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クリームソーダ

武蔵境から吉祥寺まで歩く。
彼と会う時は大体いつも雨だ。

今日の話題は漬物について。
最近彼は漬物にハマっているらしい。

今日はナスの漬物が美味しいことを力説していた。

そのハマり具合といえば、スーパーで1200円のナスの漬物を買ってしまうくらいなのだ。

興奮したように漬物について語っているかと思えば、時に黙り込んで立ち止まったり、急にまた話し出したりする。いつもの彼だ。
この時間が幸せだなと思う。

吉祥寺から今度は電車に乗って武蔵境まで戻る。
電車を降りると彼はこんなことを言った。

「最近聴いてるクリームソーダって曲が君っぽくて、君のLINEの名前をクリームソーダにしてるんだ。」

笑いながらも冗談ぽくはない。

「してないでしょ。」と私が笑いながらスマホを覗き込むと、私のアイコンの下にはしっかりと「クリームソーダ」と書かれてあった。

改札を抜けると彼はまたおかしなことを言う。「クリームソーダって片仮名の感じだとクリームソーダって感じしないよね。」
吉祥寺の本屋さんで見た雑誌のあの鮮やかな緑色のクリームソーダの表紙を見て思い出したらしい。
「じゃあなんていう名前だったらいい?」と、わたしも同じ調子で返してみる。
他愛もないやりとりだが、そんなやりとりが心地良い。

時計を見ると11時過ぎ。「お昼前に今日は解散しようか。」と話していたので「じゃ、またね。」と別れを告げる。


帰る途中、私はApple musicを開いて「クリームソーダ」と検索をする。
何種類かあるクリームソーダを聴きながら、なんとなく私っぽいクリームソーダをリピートする。

インナージャーニーの「クリームソーダ」
歌詞にはこうあった。

ガラクタだらけの六畳一間のこの部屋で
僕はクリームソーダについて考えてる
炭酸はあまり好きじゃない君のことも思い出して
ああやっぱり今年も夏がくたびれてる
I wanna be allright きっといつかは分かるはずさ
I wanna be allright 世界は広いと信じてたいけど
背伸びしてるダサい君のこと愛していたのさ

傘が小さかったからか、お気に入りのワンピースはびしょ濡れだ。これはいわゆるエモいってやつだな。そう思いながらLINEを開き、彼の名前を「漬物太郎」に変更した。



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