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いいね!と小豆島の旅。 #1

とにかく、どこかへ出かけたかった。

6月中旬のある夜、現実逃避を図って、旅に出ようと決めた。

ただ、目的地は決めず、気の向くまま風まかせに現実逃避しちゃおうか、とワクワクとモヤモヤが入り交じりながらスマホで場所を探していた。

最初は京都、大阪、滋賀へ行こうとしていた。

京都は中学の修学旅行ぶり、大阪は初めて行く、滋賀は美味しそうな酒があるから、と言う理由を立てていた。

颯爽と、淡路島。おずおずと、小豆島。

旅行に行く1週間前の夜。

たまたま、テレビで淡路島が映り、これは!と思った。

直感的に島は良いぞ!と思ったのである。

すかさず、スマホで調べてみる。

ふむ、なかなか魅力的である。

と、検索結果に、小豆島の文字がチラホラと。

ほほう、小豆島かぁ。名前は知ってるが、よく知らない。

調べてみる。

淡路島に比べたらコンパクトだが、自分の興味をゾワゾワゾワゾワとそそるじゃないの!

しかも、そこからフェリーで高松へと行ける!素敵!

この瞬間、気持ちは完全に小豆島に向いていた。

と、小豆島に行くぞ!と意気込んだツイートをした所、いいねがついた。

このいいね!が小豆島が大好きになるキッカケになる。

雨霧の小豆島はそれはそれはミステリアスに見えた。

翌週の土曜日。昼過ぎには小豆島に到着していた。

(これは帰りのフェリーを待つ間の1枚)

フェリーが小豆島の福田港に着く15分ほど前になると、小豆島が霧の中から姿を見せ、ミステリアスな登場をしてくれた。

江戸川乱歩か、横溝正史の世界にでも出てきそうなくらいの妖しさを持った島だな…が最初の印象であった。

島の移動はバス、レンタカー、レンタサイクルが主で、自分は島を1周出来るバスを選んだ。

いくつかルートがあり、この日は福田港から南下し、宿をとった土庄(とのしょう)港を目指した。

しかし、バスが来るまで時間があり、通り沿いにある食堂へ。

こじんまりとした食堂は自分以外には誰もおらず、厨房(台所と言う方がしっくりくる)にはお姉さんが2人、世間話に花を咲かせていた。

お好み焼きか、カツカレーか、それが問題だ!

せっかく島に来たのだから、新鮮な海の幸を食べたい。

そう思い、年季の入ったメニューに目を通す。

刺身、時価。

そうですか、時価ですか…。

人間、お金にまつわる言葉には弱いが、時価と言う言葉はあまり見ることは無いだろう。

そんな言葉をまさか、海沿いの、キューピー3分クッキングが流れる、食堂で目にするとは思わなんだ。

おそらくは漁獲の問題だったりで、予約すれば大丈夫!みたいな感じだったのだろう。

刺身を諦め、食堂らしいメニューに目を落とす。

親子丼、カツ丼、他人丼、カレー、カツカレー、お好み焼き。

ん?待ちたまえよ、お好み焼き、君はこのラインナップではないだろう。独立した粉ものの代表選手じゃないか。

辺りを見る。自分のテーブルの隣の隣、これまた年季の入った、味のある鉄板がそこにいた。

この鉄板で焼いたお好み焼きとか美味いとかってレベルではないだろう。

しかし、自分にはバスの時間がある。次を乗り過ごせば、また1時間後である。

ぐぬぬ…。

すいません、カツカレーください。

もしも、自分が井之頭五郎(孤独のグルメの主人公)ならば、どんなチョイスをしただろうか。

と、男性2人組がやって来た。

すると、お姉さんの1人と、やり取りをした後で

じゃあ、お好み焼き2つね。豚玉。

えっ、あっ、ウソ、そんな気軽に!?

これが大人の余裕か。

遠目に、鉄板が温まるのを流し目で見ていたら、注文したカツカレーがやって来た。

ご飯の枕にカラッと揚げられたカツが横たわり、ルーの掛け布団がそっとかけられている。

真っ赤な福神漬け、良いじゃないか。

お好み焼きじゃなくても良いじゃないか、今、俺は食べたいものを食べられる幸せを噛みしめている。

是非、上の文章は井之頭五郎役の松重豊さんボイスで脳内再生して頂きたい。

お会計を済ませ、店を出る時、鉄板では、キャベツのピラミッドが2つ作られていた。その隣にスフィンクスとして鎮座したかった。

バスにはもちろん間に合い、小豆島最初の目的地、まめまめビールさんへと向かった。

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