アーティスト、くらやえみ。マンガの世界とアートの世界をナチュラルに融合させて。まさにマンガ芸術家と呼ぶにふさわしいアーティストだ。その繊細な1本の線、細やかな色合いに、くらやえみ氏独特の感性が活きている。
五月晴れの爽やかな午後、僕は元麻布の坂道を歩いていた。初夏のような陽射しが、追いかけるように降り注ぐ。
アーティスト、くらやえみ氏は、もう2年ぐらい前から少女をテーマに創作活動を続けている。
マンガの世界とアートの世界の境界線を軽々とこえてしまった独自のくらやワールドは、観る人のこころをやさしく、そしてドキドキさせる。
「マンガのキャラクターは、小さいときから好きでした。そのモチーフを絵の世界に持ち込むことは、私にとって勇気のいる決断でした。
私の好きな作家にジョルジョ・モランディ氏というイタリアのアーティストの方がいるのですが。そのモランディ氏の絵を描く姿勢や観るということに対して、すごく影響を受けました。
私は、想像して描くことをあまりしていなくて。見たものをまっすぐ描くことを大切にしてきました。
モランディ氏の作品はびんとか目の前のものを描いてはいるんですけど。具象化ではないというか、彼のメンタルがあらわれている作品だと思っているんです。本質が浮き出ているんです。」
くらや氏は、表現だけでなく、その絵の本質までも繊細に感じているのだ。
「私たちの世代は、マンガとかアニメとかがすごく内面的な存在であると同時に、それがとても自然な現象になっていると思います。
マンガとアートが近くなってきたことは、必然的だと感じています。キャラクターを描くようになってから、自分が描きたいものを正直に扱えるようになりました。
いまは、少女というモチーフを追及していますが。少女という存在が絵の中の世界と絵を観ている側の世界の人とを繋ぐ架け橋になってほしいのです。
個展でも、美大に行っている人とか、美術にすごく詳しい人じゃなくても、親しんでもらえて、とてもうれしい。マンガをアートにまで追及するアーティストは、これからもたくさんあらわれてくると感じています。」
マンガ芸術家、とても日本人らしい表現の言葉だ。
14才の夏
2019/油彩、キャンバス/1938×1620 mm
©︎2019 Emi Kuraya/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
「私にとって絵を描くことは生活だと思っています。生活していることが描くことになり、私と外の世界を繋いでくれる。
私は、美術とは高校まで無縁で、すごくアニメーターになりたかった。
それまでの私にとって画集というものは、西洋の美術ではなく、アニメ雑誌の扉絵が自分の絵のお手本でした。
これからは、今いる自分の世界と、向き合っていく姿勢を見失わないようにして、一歩一歩前へ進んでいきたいです。」
マンガを芸術まで高めたくらやえみ氏。
芸術を観るようにマンガを観よう。
マンガを観るように芸術を観よう。
共鳴しあう表現。これが、いまの表現なのだ。
ネオ芸術ジャンル、マンガ芸術。
日本人の新しいこころの故郷が、誕生しようとしている瞬間だ。
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