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深成岩系バンドの1曲をご紹介

出会ってしまいました。
無限リピート確定の曲。

**I’m sweet on you(BABY I LOVE YOU)-Cody・Lee(李) **

静かに流れ出すアルペジオ、そこに一矢を放つようにギターの轟音が鳴り…

最寄り駅には桜が咲いた
サインポール錆びた土曜の理髪店
BABY 風に吹かれて
古本屋二階に干してる布団
塀の上で眠るトラ猫のジョン
BABY 風をあつめて

描かれているのは「僕」の生活の風景、匂い、色、音。"トラ猫のジョン"と、固有名詞まで出しちゃうことで、決して私達が知り得ることはない、けれども確かにそこに存在する「僕」の生活がありありと感じられます。

一見、いつもの何の変哲も無い日常を切り取っているように思えるかもしれません。しかし、ただ静かな序章ではなく、ギターの歪んだ一旋律を響かせてからこの歌詞の冒頭に入ることで、その浮いた音が少しの違和感をもたらし、何かこれからの変化を予期させるのです。

そしてBメロ、

君に会いに行く
君に会いに行くのさ

女性ボーカルと掛け合うように歌われ、歌声が切り替わる度に「僕」が想う「君」の姿が浮かび上がります。一人で歌っているはずなのに、二人で時を重ねたように、二人で歌っているような錯覚を「僕」は起こしているように感じました。
ちなみに、女性ボーカルは尾崎リノという普段はソロで弾き語りされてる方が担当しています。心地よく胸に染み入く声です。

いよいよサビ、

屋根を越え雲を越え流れるBEATが
聞こえた
だから「Good morning yeah,I'm sweet on you.」ダージリン急行 ふたりだけの

つづいてAメロ、Bメロ挟んで2回目のサビ、

山を越え海を越え流れるBEATが
聞こえた
だから「Good morning yeah,I'm sweet on you.」ダージリン急行 ふたりだけの

屋根を、雲を、山を、そして海を越えていく。「僕」の足元、その周辺から始まった歌が、どんどん高く、広くなっていきます。

そして最後、

待ち侘びた春の色 僕らには少し早かった
だから今日で最後
君がもしも来世でホッキョクグマでも
逢いに行くから
待ってておくれよ BABY I LOVE YOU

…あぁ、別れの歌だったんだ、と私たちはやっとここで気づきます。
大人になりきれてなかった僕らは、一緒に春の色を見ることは叶わなかった。でも、成長してまた「僕」は「君」に逢いに行くから…

そして序章と通じるギターが轟き、フィナーレを迎えます。でも最後の最後、拍子抜けするほどの軽い音がちゃんちゃん、と鳴って終わります。これは、このお別れが二人にとって暗いものではなく、これからそれぞれ前を向いて歩いていこう、大人になっていこうね、というメッセージのように思えました。

以上つらつら書いてきましたが、あくまで自己流の解釈です。参考にしていただいても、全く無視していただいても結構ですが、1曲の中に1アルバム通して聴いた位の満腹感は保証します。ぜひ聴いてみてください。

今回は、一つの曲をピックアップしてご紹介しましたが、他のどの曲も良いです。

「シティボーイズ・オン・ザ・ラン」というアルバム内に収録されている、drizzleという曲では、きのこ帝国のオマージュがあったり、他の曲も色んなアーティストの影響が散りばめられていて、それでいてCody•Lee(李)の音楽になっています。深成岩をルーペで見たときを思い出してください。鉱物の結晶がぎっちり隙間なく詰まっている、あの感じです。勝手に、深成岩系バンドとお呼びさせていただきます。

さらに、drizzleの伏線回収がI’m sweet on you(BABY I LOVE YOU)でなされたり等、工夫が凝らされているのにも注目です。

8月にバンドメンバーが抜けたり、苦しい時期なのかもしれませんが、陰ながら応援しています。

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