もし道の無い山中で7.1トンの資材を早く安全に運びたい時、どうしますか?
突然ですが皆さん。
人があまり立ち入らない山中で、重たい荷物を持って歩いたことありますか?
私は、実家が林業を営んでいて荷物運びを手伝ったことがありますが、山は石だらけで土も柔らかく、何より坂道ばかりですし、かなり歩きづらいです。平地で5分で行けるところが、山中では30分かかることもあります。転落したら命にも関わりますから危険です。うまい人は"スタスタゆっくり”歩けるんですけどね。
人力かヘリコプターかモノレールか。。。。
2023年4月、山中で7.1トンもの荷物を運ぶプロジェクトがあり、私たちクリーク・アンド・リバー社(C&R社)が協力しました。
三井金属資源開発株式会社(MINDECO)は、群馬県の標高1,400mの山間部で地熱調査のための取水設備設置の手法を考えていました。総重量7.1トン分のポリエチレン管、水中ポンプ、エフレックス管、分電盤などを山中で最大830m輸送するミッションは、のべ100名超の人員が手作業で何日もかけて運ぶか、もしくはヘリコプターや特設のレールを敷いたトロッコのようなモノレールで運ぶ計画を検討していました。
しかし、人力では危険を伴うし時間もかかる。ヘリコプターで運んだ場合は数日で終わるかもしれないがウン千万円の費用がかかり、着陸ポイントの樹木伐採も広範囲におよぶため自然環境破壊の懸念も。モノレール輸送ではレール敷設だけで1週間、事前の長期植生調査や造成工事にも時間がかかって、季節も限定されるという課題を抱えていました。
パイロットと運行管理の腕次第で、大型ドローンが一番だった
そんな時にMINDECOの方からC&R社のドローン事業部春山に連絡が入りました。ドローンを使えば、資材を50kg弱に分けMAX9日間で、パイロット2名、補助員1名、監視員1名で目的地まで運べることが分かりました。ドローンは通信環境が整えばすぐに飛ばせて、少し運搬作業があるものの、離陸ポイントと着陸ポイントに作業員を配置し、着陸地点の枝払いをするだけで済みます。作業時間・コスト面はもちろんのこと、環境面でも大変魅力的でした。
実際行ってみると、4月5日~10日で雨の日と日曜日は作業をしないで、220~830mの距離をピストン飛行しながら195フライト3日半で輸送を完了しました。
MINDECO社員の方のコメントです。
「人力やモノレールと比較して、工数が短縮できた」
「モノレール仮設の初期費用と比べ、ドローン運搬が安価」
「環境面では大いに効果があった」
おおむね好評です。ありがとうございます。
いいことばかり!いえいえ、まだまだ課題もあります
ドローン輸送が一番!と言いたいところですが、まだまだ課題は多く次のようなコメントもいただいています。
「画期的な技術だが、天候に左右される面やバッテリーの充電スペース等の問題がある」
「飛行距離を伸ばせたら良いかと思います」
「運搬する資材の一束の重量を増やせると運搬回数も減らせる」
「追加の材料が出てきても後から運搬できないのが難点」
「ドローンの専用吊り具が外れにくいものにできないか」などなど。
まだまだ改良が必要な点をたくさん指摘していただきました。
それでも今後もドローンが活用されていく理由
2016年ごろのドローンは、産業用の小さなドローンによる監視や救難操作、数百グラムの荷物搬送で始まりましたが、今では55Kgを運べる大型ドローンで建設会社や電力会社が資材を運んだり法面工事に活用したりするほか、血液製剤の輸送試験や被災地への支援にも活用されています。
eVTOL(電動垂直離着陸機)というくくりまでできて、2025年に開催される大阪万博では、様々な種類の人が搭乗する“空飛ぶタクシー”が登場する予定です。そして、米国や欧州、中国はもっと先に進んでいるでしょう。
だからこそ、皆さんと一緒に仕事や実験を重ねながら、機体や運航方法、仕組みなどの課題を一つづつクリアしていきたいですね。■TK
この運搬の模様は次のYouTubeをご覧ください。
【本件のプレスリリースはこちら】
https://www.cri.co.jp/news/004277
クリーク・アンド・リバー社 公式note編集部 TK