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ラグビー:トライネーションズカップ Day6(ラスト)

※サムネ画像はワラビーズのボールを購入して近所の河川敷で撮りました。

Buenas tardes.
11月14日にアルゼンチンとワラビーズの対抗戦がシドニーのバンクウェストスタジアムで行われました。結果は16-16と引き分けになりました。ワラビーズにとっては今年3回目の引き分けになりました。

↑ハイライトはこちら。

今回もSANZARのスタッツページを参考にしました。

アルゼンチンは鋭いディフェンスでワラビーズの攻撃を凌いだ。ワラビーズはポゼッションの高さを活かしきれなかった。

まずはスターディングメンバーについて書きます。
ワラビーズはメンバーを2人入れ替えてきました。変更箇所は以下の通りです。

3 タニエラ・トゥポウ⇒アラン・アラアアトア
10 リース・ホッジ⇒ジェームズ・オコナー
15 トム・バンクス⇒リース・ホッジ

11/21の試合でやや規律を欠いたタニエラ・トゥポウをリザーブに置き、アラン・アラアアトアを先発させました。これについては大当たりしました。前半のアルゼンチンの動きを見たタニエラ・トゥポウは後半冷静なタックルを決めてラインを上げることができていました。
また、膝の痛みから復活した司令塔ジェームズ・オコナーが復帰したことにより、リース・ホッジがフルバックに移動しました。

一方で差別的投稿に揺れたロスプーマズは先発メンバーを9人入れ替え、総力戦の構えを見せました。また、パブロ・マテーラが差別的投稿の渦中の人物となったため、先発メンバーから除外されたため、キャプテンを12番のデラフエンテが代行する形になりました。
試合終了後のインタビューは9番のフェリペが対応しました。

変更内容は以下の通りです。

1 マイコ・ビバズ⇒ナウエル・テタス・チャパロ
3 サンティアゴ・メドラーノ⇒フランシスコ・ゴメス・コディラ
4 ギド・ペティ⇒マティアス・アレマーノ
5 ルーカス・パウロス⇒マルコス・クレメール
6 パブロ・マテーラ⇒サンティアゴ・グロンドーナ
8 ファクンド・イサ⇒ロドリゴ・ブルーニ
11 サンティアゴ・コルデーロ⇒エミリアーノ・ボッフェリ
13 フアン・クルス・マリア⇒マティアス・オランド
14 ラミロ・モヤノ⇒ウティスタ・デルギィ
15 エミリアーノ・ボッフェリ⇒サンティアゴ・カレラス

結果から言うと、マテーラの穴を感じさせないディフェンスとデルギーの疾走でワラビーズと引き分けに持ち込めたのは大きかったと思います。
また、ドミンゴ・ミオッティがサンチェスの代役を見事に果たしたこともロスプーマズにとっては大きな収穫だったと思います。

前回のAU戦との比較

前回との変化は以下のようになります。
要約すると:
ロスプーマズはBK陣の平均ゲインメーターが7.44m/回とバックス陣が躍動した。
ワラビーズはFW陣の特にフッカー・フロップが攻撃面でも守備面でも貢献したがバックス陣のタックル成功率が55%と低く、これがロスプーマズのデルギーのトライにつながった。

◆パスとディフェンス

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※読み方
Pass from No.9 rate on carry : 全体のキャリーのうち、スクラムハーフから受けたボールの割合
Number of passes on 1 carry : 1回のキャリー当たりで何回パスしたか。少ないほどパスせず自分でボールを持ってぶつかりに行く傾向があると仮定
FW tackle rate : 全体のタックルのうち、フォワード(No.1~8)のタックル割合
BK tackle rate : 全体のタックルのうち、バックス(No.9~15)のタックル割合

●パスについての傾向はオーストラリアの方で顕著でした。
全体のパスのうち、スクラムハーフからのパスが78%⇒63%と減少しました。
●フォワード陣のタックルの割合がアルゼンチン・オーストラリア共に高くなりました。それだけに残りの25%ほどのバックス陣のタックルの動きが重要になったと思われる。

バックス陣の攻防戦に関してはアルゼンチンの方に軍配が上がりました。
アルゼンチンのラッシュアップディフェンスが効果的だったということだと思います。その最たる例がクレメールでした。

◆アタック

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※読み方
Average gain metre 1 carry : 1回のキャリーでどれだけ前に進んだか
Breaking rate (クリーンブレイク+ディフェンス突破数)/キャリー数 : 1回のキャリーでどれだけディフェンスを突破できるか・相手がいない状態で走れるかの割合。1を超えているとその人にボールを持たせると必ず1回はディフェンスを突破されるということなのでかなり攻撃力の高い選手(もしくはディフェンスが甘いか)と仮定できる。
FW carry rate : 全体のキャリー数に対するFW陣のキャリーの割合。Attack3ではFWの中でさらに細かく割合を見ています。

●ロスプーマズのバックス陣の平均ゲインメーターが伸びている・Breaking rateが大幅に伸びている。(ポゼッションは低かったのでそもそも試行回数が多くなかったことも影響している)
●逆にワラビーズは平均ゲインメーターがかなり低くなっている。(⇒ポゼッションが高いにもかかわらずトライに繋げられなかった)

要因としてはアルゼンチンがラッシュアップディフェンスの構えを取ったことが挙げられます。オールブラックス(モウンガ・バレット)と比較して短距離のキックを用いた攻撃方法に乏しかったのが響いたかもしれません。
また、パスダミーをワラビーズはほとんど用いませんでした。結果としてジョーダン・ペタイアが餌食にされました。
この試合に限って言えばタニエラ・トゥポウが一番ロスプーマズのディフェンスを見切ることができていました。(ゴールライン手前のアタックで一回フェイントをかけた事でラインを上げられた。直後のファインガアァが攻撃で少し慌てたためトライには繋がらず)

また、アルゼンチンの配置転換により、ボールキャリー比率に若干変化が出ています。特に、攻撃にも防御にも積極的な脅威の運動量を誇る7番のクレメールが5番に移動したことで、No.4-5のキャリー率が増えています。

アタックとディフェンスの関係

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アルゼンチンのディフェンスとAU・NZの攻撃の相関性について見てみると、アルゼンチンのFW陣のタックル回数・比率がやや低い11/21,11/28の試合ではAU・NZ側のバックス陣の平均ゲインメーターが大きく伸びています。11/14,12/5についてはその逆の性向を見せています。

ここから、ロスプーマズの強固なディフェンスを崩すにはフォワード陣のタックル機会を如何に無効化するかがテーマになると思います。その方策はいくつかありますが、最も分かりやすいものとして、スクラム・ラインアウト回数を増やす事が挙げられます。

アルゼンチンのフォワード陣の攻撃と大金星の関係

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ロスプーマズの攻撃について、一番特異だったのは1戦目のボールキャリー率の高さでした。62%・・・5回に3回はフォワード陣がボールを持って突進してくるという形でした。結果的にベストメンバーで臨んだオールブラックスに対して25-15と圧倒しました。しかし、2戦目以降は50%程にとどまっています。また、2戦目以降はワラビーズと引き分け、オールブラックス相手に0-38と敗れています。
南半球対抗戦のような同じチームを相手に連戦する形式の場合連勝は厳しくなりますが、ワールドカップ予選ではピークをどこに持っていくかも重要になってきます。そういう意味でも2023W杯ではイングランドや南アフリカをピンポイントで破ってのプール戦1位突破は十分にあり得るでしょう。ただし、決勝トーナメントを勝ち上がるにはここでいう2-4戦目のフォワード陣に依存しないためのバックス陣の強化・セットプレーのレベルアップが必要であり今後のテーマになると思います。

◆セットプレー

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セットプレーについて見てみます。
特筆すべき点として、ワラビーズのスクラムチャンスが多かったですが、バックス陣のゲインメーターがあまり伸びていない試合の中ではスクラムを活かすのは難しい状況でした。

ロスプーマズのストーブリーグ

12月7日時点のアルゼンチン代表のスコッドと所属チームを見てみます。

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45人中17人が2020年前半までスーパーラグビーに参戦していたハグアレスのメンバーであり、解散後の所属先が未定(or国内リーグのチームに合流か?)であることが分かりました。
残りの選手はプレミアシップ・TOP14・スーパーラグビー(現状、フォースに5名)に所属しています。日本のトップリーグに所属している選手はいません。

日本のトップリーグに所属しない理由は地球の裏側であること・アルゼンチンの国語がスペイン語であり、日本のラグビーチームにスペイン語の通訳の用意が必要になってくる。という障壁が想定されます。

今後の交渉次第でまた変動はあるかもしれませんが、Mayco Vivas選手、Rodrigo Bruni選手、Bautista Delguy選手など良い選手もいるのでトップリーグのどこかのチームが獲得することでロスプーマズのフィジカルを体感する機会も作り出せるのではと思います。(逆にアルゼンチン側の対日本代表の研究が相当進む可能性も十分あります、こちらのリスクを大きく見る場合トップリーグのチームが取るメリットは薄れます)

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