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コピーライター、国井美果氏。「ひとりの商人、無数の使命」というキラーフレーズを創りだし、総合商社、伊藤忠商事の数々の広告を輝かせて。伊藤忠商事の存在感を圧倒的に強めた。注目のクリエイター。商人(商社マン)の仕事はおもしろくて、あきない、という魅力を多くの人々に広め続けている。


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なかなか夏が立ち去ろうとしない8月下旬のある日、原宿、竹下通りのカフェに足早に彼女は入ってきた。

彼女は、コピーライター、国井美果氏。

にこやかに軽く挨拶を交わしながら、国井氏は話し始めた。


「私は、モノを書く仕事につきたくて、就活では出版社を主にまわっていました。

ところがブックセンターで見たアートディレクター・大貫卓也さんの全仕事という作品集の完成度にワクワクしてしまって。

そのときから、広告の制作の仕事をやってみたくなって。

私が広告を創るのなら、言葉だから、コピーライターかなと思いながら。それから広告代理店とかをまわりはじめたんですけどね。」


国井氏の意志は強かった。その後、彼女は、広告会社の名門、ライトパブリシティに入社する。

日本の広告界の大御所、コピーライター・秋山晶氏、アートディレクターの細谷巖氏が所属するライトパブリシティで、国井氏はコピーライターとして歩き始める。


「秋山さんと細谷さんのお二人がいるフロアでお仕事をすることで、すごくいろんなことを学びました。秋山さんが何気なくしゃべっていたりすることから、たくさん学びましたね。細谷さんからは、デザインとはやさしくなければならない、品がなければならない、ということを勉強させていただきました。」


恵まれた環境の中で育った国井氏。しかし、僕が、国井氏の仕事で一番好きなのが、

「かぞくマン」という絵本なのだ。


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「コクヨから絵本が発行されることになり、いのち、ともだち、やくそく、お金、かぞく、の5つのテーマを5人の広告制作者にお願いしたいと、仕事がきたんです。


私がちょうど産休中にきたお仕事でした。かぞくとはなんだろうと、そのとき思ったのは、その言葉を聞くだけで傷つく人たちがいるということでした。家族は幸せのシンボルのように描かれることが多いけど、お父さん、お母さん、と聞くだけで傷つく子どもって絶対いる。


その子どもたちにも家族とはこういうものだよ、と、言える絵本にしたかった。家族というものをものすごく不完全なヒーローというふうに抽象化したんです。不完全だけど、愛すべきヒーロー。血の繋がりにとらわれることもない。そうすると、誰にもかぞくマンがいて、思い描くヒーローが100万通りあってもいいじゃないかと思って創りました。」


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伊藤忠商事さんの広告で、「か・け・ふ」と出てきますが。「これは岡藤会長が提唱された商いの三原則の、稼ぐ、削る、防ぐ、を意味しています。稼ぐは商人の本能、削るは商人の基本、防ぐは商人の肝。商いとはこの3つのワードが支えあい、成立するものです。


また、ガンになった社員にも手厚い支援策があって、社員の福利厚生とか働き方改革ということについて、良いことはどんどん先に実践しています。


さらに岡藤会長は、総合商社というと顔がよくみえない。もっと身近に感じられ、顔がちゃんとみえる企業にしたい。そして、社員の家族が誇りに思えるような企業にしたい。そう、おっしゃいまして。いま、そこがひとつひとつクリアされているところです。


伊藤忠商事の社員の方は、よく野武士集団といわれるんですね。個が強くて、この人たちは商社マンではなくて、

ひとりひとり、商人だなと思ったんです。だから商人という言葉をキラーワードというか、伊藤忠商事のDNAワードとして訴求していってはどうか。ブランドの言葉にしていってはどうかと提案させていただいたんです。おかげさまで、今では、商人とか商いという言葉を使うと伊藤忠らしい、と言われるくらい定着してきています。」


僕たちが若いころは、キャッチコピーでは、フックはどれだと、よくフックという言葉を使ったが。


今では、それに代わる言葉がキラーワードではないだろうか。キャッチコピーを創るとき、キラーワードをみつけることが、重要になっているのではないだろうか。


キャッチコピーの勉強に終わりはない。それは、キャッチコピーがイノチをもっているからだ。


その時代、その時代の風に包まれたキャッチコピーを、いつもこころの奥で感じていなければならないのだ。

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コピーライター国井美果氏は、他にも、多種多彩な広告、キャッチコピーを制作している。ひとつは、国井氏の代表作、資生堂のコーポレートメッセージ「一瞬も一生も美しく」。永井一史氏のデザインもたまらなく美しい。


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次は、30数点しかないフェルメールの作品が、一挙に8点も日本に来てしまうことを事件的にあつかうことで、告知広告にした。アートディレクターは平林奈緒美氏、コピーは国井美果氏。


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最後は、日本広告界の大御所、アートディレクター・細谷巖氏デザインのNIKKEI The STYLE。大胆な構図にとても迫力を感じる。日曜日だけの日経新聞。コピーは、もちろん国井美果氏。

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