ラグビー:トライネーションズカップ Day4

Buenas tardes.
11月21日にアルゼンチンとオーストラリアの対抗戦がニューカッスルのマクドナルド・ジョーンズ・スタジアムで行われました。結果はアルゼンチンがオーストラリアに追いつき15-15と引き分けました。

今回もSANZARのスタッツページを参考にしました。

アルゼンチンはフィジカル面で不利な中ペナルティーゴールで着実に点数を積み重ねた。ワラビーズはゴール手前でのプレーの詰めが甘かった。

まずはスターディングメンバーについて書きます。ワラビーズはジェームス・スリッパ―の怪我の影響もあってフォワード陣を中心にメンバーをまた組み替えてきました。変更点は以下の通りです。

1 ジェームス・スリッパ―⇒スコット・シオ
3 アラン・アラアアトア⇒タニエラ・トゥポウ
6 ラックラン・スウィントン⇒ニッド・ハニンガン

タニエラ・トゥポウは前回のオールブラックス戦で活躍したことにより、先発に選ばれました。また、ラックラン・スウィントンはレッドカードにより4週間程度出場停止を受けており、ニッド・ハニンガンが先発になりました。怪我での離脱が多い中LOとFLの台所事情がかなり苦しい状況です。

アルゼンチン代表(以降、ロスプーマズと書きます)は先発メンバーの入れ替えは1名にとどまりました。スクラムハーフの選手が足の怪我により交替しました。(前日では変更前の表記になっています。)

9 トマス・クベジ⇒ゴンサロ・ベルタノウ

オールブラックス戦で歴史的勝利を挙げたメンバーをそのままに勢いに乗ってワラビーズにも勝つという意思が見えました。

結果的には15-15で引き分けました。
ワラビーズはタニエラ・トゥポウが前回ほどのパフォーマンスを出せず、アルゼンチンの選手に絡みに行ったことで一触即発状態を引き起こしました。また、ラインアウトが上手くいかなかったことでそれまでの攻撃でラインを挙げられていてもトライを決めきれない状態が続きました。
前半だけのポセッションで見るとワラビーズが77:23とほぼワラビーズのペースでした。基本的にフィジカル面・攻撃面ではアルゼンチン相手にも通用していました。
ロスプーマズは前半はワラビーズのミスとSOサンチェスのキックでラインを戻す動きで前半を9点に抑えられました。後半はフィジカル面で厳しいと判断するや否やPGで得点を積み重ねる動きに切り替え、追いつくことができました。特に65分以降はややアルゼンチンペースでした。

前回のNZ戦との比較

前回との変化は以下のようになります。
要約すると:
ロスプーマズはFW陣のディフェンス・キャリー比率が10%ほど低下した。
ワラビーズは、バックス陣の1回あたりのゲインメーターが一番良く、機能していた。逆にディフェンスではロスプーマズの選手を走らせなかった。

◆パスとディフェンス

画像1

※読み方
Pass from No.9 rate on carry : 全体のキャリーのうち、スクラムハーフから受けたボールの割合
Number of passes on 1 carry : 1回のキャリー当たりで何回パスしたか。少ないほどパスせず自分でボールを持ってぶつかりに行く傾向があると仮定
FW tackle rate : 全体のタックルのうち、フォワード(No.1~8)のタックル割合
BK tackle rate : 全体のタックルのうち、バックス(No.9~15)のタックル割合

●ロスプーマズの全体タックルに対してのFW陣のタックル割合が75%⇒63%と低下している
●ワラビーズのバックス陣のディフェンスがタックル成功率の面でオールブラックスと比べるとやや見劣りする(92%⇒84%)

ロスプーマズのディフェンスはタックル成功率の面ではFW陣は高いレーティングを維持しています。ただし、割合として10%減っているのでオールブラックス相手よりスペースを使われた・運動量がやや下がったということが推測できます。ただし、クレイマー選手のディフェンス・飛び出しの速さは目を見張るものがありました。

◆アタック

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※読み方
Average gain metre 1 carry : 1回のキャリーでどれだけ前に進んだか
Breaking rate (クリーンブレイク+ディフェンス突破数)/キャリー数 : 1回のキャリーでどれだけディフェンスを突破できるか・相手がいない状態で走れるかの割合。1を超えているとその人にボールを持たせると必ず1回はディフェンスを突破されるということなのでかなり攻撃力の高い選手(もしくはディフェンスが甘いか)と仮定できる。
FW carry rate : 全体のキャリー数に対するFW陣のキャリーの割合。Attack3ではFWの中でさらに細かく割合を見ています。

攻撃面について見てみると、アルゼンチン側の数値に変化が見られます。
まずNZ戦と比較してFWのボールキャリー率が10%ほど低下しています。特に、LO(No.4,5)のボールキャリーが下がっています。
もう一つ、BK陣のゲインメーターが5.86⇒2.47と下がっている点も今回得点が伸びなかった要素になると思います。

ワラビーズは逆にオールブラックスと比べてもBK陣のゲインメーターが高いです。これだけ高いにもかかわらず同点なので得点に繋げられなかった、という結論になるのだと思います。今回、ワラビーズはパス回数が多かった(101⇒138⇒168)のでスタッツだけ見れば課題はパス・ラインアウトの精度といった部分になるでしょう。
(現状、フィジカルが強い一方でゲームIQ・・・インテリジェンスが弱いという声があります。オコナーとマット・トゥームアがいない現状そういうラグビーになっている面は否めないと思います)

◆セットプレー

画像3

セットプレーに目を向けてみます。
まず、ラインアウトは両チームとも85%を割る形になりました。
その一方でペナルティが両チームとも減少しており、前半は荒れたものの後半はペナルティーゴールを両チームとも多く採ったことであれながらペナルティー数はそこまで伸びない結果になったと思います。
この状況で両チームともトライ一本狙いをしていたら20まで行ったのではないでしょうか。ペナルティーゴールを取りに行く選択肢があることの重要性を感じました。
そしてこれはオールブラックスの課題でもあり、ABsの課題である限りABsに対する勝機でもあると思います。

ロスプーマズ第3戦について:オールブラックスに連勝は可能か?

連勝は難易度が高いと思います。ロスプーマズ側の懸念は2つです。

1.得点源であるニコラス・サンチェスにかなり依存している。彼が疲労からベストパフォーマンスができない場合オールブラックスに勝つのはかなり厳しくなる。
2.FW陣があまり入れ替わっていない(モントーヤは前回シンビンを除いて70分出場している)

というように主戦の疲労と相手の研究・対策が進むことで後半2戦は苦戦を強いられるのではないかと思います。

一方でオールブラックス側もチーム作りで試行錯誤している所です。恐らくフォーメーションを再考するか貫き通すかで板挟みになっていると思います。多分この1週間は腹をくくっていたと思いますが。
フォーメーションを再構築するか、あくまでW司令塔にこだわったうえでトライ&エラーを続けるか。

11/28のアルゼンチン第3戦の勝敗のカギはオールブラックスが来年に向けて何を残そうとするか、かもしれません。

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