膨大だったのです!!
私はシミュレーションの段階になって、なんと二人が話していることが半分もわかっていなかったと驚愕しました物まねする映画の元ネタはもとより、業界ネタやら意味不明なジョークのてんこ盛り。物まねしながらそんなこと話していたなんて。。。内容がマニアック過ぎて、字幕ですべてを表現できるのかという問題にぶち当りました。

「イタリアは呼んでいる」sub8

なんという難物を買い付けしてしまったのだろう。。。こんなはずじゃなかった。またも悶々とする日々です。しかし、やはりプロ中のプロ、Iさんは二転三転するこちらの要望にも関わらず見事な字幕を付けてくださいました。
この悶々とした日々があったからこそ、元ネタを調べまくり、それが映画の宣伝で大変有効な材料となったのです。例えば『ダークナイト ライジング』、クリスチャン・ベールとマイケル・ケインの一騎打ち!ああ、きりがないのでこの他はぜひ映画でお楽しみ下さいませ。

イタリア

そして、2015年の5月1日に公開、bunkamura ル・シネマを封切り館に記録的な大ヒットとなりました。災い転じて福となす。まさにこのことであります。  
では、次回は邦題についてのお話です。   By EW


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