名コピーライター、父、岩崎俊一氏の志を受け継ぎ 、広告の未来を想う岩崎亜矢氏。
陽射しがカミソリのように肌を襲う、8月のはじめ、僕は、著名広告人を多数輩出している、広告会社サン・アドに向かおうとしていた。
今日は、名コピーライター故岩崎俊一氏の遺伝子を受け継ぐ、コピーライター、岩崎亜矢氏に会うのだ。しかし暑い。
受付で待っていると、岩崎氏が、爽やかな笑みを浮かべながら、現れた。
コピーライターの未来は、どうなるのでしょう、と、まずきりだしてみた。
「コピーライターという仕事がなくなることはない、と個人的に確信を抱いています。
ただ、この業界の規模やカタチについて、ますますめまぐるしい変化がやってくるとは思う。
今の時代、“広告なんて必要ない”、そう感じている人も多いのではないでしょうか。
けれど、商品も嗜好もあらゆる物事が細分化され、数多のアイデアが飛び交うこの世の中だからこそ、企業やブランドという存在と消費者とをつなぐコピーライターは、いる意味があると思うのです。
そのためには、私たちはクライアントの単なる“代弁者”ではなく、“翻訳者”でなければならない。彼らの思いを、どう知恵と工夫を凝らし、翻訳するか。
そのためには時代を見つめ、人の生活を見つめ、自分の生活を見つめていくという、観察する目線が何よりも大事だと思うのです。
サン・アドの創立者のひとりである開高健氏が書いた創立の言葉に、“その生活にほんとに役にたつ、という仕事をする”とあるのですが、私の仕事の意義はまさにここだと思っています。
自分の書くもの、つくるものが、生活とかけはなれたものではなく、生活を見つめるものでありたい。そう、いつも思っています。」
岩崎さんは、目を輝かせて、時には熱く、時には淡々と語ってくれた。
「育休から復帰して間もないので、最近の仕事と少し前に関わった書籍について紹介させてください。
まず長年やっているミュージシャン、ハンバート ハンバートの新アルバム「WORK」と新曲のミュージックビデオのクリエイティブディレクション、コピーを手がけました。
また、マッチングアプリのWithでは演出とコピーを担当しましたが、直感的に“あー、恋したい…”と感じてもらうような切り口でコピーを考えています。
また、「僕はダリ」をはじめとした芸術家の素顔に迫る書籍のシリーズ(全10冊)については、この本の監訳という立場で携わっています。
例えば「This is Dali」というタイトルならば、一人称言葉で「僕はダリ」と訳すことで読み手との距離をぐぐっと近づけるなど、読みやすく、手に取りやすい本になるよう工夫しました。」
岩崎さんは、真剣に広告の未来、コピーライターの未来を想っている。
僕たちは、広告がこれからどうなっていくのかに対して、正面から向き合わなければいけないところにきている。
広告は、そしてコピーライターは、例えば、やがてやってくる10年後の未来、2030年には、どうなっているのだろうか。
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