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【J-REIT】REITはゴミ箱なのか?

2024/2/19の場中、東証REIT指数は1700ptを割れました。
普段日の目を見ないREITですが、株式対比の不甲斐なさもありネットでも割りと話題になっているように思います。
そんななかで「REITはゴミ箱だから下がってる」という意見を目にしました。REITはゴミ箱という議論は昔からよくありますが、果たしてそうなのでしょうか?

「REITはゴミ箱」とは?

そもそもREITはゴミ箱とはどういうことでしょうか?まずは、REITの基本的なスキームを見てましょう。

出典:不動産証券化協会

REITは投資家から集めたお金と銀行等からの借り入れを原資に不動産を買います。買った不動産から発生した賃料などの収益は利子返済等に充てられ、残りは投資家の手元に戻ってきます。
ちなみにREITはペーパーカンパニーなので、どの物件をいくらで買うか?所有期間中のリーシング、修繕等の維持管理はどうするか?といった運営はすべて資産運用会社(AM)に委託しています。
AMの株主が「スポンサー」と呼ばれています。例えば日本ビルファンド投資法人であればスポンサーは三井不動産、野村不動産マスターファンド投資法人であればそのまま野村不動産です。

スポンサーはなぜREITを作るのか

スポンサーがREITを作ってお金を投資家から募る理由は何個かあります

AM報酬を安定的に獲得するため
AMはREITの運営を受託するかわりにREITからフィーを受け取っています。資産額の○%みたいなのが多いです。(REITが払っているということは実質的には投資家が負担しています)
不動産の運営状況/価格変動リスクをとらずに関わらず安定的に収益を得られるわけですね。PMとかその他の周辺業務もグループ内でやってることが多いです。
ROE向上が至上命題になっているこのご時世で自分のBSも使わなくてすみます。

安定的な物件売却先を確保するため
スポンサーはデベロッパーで有ることが多いです。デベロッパーの仕事は基本的には土地買ってきて建物作って誰かに売却することです。開発リスクを負担するかわりに開発利益を享受する、良く言えば資産をどんどん回転させる、悪く言えば常に自転車操業です。
不動産市況は水物ですが、デベロッパーは常に作り続けるしかないわけです。そのため自分が作った物件を、実質的に自分の支配下にあるけど安定的に他人の金で買ってくれる箱があるとBS/PLともにコントロールが格段に楽になります。
この点が特にREITはゴミ箱議論につながります。

REITはゴミ箱?

AM会社の株主がスポンサーである以上、REITが「スポンサーが作った物件を、実質的にスポンサーの支配下にあるけど安定的に他人の金で買ってくれる箱」という要素を持つことは否定できません。
そのためスポンサーの希望する物件を、スポンサーの希望するタイミング、スポンサーの希望する金額でREITが物件を買うようなことが起こると「本当に投資家のために物件買ってんのか?スポンサーの事情だけで投資家の金使ってんじゃないの?」となり、「REITはゴミ箱」という表現につながるわけです。
あと、AM会社のおえらいさんはだいたいスポンサーからの出向です。また本社に戻るのに見えない投資家のためにスポンサーとどこまで戦えますかね?という論点もあります。

REITはゴミ箱かどうかの判断はどうするか?

最近私がゴミ箱かよ!と思ったのは某POです。
誰とは言いませんが、この地合いの悪い中、対して分配金も上がらないのにわざわざPOすんの?なんのために?あれスポンサー3月決算期でしたっけ?的なやつです。
要するに多くの投資家が「???投資家の利益になるのその行為???」となるようなREIT(というかAM)の行為はゴミ箱行為と言わざるを得ないんだろうと思います。
また、例えば投資口価格がずっと低迷を続けている、でも不動産売買市況はいい。という今のような状況なら物件売って「売却益出して投資家に分配しつつ、回収した資金で自社株買いしろよ!借り入れも一部返済すればレバもコントロールできるだろ!!」と強く思いますがやっていないところも多いですね。
AM会社の報酬はAUMに基づくことが多いので、あまり売却にインセンティブがないというスポンサーが関わらない部分での問題かとは思いますが、ガバナンス不全(というのは言い過ぎかもしれませんが)という意味ではゴミ箱議論に帰結するのだろうと思います。
あんまり貶めることばっかり言っても不平等なので、褒めることもいっておくとしっかりしてるスポンサーもいます。実際「そんなやすくこの物件買えるのうらやましい・・・」となる取引も多くあります。

そのゴミ箱、宝箱かもしれませんよ

ただ、REITの裏付資産は収益不動産です。安定的なCFが一部の例外を除いて見込めます。ここはクソ株との大きな違いです。
クソ株の場合、ずっと赤字で株式のおかわりを繰り返してそのままお星さまにというケースもあるかと思います。この場合は最初から実は価値ゼロだったというのはわかります。
一方で収益不動産は高買いしてもCFはでます。市場で利回りが5%のものを2.5%(時価の倍の値段)で買うことを連発するようなREITがもしあればゴミ箱確定ですが、そんなゴミ箱でもその株式を半値で買えれば、乱暴な議論ではありますがリスク・リターンが釣り合うわけです。
足元の不動産市況は堅調で、REITが売却のプレスを出す場合直近の鑑定評価額より高値で売れることが多いです。足元のREITの価格は鑑定評価から換算した純資産価値(NAV)を大きく下回っているわけですが、これはREITが持っている物件の価値よりも株価が低いという状況を意味しています。現実的ではないですが、いまREITが解散して保有する全物件を売却すれば株主は儲かる状況ということです。
Cap上昇の警戒があるなかで実物不動産市況に先行する株価がNAVより低迷するのは別に不思議なことではないですが、
ゴミ箱と揶揄されているREITの中には投資家にとって実は宝箱状態のものもあるのだろうと思いますし、
私の結論はゴミ箱なREITがあることは否定できないが、特に上場においてはゴミ箱だろうか儲けようは色々あるし、少なくとも足元のREITの下落はゴミ箱かどうかは関係ないということです。おしまい


※本文章はいかなる投資行動も推奨するものではありません。

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